教授の蓄音機喫茶 年末スペシャル ~厳選! レア音源

24/01/02まで

ごごカフェ

放送日:2023/12/26

#音楽#歴史

午後2時台を聴く
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スタジオに、100年近く前の蓄音機を設置し、SPレコードの優雅で奥深い音色を楽しみました。解説は、哲学者で東京女子大学名誉教授の黒崎政男(くろさき・まさお)さんです。(聞き手:武内陶子 パーソナリティー)

【出演者】
黒崎政男さん(哲学者、東京女子大学名誉教授)


<プロフィール>
1954年、宮城県出身。カント哲学の研究を専門としながら、コンピューター、人工知能、デジタルメディアなど、現代社会の先端的諸問題を考察する哲学者。骨とう美術、音楽にも詳しい趣味人でもある。


――今回、ご用意いただいた蓄音機をご紹介ください。

黒崎:
イギリス製のHMV130(1929年製造)卓上型。昭和初期、家庭にも普及していた小型蓄音機です。

黒崎:
もう一台のポータブル蓄音機は、HMV102(1931年製造)アタッシェケースサイズで、ピクニックなどに持ち運び可能な蓄音機です。

――箱の前にマイクがセッティングされているだけなんですね。

黒崎:
蓄音機は、電気ではなくゼンマイ仕掛けなんです。ホーン(ラッパ)が表に出ているタイプもありますが、今回は、箱の中にホーンがしまわれている内蔵型を用意しました。

3女王をSPで

黒崎:
昭和を代表する3人の“女王”をご紹介しましょう。1人目は、 “ブギの女王” 、笠置シヅ子さんの「ヘイヘイブギー」です。

――連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインのモデルですね。

黒崎:
笠置シヅ子さんは、1914(大正3)年生まれ。1934(昭和9)年にレコードデビューしました。「ヘイヘイブギー」は、彼女が34歳のときの曲で、戦後の日本を勇気づけた明るい1曲です。

  • 1)ヘイヘイブギー・・・1948年録音。※蓄音機:HMV130、針:ソフト

黒崎:
次は“ブルースの女王”、淡谷のり子さんの「別れのブルース」です。淡谷さんは、1907(明治40)年、青森県生まれ。1930年(昭和5年)にレコードデビュー。この曲は、服部良一にとって初めての大ヒット曲です。

  • 2)別れのブルース・・・1937年録音。※蓄音機:HMV102、針:羽根

黒崎:
3人目は“歌謡界の女王”、美空ひばりさんです。ひばりさんは、1937(昭和12)年生まれ。1949(昭和24)年「河童ブギウギ」でレコードデビューし、歌謡界で大活躍されます。今回お聴きいただくジャズのスタンダードナンバー「A列車で行こう」は、当時17歳のひばりさんの歌声です。

  • 3)A列車で行こう・・・1955年録音。※ 蓄音機:HMV130、針:ソフト

関東大震災100年と音楽

黒崎:
続いて20世紀前半を代表するバイオリニスト、フリッツ・クライスラーが作曲、演奏した「中国の太鼓」をお聴きいただきます。

  • 4)中国の太鼓・・・1928年の録音。※蓄音機:HMV130、針:エルカー

黒崎:
このクライスラーが、唯一の来日公演を行ったのが、100年前の1923年なんです。この1923年といえば関東大震災があった年です。ここからは「関東大震災100年と音楽」というテーマで選曲しました。

  • 5)ショパン作曲「マズルカ」・・・1923年録音。※蓄音機:HMV130、針:ガロトーン

黒崎:
そのころの日本で大流行していたのが「枯れすすき」、別名「船頭小唄」です。この曲は、1921(大正10)年、野口雨情作詞、中山晋平作曲で楽譜出版されました。バイオリンやアコーディオンを弾きながら歌う演歌師のレコードで大ブームになりました。きょうは大津豆千代の歌、笑助の三味線でお聴きください。

  • 6)枯れすすき(別名:船頭小唄)・・・1922年録音。※蓄音機:HMV130、針:ガロトーン

黒崎:
大正から昭和にかけて活躍された浪曲師、篠田実の「紺屋高尾」をお聴きください。1923年に録音されていたものが、震災後に発売され、100万枚の大ヒットになり、関東大震災で経営が傾いたレコード会社が一気に盛り返すほどでした。

  • 7)浪曲・紺屋高尾・・・1923年収録。※蓄音機:HMV102。針:羽根

黒崎:
クライスラーをして「我々に残されたのは、もはや楽器を投げ捨てることだけだ」と言わしめた、ヤッシャ・ハイフェッツのバイオリンをお聴きください。超絶技巧の演奏で世界のバイオリン界をリードしたハイフェッツも、1923年11月、関東大震災後の日本に来日しているんです。つまり、1923年は、世界的に有名なバイオリンの2大巨匠が相次いで来日した年だったんです。ハイフェッツは、11月9日から3日間、公演が予定されていた帝国劇場が焼失したため、帝国ホテルの宴会場でリサイタルを開催しました。そのときのラストに演奏されたアントニオ・バッチーニ作曲「妖精の踊り」をお聴きいただきます。

  • 8)妖精の踊り・・・1917年録音。※蓄音:HMV130。針:ガロトーン

黒崎:
ハイフェッツは、帝国ホテルのリサイタルの翌日(11月12日)に日比谷公園で慈善演奏会を急きょ開催しました。リサイタルの入場料は10円でしたが1円に値下げされ、この演奏会の収入から諸経費800円を引いた残り2800円全額を寄付しました。この慈善演奏会で弾いたのが、サラサーテ作曲の「チゴイネルワイゼン」でした。

  • 9)チゴイネルワイゼン・・・1919年録音。※蓄音機:HMV130。針:ガロトーン

黒崎:
関東大震災を機に、街も文化も音楽も“大正ロマン”から“昭和モダン”へ一新しました。翌年から電気吹込みのレコードも大量に輸入され、蓄音機が広まっていきました。

――蓄音機喫茶もまもなく閉店です。最後に何を聴かせてくれますか?

黒崎:
世界に誇る日本のソプラノ歌手、三浦環が歌う「恋はやさし野辺の花よ」にしましょう。三浦環は、世界に認められた最初の日本人オペラ歌手です。オペラ『蝶々夫人』の主役として2,000回以上舞台に立ち、作曲者のプッチーニも「マダムバタフライは彼女のために書かれたようなもの」と絶賛したそうです。彼女は、震災の前年にヨーロッパ公演から帰国し、この曲も吹き込んでいました。

  • 10)恋はやさし野辺の花よ・・・1923年録音。※蓄音機:HMV102。針:ガロトーン

――今年ならでは選曲でしたね。ありがとうございました。

  •  ※ 貴重な音源の数々は、聴き逃しでお楽しみください。

【放送】
2023/12/26 「ごごカフェ」

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