家でも職場でもない、サードプレイスの魅力

23/12/26まで

ごごカフェ

放送日:2023/12/19

#ライフスタイル#ローカル

午後2時台を聴く
23/12/26まで

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いま、人生を豊かにしてくれる場所「サードプレイス」が注目されているそうです。法政大学大学院・教授の石山恒貴(いしやま・のぶたか)さんに、サードプレイスについて教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
石山恒貴さん(法政大学大学院・教授)


<プロフィール>
1964年、新潟県出身。一橋大学社会学部を卒業後、産業能率大学大学院修士課程と法政大学大学院博士課程を修了。2013年から、法政大学大学院 政策創造研究科の教授として、サードプレイスやパラレルキャリア、越境学習などについて研究を行っている。


――サードプレイスって?

石山:
親子や夫婦といった関係性による立場や役割がある「家庭」が第一の場所、業務上の義務や上下関係がある「職場」が第二の場所。そして、役割や上下関係などから解放されて過ごすことができる第三の場所がサードプレイスです。

――サードプレイスのよさとは?

石山:
家庭や職場での役割や利害と関係がなく、何者でもない自分でいられることは居心地がよく、貴重なリラックスタイムとなります。また、ふだん会わない人たちとの出会いや会話も新鮮なおもしろさや驚きを与えてくれます。現代社会では、利益や効率、目的達成が求められて息苦しくなりがちですが、自由になれるサードプレイスは、人生において潤滑油のようなものだと思います。

――石山さんにとってのサードプレイスは?

石山:
会社員時代に通った大学院でサードプレイスの良さを実感しました。そこには、20代前半の若者から70代くらいまで、さまざまなバックボーンの人がいて、先輩後輩的な上下関係もなくフラットなので、いろいろな話ができました。そのフラットさこそが社会人大学院の魅力だと思うので、教授になった今でも、先生や教授でなく「イッシー」などと呼んでもらっています(笑)。

――サードプレイスという概念はいつ頃からあるのですか?

石山:
1989年に、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱しました。日本では、90年代後半にアメリカのカフェチェーンが上陸した頃から、ごく一部で聞かれるようになりました。ワークライフバランスという言葉が登場し、仕事に偏らない生き方が模索される中で、最近は、中高年に限らず幅広い層からもサードプレイスへの注目が高まっています。また、サードプレイスに特化した研究機関も登場しています。

日本におけるサードプレイス

  • マイプレイス型

石山:
ひとりでくつろげるチェーン系のカフェや、図書館で、周りの人と関わらずにリラックスできる場所。いわゆる“おひとりさま”ブームが市民権を得て、当たり前になってきたので、マイプレイスになり得る場所のバリエーションも増えています。

  • 社交交流型

石山:
物理的な場所としてはマイプレイス型と重なりますが、人との交流があることがポイントです。常連客どうしや店員とのコミュニケーションが活発な個人経営の喫茶店やカフェ、スナック、バー、居酒屋などです。ちなみに、職場の人と行く居酒屋は、セカンドプレイスの延長なので、純粋なサードプレイスとはいいづらいですね。

  • 義務的共同体型

石山:
例えば、PTAや地元の消防団などの活動が発端となっている集まりです。義務、職務として始めた活動のつながりが、いつのまにか「ゆるいつながり」になり、役割を越えてリラックスできる関係性になればサードプレイスといえるでしょう。

  • 目的交流型

石山:
例えば、ボランティア活動を行う地域NPOの集まりや、読書会、句会・歌会といった趣味の集まり、〇〇教室などの習い事や、カルチャーセンターなどです。私が経験した社会人大学院も目的交流型サードプレイスです。

――#ごごカフェ でつながることができるSNSも、ひとつのサードプレイスですか?

石山:
同じ番組の感想を共有したいという目的交流型のデジタル版ですね。

――サードプレイスを見つけるコツは?

石山:
何よりも手っ取り早いのは、知り合いの趣味や交流の場所へ連れて行ってもらうことです。また、何かを教わる「〇〇教室」や、同じ趣味などの人の集まりもいいですね。同じようなものに興味関心がある人の集まりなので、全くベースのない自由交流よりも会話の取っ掛かりがあるので、話をしやすいですよ。

各地のサードプレイス紹介

川崎プロボノ部(神奈川家・川崎市)

石山:
プロボノとは、社会的・公共的な目的のために、仕事で培った経験やスキルを生かすボランティア活動です。目的のない“おしゃべり”が苦手な人には、自分の仕事経験をいかせるプロボノはオススメの活動のひとつです。

あひる図書館(静岡県・三島市)

石山:
本を介して人々をつなげる取り組みをしています。棚ひとつずつに、オーナーが自分の好きな本を置いていて、訪れた人は、自分と同じような趣味、同じような勉強をしている人を見つけて交流のきっかけにもなっています。

三島バル(静岡県・三島市)

石山:
数十店舗の飲食店で使える5枚つづりのチケットを発行して、お得に飲み歩ける「三島バル」。気になっていた店を気軽にのぞきやすく、気に入れば常連になってサードプレイスにでき、飲み友達をつくるキッカケになります。

ユースペース(千葉県・松戸市)

石山:
平日の夕方から開放しているスペースで、中高生が気軽に集まり、読書やおしゃべり、楽器演奏などが自由にできます。大学生のボランティアスタッフによる学習指導も行われていて、彼らにとってもサードプレイスになっています。

コワーキングスペース(神奈川・茅ヶ崎市)

石山:
地域で活動をしたい人が、自分のアイデアを発表するチャレンジ企画会を定期的に開催しています。生活習慣病リスクが高く、ヨガに興味はあっても気後れしてしまう中高年男性を集めた「おっさんずヨガ」もここから生まれました。

――サードプレイスはこれからどうなりそうですか?

石山:
今後、社内でのサードプレイス的な場づくりをする会社が増えそうです。また、いまの若い世代は社会貢献したいという意識が高いので、地域のためになる活動やボランティア活動などの場となるサードプレイスがさらに活性化していくと考えています。

――楽しいのが一番ですね。


【放送】
2023/12/19 「ごごカフェ」

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