幻の発酵食品!? 「むかでのり」とは?

23/11/23まで

ごごカフェ

放送日:2023/11/16

#インタビュー#カルチャー#ローカル#たべもの

午後2時台を聴く
23/11/23まで

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日本全国には、地域ごとに独特の発酵の文化があります。発酵デザイナーとして、世の中に発酵食品のすばらしさを伝えている小倉ヒラクさんに、「発酵をデザインする」とはどういうことなのか? 忘れられていた発酵食品についても教えていただきました。(聞き手:吾妻謙パーソナリティー)

【出演者】
小倉ヒラクさん(発酵デザイナー)


<プロフィール>
1983年、東京都出身。発酵デザイナーとして、全国の醸造家と商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。雑誌、ラジオ、テレビでも活躍。著書多数。


小倉:
目には見えない微生物が有機物を分解し、人間にとって有用な物質をつくり出すことが発酵です。この微生物を発酵菌といい、日本で代表的なものは麹(こうじ)です。また、藍染も発酵なんですよ。

――もともとは発酵とは全然違う世界にいたそうですね。

小倉:
大学では文化人類学を勉強していました。卒業してからは、デザイン会社で商業デザイナーとして、いろいろな地方に行っていました。

――発酵との出会いは?

小倉:
デザイナー時代に体調を崩したときに、実家がみそ屋さんの同僚から、発酵学の小泉武夫先生を紹介してもらったんです。先生から「お前は生まれつき体が弱いだろう? だから発酵食品をとりなさい!」と言われ、おみそ汁などの発酵食品を毎日食べるようにしたら、体調がよくなっていきました。

――それから、発酵の世界にハマって東京農業大学で研究生として学ばれたんですね。

小倉:
大学では麹の働きや、酵母の研究をしました。

――それから“発酵デザイナー”になったんですね。

小倉:
見えないものを可視化するのが“発酵デザイナー”だと考え、2011年に子どもが歌って踊れる、みそをテーマにした曲『てまえみそのうた』を作り、2014年にグッドデザイン賞に選ばれたんです。これは運命的な仕事だと思いました。発酵をブームで終わらせないために、ワークショップの開催や、絵本の制作、発酵食品のアートディレクションなどの活動を続けてきましたが、今は産業・技術開発に関わっています。例えば、「野生の微生物が本当にお酒の味に影響しているのか?」「微生物と人間が、コミュニケーションができるデジタルデバイスの開発」などの研究プロジェクトにも関わっています。

――やりがいのあるプロジェクトですね。

忘れられていた発酵食品

――地域の特性に合わせて発展していった発酵食品がある一方、一部の地域だけに残っている発酵食品もあるそうですね?

小倉:
青森県十和田には、作るのに失敗した納豆に麹を入れて乳酸発酵させる「ごど」があります。発酵の浅いうちはそのまま食べますが、発酵が進むとドロドロになってくるので、野菜のディップとして食べます。寒さと湿気の関係で、昔の十和田は、お米が育たない土地だったそうで、納豆も手作りしていました。しかし、温度管理がうまくいかず失敗した納豆を何とか生かしたいという思いから「ごど」が生まれたそうです。すっかり忘れられていた「ごど」でしたが、最近、若い人も作るようになったんですよ。

――伝統がつながってよかったですね。他には?

小倉:
宮崎県日南市には、海藻を使った「むかでのり」という発酵食品があります。トゲキリンサイと呼ばれる海藻を寒天にしてみそ漬けにしたものなんです。「むかでのり」という名前は、トゲキリンサイがムカデのように見えるからだそうです。

――今後、どのような活動していきたいですか?

小倉:
いろいろな国の発酵文化をもっと調べてみたいです。日本にもまだまだ知らないものがあります。発酵は我々のルーツをたどる「終わりのない旅」です。


【放送】
2023/11/16 「ごごカフェ」

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