午後6時台を聴く
23/11/25まで

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「なぜ、そんなことに?」と思われた方も多かったのではないでしょうか? イギリスで一番有名な木が切り倒されたという事件。事件後の取り組みについて、イギリス・ブライトン在住のライター、大田朋子さんに伺いました。

【出演者】
大田:大田朋子さん (ライター)
中村:中村慶子アナウンサー
ニャーるど:ニャーるど(CV.吉岡麻耶さん)


中村:
大田さん、改めてどんな事件だったんですか?

大田:
9月27日のことですが、イギリスで一番有名な大木「シカモア・ギャップの木」が切り倒されて発見されるというショッキングな事件がありました。
その後、木を切った16歳少年と60代の男性が器物損壊などの罪で逮捕されましたが、現在は保釈されています。一番気になる犯行動機は今も捜査中で、名前などは発表されていません。

中村:
犯行動機はまだわからないんですね。

ニャーるど:
なぜ切っちゃったんだろうね。切り倒されちゃったという木はどんな木だったんですか?

大田:
シカモア・ギャップの木はイギリス北部にある世界遺産・ハドリアヌスの長城の横に生えていた、高さおよそ15から21mの木でした。樹齢は報道によっても違うんですが、推定で150年から300年と言われています。イギリスで一番写真に撮られた木として、とても有名な木だったんです。

シカモアは日本語ではセイヨウカジカエデという木で、丘と丘のくぼみ、gapに生えていたので、「シカモア・ギャップ・ツリー」という名前が付けられていました。そのほか、1991年のケビン・コスナー主演の映画「ロビンフッド」にも登場したので「ロビンフッド・ツリー」とも呼ばれ世界的に知られるようになりました。

中村:
写真を見たんですが、丘と丘の間のくぼ地に、ポツンと一本の木があって、確かに写真に撮りたくなりますね。

大田:
シカモア・ギャップの木は2016年にイギリスの自然保護のチャリティー団体が主催する「今年の木」というコンテストで優勝し、賞金として1,000ポンド、今のレートでいうとおよそ18万5千円が贈られたことがあります。
また2017年にはヨーロッパの15か国で投票される「今年の木」のヨーロッパ版で選出され、5位になったこともあります。

中村:
そんなシカモア・ギャップの木が理由も不明なまま切られて、みなさん悲しんだでしょうね?

大田:
そうなんです。悪質に伐採されてからの数日間は思い出の場所へ敬意を払いたいと跡地を訪れる人が多かったようです。

シカモア・ギャップの木が生えていたノーサンバーランド国立公園は入場無料で誰でもアクセスできるので、週末のピクニック、毎日のウォーキング、ハイキング、夏場にはキャンプ、天体観測など、子どもの時から「そこにあった」木だったんです。地元の人は「昔からの友達」と呼ぶほど身近にある存在だったんです。

ニャーるど:
事件のあと、切られた木はどうなったんですか?

大田:
木材として秘密の場所に保管されているそうです。木をベンチや彫刻に活用するアイデアも挙がっています。公園を管理するナショナル・トラストには市民から「歴史の一部を回復させよう」「レガシーを残そう」と、すでに数千ものアイデアが寄せられていて、今後一般からの提案を受けてどうするか決めていくとしています。

事件があった当初は、この木は一度倒されてしまったら再起不可、という暗いニュースだけでしたが、時間がたった今は、「今回の事件は許されるものではないが、これを生かして次の400年に続くリセットができたと考えることもできる」との前向きな専門家の意見も出始めています。

ニャーるど:
リセットって、どういう風にやり直していくんですか?

大田:
専門家がいうには幹は残っているし、また、木の命を決める40%以上は土の中の根っこで、それも残っている。つまりこのシカモア・ギャップの木は死んでいない、回復する希望がある、と強く言われています。
挿し木または接ぎ木をして再植することが可能かどうか調査、検討がなされています。また、周辺から木のタネを拾ったりして、次世代につなげようとしています。

この木の樹齢が300年だったと仮定し、シカモアの寿命は元々400年ほど。今回の悲惨な出来事がなくても100年後には何かする必要があるので、今回の悲しい伐採を生かして、次の400年続く木につなげることができるのでは、と言われています。

寒くなる今の季節は木の休眠期なので、挿し木や接ぎ木も寒くて育たないんです。なので今後の取り組みの成果が見えてくるのは、暖かくなって木が活動を始める来年の春になるとのこと。という訳で、伐採された幹の行方は今後見守っていくしかありません。

中村:
このニュース、大田さんはどんな風に感じました?

大田:
私はこのニュースを車の中のラジオニュースで知ったのですが、木の破壊が強風や嵐といった、しかたがない事情ではなく、人によって意図的に切り倒されたと知ってショックでした。でも今回の悲しい事件を生かして、次の数百年に生かそうとする取り組みが始まっていると知ってすばらしいと思いました。

数百年後の景色を想像するとワクワクしますね。

中村:
大田さん、ありがとうございました!

大田:
ありがとうございました。


【放送】
2023/11/18 「ちきゅうラジオ」

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