本気の終活を考える。「生き方」と「逝き方」

22/12/15まで

ごごカフェ

放送日:2022/12/08

#ライフスタイル

14時台を聴く
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残りの人生をどう過ごすか、どう前向きに人生の最後を迎えるかという「生き方」と「逝き方」について、終活ジャーナリストの金子稚子(わかこ)さんに教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
金子稚子さん(終活ジャーナリスト)


<プロフィール>
1967年、静岡県生まれ。大学卒業後、出版の編集者として活躍。2012年、夫の流通ジャーナリスト・金子哲雄さんが他界。死別後は、編集者だった経験を生かし、医療から葬儀・供養、墓、さらには遺族ケアに至るまで、死の前後に関わるさまざまな事象や取り組みなどを取材。著書や講演会で「生き方」と「逝き方」を考える終活を提唱。


――ご主人の金子哲雄さんがお亡くなりになって、今年で10年なんですね。今では当たり前になった「終活」という言葉も、ご主人がされていた行動がきっかけで一般的になりましたね。

金子: 当時の流行語にも選ばれました。

――ご主人が亡くなられた翌年から、終活ジャーナリストとして活動をされていますが、この10年で、終活の変化に何か感じられることはありますか?

金子: 当時は「死」という言葉への抵抗感があったようです。講演会でも「死」がテーマということでキャンセルされたこともありました。当初は9割が女性だった講演会の参加者も、終活への認識が広がり、いまでは男女比が5:5までになりました。最近では90代の方も参加されています。

――終活は、葬儀やお墓など、自分が亡くなった時のためと一般的に思われていますよね。

金子: 多くの人が「家族に迷惑をかけたくないから」という考えですが、それ以上に、これまでの(これからの)「生き方」をもう一度知ることが大事だと私は思っています。

終活は自分を知ることから

金子: 「死ぬための準備をしよう」とできる人ってそれほど多くないと思います。やれたとしても、周囲や家族は精神的についていけなかったりもします。なので「これからの人生をどのように楽しんで、自分が望むことは何なのか?」、まずはそこをご自分で理解し、気づくことが大切だと考えています。例えば、「〇〇の妻です」「〇〇の親です」「旅行が大好きです」などは答えられますが、意外と日常に隠されたその人の本質って、本人でも気づいていなことがあるんです。そこで、自分の「生き方」を知った上で、その延長線上にある、自分の余生や最期、つまり「逝き方」を「見える化」していくことが大事です。

――なぜ「見える化」が必要なんでしょうか?

金子: どんなに準備をしていても、最後は人にやってもらわなければなりません。死んだあとのことはもちろんですが、それ以前であっても、もしもの場合、自分の想定通りにはいかない(自分の希望を伝えられない)ことはたくさんあります。周囲が「この人は何が希望なのか?」とわかっていないことが多いのです。そもそも自分が気づいていない、なかなか口に出せていないということなんです。つまり、価値観や人生の目標は日常の中に隠されているので、他愛もないことでも書き記しておけば、自分を知ることができます。

――私も日記をつけるのが好きなんですが、書き残すことは大事ですよね。

金子: 自分の意思を伝え、周りの人に納得してもらえる材料になると思います。自分のためにも、自分を支えようとしてくれる家族や医療ケアチームのためにも日記やメモを作って共有してほしいですね。

――「人に迷惑をかけたくない」ということにもつながりますね。

金子: 私はこの日記やメモを「エンディングダイアリー」と呼んでいますが、まず、書くための目的を整理しましょう。
  • 自分のことを客観的に知るために

一言でもいいのでメモすることからやってください。同じ日常でも、気分が良かった日があれば落ち込む日もあるでしょう。その記録された日常から「本来の自分」が見えてきます。

  • 心身の健康を維持するために

体温、血圧、運動、睡眠などのヘルスチェックを記録しておけば、自分のコンディションが見えてきます。

  • 自分の本心、価値観をうまく表現できるようになるために

遺言のようなものを考えても、なかなかその価値観や人生目標を言葉で伝えるのは難しいものです。自分の価値観を伝えるトレーニングのためにもしっかりと記録してみましょう。

――それを踏まえて何を書いたらいいですか?

  • 何時に起床して、何時に就寝か?
  • 体温、血圧、食事は朝昼晩食べたか?
  • 誰と会ったか?
  • 誰のことを考えたか?
  • 楽しかったことは?
  • 嫌だった、不快だったことは?
  • 何に一番時間を使ったか?
  • 今日一日を色に例えると?
金子: 以上のことをメモしてみて下さい。最初は大変だと思っていても、この記録が積み重なっていくと自分自身の姿が見えてきますよ。

――日記などで自分を知ったら次に何をしたらいいですか?

金子: お金や持ち物の価値観を知ることです。1か月の食費、光熱費はもちろん、交際費や趣味などお金の使い方の傾向を知ることは大切です。そこから「自分が何を大事にしているのか」「何が好きでお金を使っているのか」が見えてきます。相続に関する話もしっかりと伝えておきましょう。遺言だけでなく、しっかり自分の気持ちを伝え、残される親族に理解をしてもらうことが大事です。

――お金がトラブルのきっかけになることも多いですからね。

金子: 「言わなくても分かってくれる」というのは通用しないと思ってください。パートナーも子どもも、ひとりひとり感じていることは違います。やはり言葉にして伝えないと、それぞれの価値観で相違が生まれてきます。

――そのコミュニケーションが難しいんですよね。

金子: 大切なことは、配偶者や子どもなど、全員同時に直接伝えることです。「お父さんはこう言っていたよ」と、また聞きの場合、伝えた人の主観も入っているのでは? と思ってしまうことも残念ながらあります。「直接・同時に」がポイントです。「こうしてほしい」と言える人はいいのですが、言えない人は「これは嫌だ」「これだけは許せない、耐えられない」ということを伝えましょう。「どうしてほしい?」と聞かれてもなかなか言葉にできない場合もあります。周囲の人は「何かをしてあげたい」「何かできないか」と思っています。だから「嫌なこと」「不快なこと」を伝えておけば、それを避けて周囲も動いてくれるでしょう。

――これが自分の「生き方」から「逝き方」へのポイントになってくるわけですね。

金子: 闘病生活を送るようになった場合、医療チームの方々には「こうしたい」ということをしっかりと伝えましょう。本人の意思がきちんと確認されないまま、周囲の人の思いが先行してしまう場合もあります。本人の意思がわからなかった場合、残された家族が「これで良かったのか?」と後悔してしまうことにならないようにしましょう。

――自分の意思を、家族や医療の方々と確認することが必要ですね。

金子: 状況によっては希望通りにならないこともありますが、できるだけ「自分のしたいこと」は伝えましょう。私の夫も余命を告げられてから、遺言、お墓、葬儀のことまで自分の意思で進めていたので、残される側の覚悟もできましたし、後悔のない最後だったと思っています。残された家族に「前向きに生きていく力」「生きようという力」は残せます。たとえ亡くなっていても、「お父さんらしい」とか「お母さんだったらこうするね」と折々に感じられることは、遺族にとってはいっしょに生きていることと同じなんです。

【放送】
2022/12/08 「ごごカフェ」

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