第2の脳とも呼ばれる腸は、心身の健康に密接に関わっているそうです。今回は医学博士の江田証(あかし)さんに、腸内環境の整え方について教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)
【出演者】
江田証さん(医学博士)
<プロフィール>
1971年、栃木県出身。自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。著書多数。
第2の脳とも呼ばれる腸は、心身の健康に密接に関わっているそうです。今回は医学博士の江田証(あかし)さんに、腸内環境の整え方について教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)
【出演者】
江田証さん(医学博士)
<プロフィール>
1971年、栃木県出身。自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。著書多数。
――腸活(ちょうかつ)という言葉を聞くことが増えましたが、腸の機能が明らかになったのは最近のことなのですか?
江田: | つい最近まで、腸は謎多き臓器でした。10年くらい前から医療機器や検査技術が進歩し、腸内細菌の遺伝子解析が可能になり、腸内細菌と健康の関わりが明らかになってきたんです。 |
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――どのようなことがわかってきたのですか?
江田: | 腸内の神経細胞は約1億個もあるといわれています。その中には、それ自体が判断する細胞もあるため、“第2の脳”と呼ばれているんです。さまざまな臓器とつながっている腸ですが、特に脳との結びつきが強く「迷走神経」というパイプが、双方向で情報をやりとりすることが明らかになってきたんです。 |
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――腸からも脳にメッセージを送ることがあるのですか?
江田: | 例えば、幸せホルモンと呼ばれている「セロトニン」の9割が腸で作られているんです。 |
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――いいメッセージを脳に送るには、腸を健康な状態にしておく必要があるということですね。
江田: | 腸は大きく分けると大腸と小腸に分かれています。その環境を支配するのが腸内細菌で、その数は100兆個。約1.5kgの腸内細菌が腸壁の粘膜にびっしりと生息しているため、お花畑に例えられ「腸内フローラ」と呼ばれています。この「腸内フローラ」を健康な状態に保つことが大事なんです。 |
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――健康な腸内フローラとは?
江田: | 腸内細菌はおおまかに「善玉菌」「日和見(ひよりみ)菌」「悪玉菌」の3種類あります。ビフィズス菌やガセリ菌は「善玉菌」の仲間で、多様な細菌(約1000種類)がお花畑のように腸の中に広がっています。できるだけたくさんの菌がいた方がいいんです。善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割が理想です。この腸内細菌のバランスがきちんと取れた状態が理想です。※「日和見菌」は優勢な方に味方する菌 |
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――このバランスを保つには健康的な食生活や適度な運動、メンタル面も大きく関わっているんですよね?
江田: | 自律神経が乱れると悪玉菌が増えるということがわかってきています。腸には、腸が自分でお掃除する機能があります。しかし、自律神経が乱れるとこの機能が正常に働かなくなり、結果として悪玉菌が増えてしまうのです。脳と腸はパートナー関係にあるため、脳がストレスを感じたら腸に影響し、腸の不調は脳にも影響してしまうのです。リラックスをして脳のストレスを解消し、食事を健康なものに変えるなどして、健康な腸内細菌を育てることが大切なんです。 |
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――菌は「育てる」という発想なんですね。
江田: | 育てるという考え方は医学的にも認められています。なぜなら腸内細菌は私たちの食べたものをエサにして生きているからなんです。つまり食生活次第で、腸内細菌は「善」にも「悪」にも育てることができるのです。よい栄養素を取り入れた菌は、体に有益な物質を作り出します。 |
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――菌はどれくらいで育つものなのですか?
江田: | 3~4週間で育つといわれています。大人になって完成した腸内フローラは、食事ではなかなか変えられないといわれていましたが、最近の研究では変わるというデータも出ています。 |
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江田: | 腸内環境に大きな影響を与えているのが食事です。善玉菌を成長させる食事をどれだけできるかが大切になってきます。そこで「善玉菌を成長させる食品ベスト4」を紹介しましょう。 |
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江田: | ヨーグルト、みそ、納豆などの発酵食品は、腸内細菌の仲間である微生物が善玉菌を活性化させます。納豆やヨーグルトは善玉菌のエサになるだけではなく、腸内を弱酸性にして悪玉菌が増えるのを防ぐ効果もあります。 |
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江田: | 海藻、野菜(根菜類)、豆などの水溶性食物繊維は、加齢とともに乱れがちな腸内環境のバランスを整えます。水分を引き込んで便をやわらかくするほか、免疫力や脂肪燃焼効果のある酪酸菌を育てることができます。この酪酸菌は食品から摂取することはできず、腸の中で育てることでしか生まれません。酪酸菌は長寿菌としても注目されています。 |
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江田: | バナナ、ごぼう、アスパラガス、タマネギなどに含まれるオリゴ糖は、ビフィズス菌や乳酸菌のエサとなり善玉菌を増やします。バナナなどはヨーグルトといっしょに食べれば効率的に善玉菌を増やすことができます。オリゴ糖は、とりすぎると便がゆるくなることもあるので注意しましょう。 |
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江田: | 青魚(イワシ、サバなど)、サケ、アマニ油などに含まれるEPA/DHAは、腸の中の炎症を鎮め、善玉菌を増やす効果があります。潤滑油として便の通りをよくする効果も期待できます。 |
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江田: | 特に大事なのが空腹の時間を作ってあげることです。連続して食事を続けてしまうと、腸のおそうじタイムが機能せず、結果として腐敗した食べ物が腸内に停滞し、悪玉菌が増える原因になるんです。 |
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――運動も大切ですね。
江田: | 日本人女性のがんの死亡率第1位は「大腸がん」です。大きな要因として考えられてるのが運動不足です。筋肉が伸び縮みするときに、大腸がんを抑える「スパーク」というホルモンが出るのですが、運動不足だと「スパーク」が出にくくなるんです。1日15分程度の運動が理想ですね。それだけで14%も死亡率が下がるという研究結果もあります。 |
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――どんな運動をするのがいいのでしょうか?
江田: | 便秘気味の人は、スクワット、ジョギング、ボクシングなど、下痢気味の人は、ウォーキング、階段上り、体操などの運動がいいでしょう。どちらも少し息切れするくらいの運動で十分です。 |
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―――もう少し短い時間で腸にいい運動はありますか?
【腸ひねり】
江田: | これを1セット3回、1日3セットやってみてください。この動きは、腸のねじれをとるのに効果的で、ガスと便のつまり改善に役立ちます。お尻の穴をぎゅっと締める「骨盤底筋運動」もオススメです。 |
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――これなら私でも続けられそうです(笑)。
【放送】
2023/01/19 「ごごカフェ」
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