知ってびっくり! アリの生態

23/05/17まで

ごごカフェ

放送日:2023/05/10

#昆虫#いきもの

午後2時台を聴く
23/05/17まで

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私たち人間の身近なところで独特の社会を形成しているアリの驚くべき生態。今の時期にしか見られない貴重な姿について、アリ探求家の島田拓(しまだたく)さんに教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
島田拓さん(アリ探求家)


<プロフィール>
1981年、東京都出身。幼い頃から、虫や動物の生活に魅せられ多くの生き物を飼育。ペットショップや動物園で勤務の後、2001年にアリのペットショップを開業。アリの魅力を知ってもらうために活動中。著書多数。


――島田さんがアリに目覚めたきっかけは?

島田: 中学3年の時、ヒルやミミズを観察しようと高尾山に行ったとき「ムネアカオオアリ」というアリの女王アリに出会ってしまいました。その姿に惹(ひ)かれ、家に持ち帰ったんです。しばらくすると産卵して、女王アリが子育てする姿に感動したんです。

アリの小宇宙を探検

島田: 5月は「クロオオアリ」が産卵の前に行う結婚飛行のピークの時期なんです。

――結婚飛行とはロマンチックですね。

島田: 結婚飛行を行うのは、羽のある女王アリとオスアリです。結婚飛行に大切な条件は、温度と湿度が高く、風の弱い晴れた日です。時間帯は午後から夕方で、巣穴から顔を出してこの条件を探り、「今だ!」となったら、2匹が飛び立ち、それぞれ別の群れの女王アリ、オスアリとマッチングします。

――今日は晴れていますし、これからの時間帯は結婚飛行を見るチャンスですね。

島田: うまくマッチングしたら一緒に飛んで交尾して、女王アリは地上に降りてしまいます。ここからが興味深いところなんです。女王バチは自分で羽を落として、新たな家となる巣穴を掘り始めるんですよ。

――自分で羽を落とすのですか?

島田: 女王アリの羽は反対側に折り曲げると簡単に取れる構造になっているんです。

――たった1匹の女王アリが巣穴を掘っていき、そこからどのように生きていくのですか?

島田: まず、女王アリたった1匹で掘り始めます。ここでおもしろいのは、巣穴を掘る時に必ずトイレとゴミ捨て場をつくっていくんです。

――どうしてですか?

島田: きれい好きであるということと、むやみに危険な外に出てトイレをする必要がなくなるためなんです。女王アリは、ある程度掘ると産卵します。そして、子育て専用の部屋をつくり、幼虫が生まれると、口移しで幼虫にエサを与えて育てていくんです。

――女王アリはどのくらいの卵を産むのですか?

島田: 最初は10個くらいです。彼らが卵から幼虫になって成虫になるまでの1か月から2か月の間、女王アリは何も食べずにひたすら子育てをします。そして、この子たちが“働きアリ”となり自分たちでエサをとってくると、今度は女王アリの世話をするようになるんです。それ以降、女王アリはひたすら産卵を続け、ファミリー(コロニー)をつくっていきます。

――ひとつの巣にひと家族ということなんですね。

島田: 繁殖を担当する1匹の女王アリをその子どもたちで支えていくカタチですね。2000匹くらいになる家族もいます。

――1匹の女王アリからそんなに生まれるんですか?

島田: 女王アリの交尾は結婚飛行の1回だけですが、その時に蓄えた精子で産卵し続けることができるんです。女王アリの寿命は10~20年と昆虫としてはかなり長いんです。そして生まれてくるアリ(働きアリ)はすべてメスなんです。

――大奥みたいですね。

島田: それぞれの仕事を分業することで人間の社会が成り立つように、アリたちも幼虫の時に与えられるエサの量と質によって、働きアリや兵隊アリ、そして女王アリとなっていくんです。

――それぞれどんな役割を持っているのでしょう?

島田: 女王アリは繁殖を受け持ち、働きアリは女王アリの身の回りの世話をします。体が大きかったり、ある程度経験を積んだベテランの働きアリは外に出てエサを見つけて運んだり、違うファミリーが巣穴にやってこないように防衛したりします。

――アリのファミリーはすべてがメスということですが、結婚飛行の時のオスアリはどこから来るのですか?

島田: クロオオアリの場合、毎年ではないものの、羽のついたオスアリが何匹か生まれるんです。それが成虫となって結婚飛行をして一生を終えます。ちなみにクロオオアリの場合、女王アリと働きアリは有精卵から、オスは無精卵から生まれるんです。

――日本にはどのくらいの種類がいるのですか?

島田: 日本だけで約300種類、世界には1万種以上がいるといわれています。日本でいちばん大きいのは全長18ミリほどの「クロオオアリの女王」で、最も小さいのはわずか1ミリの「コツノアリ」です。

アリといっしょに生きる虫

島田: アリたちと一緒に暮らすことができる生き物もいるんです。これを好蟻性生物(こうぎせいせいぶつ)といいます。

――たとえばどんな生き物がいるのですか?

島田: 個人的に好きなのが「アリヅカコオロギ」です。「アシナガキアリ」の巣の中に生きているコオロギで、口が退化してしまっているため、アリが口から出す液体を口移しでもらう以外、栄養を取る手段がありません。アリヅカコオロギは、アリの体をなめてそのにおいを自分の体につけることで「自分もアリだよ!」とアリになりすましているんです。

――あつかましいわ~。でも不思議ですね。

島田: ほとんどの好蟻性生物は、一方的にアリから恵みをもらい助けてもらっています。体長は4ミリ程度で長い行列をつくる「クロクサアリ」の行列を見ていると「ハネカクシ」という小さな甲虫が一緒に歩いているときがあるんです。何をしているのかというと、アリが見つけたエサを盗み食いしたり、アリが運んでいるエサに飛び乗って盗み食いしていたりするんです。

島田: アリが周りの生き物と助け合うということもあります。例えば「クロオオアリ」は、植物についている「アブラムシ」が出す“甘露”(おしっこ)が好物なんです。そこには糖分が含まれていて、クロオオアリにとってはごちそうなんです。クロオオアリはアブラムシのいる植物に登って甘露をもらい、アブラムシはクロオオアリにうろついてもらうことで、天敵である「テントウムシ」から身を守ることができるんです。

――共生関係が成り立っている、まさに“ウィンウィン”の関係ですね。

島田: そのほか「ミツバアリ」というアリの巣の中には「アリノタカラ」というカイガラムシが必ず一緒に暮らしています。アリノタカラは植物の根から汁を吸って甘露を出していて、ミツバアリはこれがないと生きていくことができないんです。アリノタカラは動くことができないので、ミツバアリが植物の根までアリノタカラを運んでいるんです。これこそ究極の共生関係です。

――これからの夢は?

島田: これからは世界中のアリを探しに行きたいです。

――私は仕事の帰りに女王アリを探してみようかしら(笑)。


【放送】
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