去年12月に亡くなったブラジルを代表するサッカー選手、ペレ。ブラジル代表のエースとして３度のFIFAワールドカップ優勝に導いた伝説の選手です。ブラジルで、ペレにちなんだ「路面電車」が登場。ブラジル在住、仁尾帯刀（にお・たてわき）さんに紹介していただきました。
【出演者】
仁尾：仁尾帯刀さん（フォトグラファー）
ローズ：當間ローズさん（土曜担当MC）
中村：中村慶子アナウンサー
ローズ・中村：
今日はよろしくお願いします。
仁尾：
はい！ 今日は、去年12月29日に他界したサッカーの王様「ペレ」をオマージュした観光路面電車がサントス市で誕生したということをお伝えします。
ローズ：
どんな電車なんですか？
仁尾：
運行は、ペレへの最大の敬意を表して誕生日の10月23日にスタートしました。
車両の窓の外側とボディーには、ペレの写真や絵柄がプリントされていて、出発前の待ち時間には車内モニターでペレの往年の活躍をまとめた映像が紹介されます。
窓の外側にある写真にはこだわりがありまして、車両右側の窓には、サッカー選手としてのペレの写真、左側には、いち市民として車を運転する様子や兵役時代のペレの写真がプリントされています。
【車両の左側】
【車両の右側】
中村：
写真を見ると路面電車の正面に「1283」という番号も表示されていますが、これは何の番号ですか？
仁尾：
これはですね、ペレがプロサッカー選手として決めた通算のゴール数で、それを車両番号にしたものです。
中村：
ペレの路面電車が誕生ということですが、路面電車自体は以前からあったのですか？
仁尾：
サントスの路面電車の歴史はけっこう古くて、開通は1909年です。長らく市民の足として活躍していたのですが、自動車の普及により1971年には廃線となり、線路の多くは撤去されてしまいました。
しかし、かつての路面電車を市の観光資源としていかそうと、2020年に旧市街地に残された線路を活用して、「観光路面電車」として生まれ変わったのです。
中村：
どんな風に変わったんですか？
仁尾：
はい。サントス市は懐かしい路面電車に乗れるということで、このプロジェクトを「動く博物館」として運営しています。現在は市が保有する車両13台のうち３台が稼働中で、ペレの車両の他、週末はコーヒーをテーマにした路面電車が走っていたり、観光に役立てています。いずれも街の見どころ案内の車内放送があり、それを聞きながら、約2.8キロメートルの周回ルートを回ります。
ローズ：
仁尾さんは実際にサントスまで見に行ったんですよね？
仁尾：
はい、見るだけではなく、乗ってきました。
中村：
乗客の皆さんはどんな様子でしたか？
仁尾：
ユニフォームを着た熱心なファン！ というよりは、州外、国外からの観光客でとてもにぎわっていて、私が乗った車両は満席。皆さん、自撮りや風景撮影などを楽しんでいました。その前に出発した車両は学生の修学旅行客の貸し切りで、とてもにぎやかでした。特にサッカーやペレのファンでなくても、この路面電車は十分に楽しめますよ。
中村：
すごい人気ですね！
仁尾：
観光路面電車全体で、去年12月には同期比で過去最高の月間乗客者数１万1,244人だったそうです。今回のペレの路面電車によって今年12月はそれを上回るかもしれません。
ブラジルの「子どもの日」には車内で演劇を披露したり、「クリスマス」には電飾で車両を飾ったりと、季節にあわせた催しを行うなど、路面電車を運営するサントス市も飽きさせない工夫もしているのが人気の秘けつかもしれません。
ローズ：
路面電車の発着点はどこにあるんですか？
仁尾：
サントス旧市街にある元鉄道駅の建物の前です。廃線となった鉄道の駅と聞くとさびれた印象を受けるかもしれませんが、現在その駅は市の観光局の建物となっていて、付近は路面電車やミュージアムに向かう人出もあるので、日中なら治安の面で問題はないと思います。
付近にはペレ博物館やコーヒー博物館、それに加えてレストランやカフェもあるので、サンパウロからなら半日コースでも楽しめます。
ローズ：
仁尾さんは実際に乗ってみていかがでしたか？
仁尾：
ペレの路面電車は、そもそも今からおよそ100年前の1920年ごろにポルトガルで製造され、港町ポルトを走っていた路面電車を改装したものなのですが、リニューアルしながらも車両の中はアンティークな雰囲気を残しているのが魅力です。
私は車両のリフォーム時から取材してきたので、かなり古くなっていた車両が美しく修繕・ペイントされた様子を見て、その仕上がりにうれしさが込み上げてきました。路面電車が周回ルートを回るのは15分程度ですが、古い石畳の上をガタゴトと揺られながら木製の窓枠越しに見る街の風景は一味違った味わいがあります。
中村：
とっても楽しそうで行ってみたくなりました！ 仁尾さんありがとうございました！
仁尾：
Até a próxima! ありがとうございました。
【放送】
2023/11/11 「ちきゅうラジオ」