午後5時台を聴く
23/12/30まで

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クリスマスは12月25日ですが、イタリアでは25日だけでなく、その前も後も長ーい間、盛り上がるそうなんです。いったいどういうこと?

【出演者】
宮本:宮本さやかさん(トリノ在住・フードジャーナリスト)
ローズ:當間ローズさん(土曜担当MC)
中村:中村慶子アナウンサー


ローズ:
宮本さん、イタリアはクリスマスの盛り上がりが長いって、どういうことなんですか?

宮本:
クリスマスは、カレンダー上は12月25日なんですが、イタリアでは、11月から1月までクリスマス騒動がずっと続くんです。

中村:
順を追って伺っていきましょう。まず11月には何が起きるんですか?

宮本:
11月に入った途端、町中がイルミネーションで飾られます。そして、スーパーマーケットやお菓子屋さんには、イタリア人がクリスマスシーズンに食べるパネットーネやパンドーロというケーキが並び始めます。

11月に入るとパンドーロやパネットーネが山積みに

宮本:
パネットーネはレーズンやオレンジピールが入っていますが、パンドーロはシンプルなふわふわの生地に粉砂糖がかかっています。この2つはクリスマス本番にだけ食べるのではなく、11月ごろから売られ始め、毎日の朝ごはんに、おやつにと、年が明けてもずっと食べ続けます。

中村:
11月から毎日って、2か月以上も食べるんですか!?

宮本:
そうなんです。私も好きなので、毎年、食のガイド専門の出版社が行うランキングで上位のものをいろいろ買って試したりして、朝食に、おやつに、デザートに、食べまくります。そういう人は多いと思います。
また、パネットーネやパンドーロは自分で買わなくても、クリスマスプレゼントにいろいろな人から受け取ります。そのいただきものを、クリスマス当日から食べ始め、1月にも食べている、そんなシチュエーションも“あるある”なんです。年末から年明けにかけて、家にたくさんのパネットーネがある、と言うのはよくある風景です。

ローズ:
ブラジルでもパネットーネをたくさんもらったりして、1月に入っても食べてます!
クリスマスにそなえて、11月からパネットーネやパンドーロを食べ始めました。12月に入ったら?

宮本:
12月8日はクリスマスツリーを飾る日になっています。この日は日本語にすると「無原罪のお宿りの日」というキリスト教の祝日で、イタリア中の家庭でクリスマスツリーを飾り、松飾りならぬ、クリスマスリースをドアに飾ったりします。

中村:
クリスマスツリーを飾る日も決まっているんですね。ツリーにも特徴があるんですか?

宮本:
私が住んでいる北イタリアは普通のクリスマスツリーを飾りますが、南イタリアの方ではツリーではなく「プレゼピオ」という、キリスト生誕シーンの模型を飾るのが一般的です。ナポリにはその模型を作るためのミニチュア専門店街があり、市の中心地にはミニチュアが飾られます。

中村:
12月8日にクリスマスの飾りをしました。その後は?

宮本:
人々はクリスマスプレゼントを買いに街にくり出し、夜は忘年会ならぬ、プレ・クリスマス・ディナーで集う人でごった返します。車の渋滞も激しく、悪名高き路上駐車も最悪な状況を迎えます。車社会のイタリアですから渋滞はものすごく、駐車スペースも見つからずイライラは最高潮を迎えますね。

ローズ:
12月はもう連日パーティーですね。25日のクリスマスはどんな感じなんですか?

宮本:
25日のクリスマスは祝日になります。2023年のクリスマスイブは日曜日ですが、24日が平日の場合、普通に仕事をして、夕食には魚ベースの夕食を食べ、クリスマスを迎えた深夜0時に乾杯をしてクリスマスを祝います。
敬けんな教徒の人や、イベント好きな人は、24日の深夜、寒い中教会へ出かけて行きミサに参加します。小さな町などではイエス生誕のシーンを人間が演じて町を練り歩くイベントもあります。
ここまででへとへとになりそうですが、25日のランチがクリスマスの本番です。イタリアの言葉に「クリスマスは家族と、お正月は好きな人と」という言葉があり、クリスマスは恋人たちもそれぞれの家族と一緒に過ごします。新婚カップルは、どちらの実家で過ごすかもめたり、けんかになったりすることも多いそうですよ。

中村:
自分に置き換えると、放送のあとに深夜に乾杯して、昼に実家でランチ。すごい体力ですね。

宮本:
料理の担当をする場合はとても大変です。ただし、プレゼントを買い歩き、食事会などで出歩いて一番忙しい20~30代ぐらいは、クリスマスは実家でマンマ(お母さん)が作ったごちそうを食べるパターンが多いので、25日は寝坊をしても大丈夫、という具合です。

ローズ:
イタリアのマンマのクリスマス料理ってどんな料理を作るんですか?

宮本:
イタリアは各地方それぞれに伝統料理があるため、これぞクリスマス料理というものがないんです。各地方、各家庭で前菜・サラダ・パスタ・肉料理・デザートのごちそうを食べます。私が住むピエモンテ州では、アニョロッティという、ラビオリに似た詰め物パスタを食べることが多いようです。アニョロッティはピエモンテ州を代表する手の込んだ手打ちパスタなんですよ。

ローズ:
クリスマスの盛り上がりが1月まで続くというお話でしたが、どんな風におさまってくんですか?

宮本:
このクリスマス騒動は、なんと年が明けて、1月6日のエピファニア、日本語で「公現祭」という、こどもの日にも似た祝日を過ごして、やっと終わりを迎えます。この日にクリスマスの飾りをしまいます。
エピファニアとは、魔法使いのおばあさんがほうきに乗って夜やってきて、いい子にはお菓子を、悪い子には炭を、ぶら下げておいた靴下に入れていく、というもの。イタリアの子どもたちはその前夜、靴下をぶら下げて眠りにつきます。

ローズ:
靴下にプレゼントってこっちがクリスマスっぽいですね。プレゼントも2回もらえるんですか?

宮本:
ネットには「イタリアではプレゼントを公現祭の日にもらう」と書いてありますが、実際はクリスマスにも公現祭にも両方もらうというのが実情です。

中村:
宮本さん、なぜイタリアではこんなに長くクリスマスで盛り上がるんでしょう?

宮本:
私が思うに…ですが、やっぱりカトリックの国だということと、クリスマスの商業主義もあると思います。そして何よりイタリア人はお祭り好きなのでクリスマスも長く楽しむのかな、と感じます。

中村:
宮本さん、ありがとうございました。


【放送】
2023/12/23 「ちきゅうラジオ」

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