健康は足から

22/11/24まで

ごごカフェ

放送日:2022/11/17

#医療・健康#カラダのハナシ

14時台を聴く
22/11/24まで

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ふだんはあまり気にかけていない「足」にとって、良いこと、気をつけたいこと、不具合のサインなどを、医師の久道勝也さんにうかがいました。足をケアして、健康に過ごしましょう!(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
久道勝也さん(医師)


<プロフィール>
1964年 静岡県生まれ。1993 年、獨協医科大学卒業後、順天堂大学皮膚科入局。2007 年、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の客員助教授を経て、2016 年、足の総合病院「下北沢病院」を設立。足に関する著書多数。


――アジアで唯一の足の総合病院を設立されたのは?

久道: 欧米には足と歩行を専門領域とする足病科(あしびょうか)という分野があって、歯科医と同じように身近な存在です。超高齢化社会を迎える日本に足病科がないのは問題だと思い、足と歩行の専門病院を作り、患者さんを診るだけではなく、医療者を育て、社会に足の医療の知恵を届けたかったんです。

――ご専門は皮膚科ですが、足とはどのような関係があるのですか?

久道: 足と皮膚といえば「水虫」が分かりやすいかもしれません。水虫は夏のピーク時には2千万人、つまり日本人の5人に1人がかかります。たかが水虫と思うかもしれませんが、糖尿病患者の場合、水虫から細菌が入り二次感染します。急速に重症化して下肢切断までいくこともまれではありません。また、タコができる場所から、歩行の不調、へん平足、ハイアーチ、外反ぼしなどの骨変形のパターンが分かります。どんな歩き方をしているのかもタコをみればわかります。

――足の健康は大切なんですね。

久道: 人生100年時代といわれる超高齢化社会で、①歩けなくなる⇒②適切な排せつができなくなる⇒③食べられなくなる、という3つの階段を人は降りていきます。つまり歩行を維持できなくなるのが最初の階段なんです。重い体重を支え、毎日何千回も地面にたたきつけられ、蒸れたり、乾燥したりするなど、足は過酷な環境にあります。我々、医師の感覚では、足が元気でいられる年数は50年と考えています。なので足をケアして、自分で歩くことはものすごく大切なんです。

――コロナ禍の影響で歩く機会が減った人も多いと思いますが。

久道: 確かに減っていますね。日本の場合、後期高齢者より、50~75歳くらいの歩行量の減少が問題になっています。意識的に歩くことを習慣にして歩行量を増やしてください。1日歩く中で、20分間くらい早歩き(キビキビ歩き)の習慣をつけると効果的です。

アキレス腱(けん)をやわらかく

――足の健康を保つために大切な場所があるそうですね。

久道: 私たち医師が重視するのはアキレス腱のやわらかさです。アキレス腱は、ふくらはぎの膨らみを作っている「下腿三頭筋(かたいさんとうきん)」と、かかとの骨をつなぐ人体最大の腱です。15cmほどですが、1トンの重さにも耐えられるといわれています。このアキレス腱がスムーズな歩行運動のための要です。アキレス腱が硬いと、歩くときにすねの骨が十分に前に倒れず、足に負担がかかりトラブルの元になります。足の健康にはやわらかいアキレス腱が欠かせません。アキレス腱をやわらかくする運動を紹介します。
  • アキレス腱のばし
久道: 注意点は「かかとを浮かさない」。前後のつま先が真っ直ぐ前を向いている、後ろの足のひざを曲げない、反動をつけない。壁の手をつきながらでも構いません。伸ばした状態で30~60秒キープ。それを片足ずつ5回程度行ってください。
  • かかと上げ
久道: こちらも何かにつかまりながらで大丈夫です。足を腰幅に開き、つま先をまっすぐ前に向けてかかとを上げます。小指側、親指側に寄らないように注意しましょう。3秒を10回、3セット行ってください。
  • 無理をせず、持病のある方は医師と相談して行ってください。

ふくらはぎは第二の心臓

久道: ふくらはぎは、心臓から送り出された血液を、体の隅々まで送り届けるポンプの役割をしています。このふくらはぎにコブのようなものができるのが「下肢静脈瘤(りゅう)」です。軽いものならばモヤモヤした血管が見える程度ですが、ひどくなるとコブのようになってしまいます。座りっぱなし、立ちっぱなしの仕事、運動不足の方は要注意です。ひどくなると、足の皮膚に潰瘍ができることもあります。

――どのような対策をすればよいですか?

久道: かかとに重心を置いた歩き方ではふくらはぎは使えていません。一歩足を出したらしっかりかかとを上げ、親指でしっかりと地面を蹴り出すような歩き方をしましょう。少し歩幅を大きくしたり、階段を使ったりすれば、ふくらはぎを動かすことになります。ふくらはぎを下から上に向かってマッサージするのも効果があります。ふくらはぎは、アキレス腱とつがっています。アキレス腱が硬いと、ふくらはぎの筋肉もしっかり使うことができません。これを忘れないでください。

ひざが痛い原因は?

久道: ひざが痛いと言う方の多くが「変形性ひざ関節症」という、ひざの関節の軟骨の質が低下し、少しずつすり減り、歩行時にひざに痛みが出現する病気です。7割が女性といわれています。40歳代から発症する人が多く、65歳以上で55%ほど、80歳代で80%ともいわれています。

――変形性ひざ関節症の原因はなんですか?

久道: 多いのは、加齢、体重増加、ひざの内反変形(O脚)、重労働などです。最近の研究では遺伝も関係しているともいわれています。

――どのような対策をすればよいですか?

久道: いすに座ったままひざをのばす「レッグエクステンション」が効果あります。治療や指導を受けながら、ひざを支える筋肉を鍛える運動をしてください。また、和式の生活から洋式の生活へ、ひざの負担を減らす工夫をしてください。運動時のサポーターや運動後のアイシングも効果的です。肥満の方はダイエットも必要です。

へん平足

久道: へん平足は病的な変形の一つです。歩行時に足の骨はアーチを沈ませて衝撃を吸収するのですが、へん平足の人は必要以上に沈みすぎてしまうため、関節、じん帯、腱、骨にまで影響があり、さまざまな足のトラブルのもとになります。

――どうすればよいですか?

久道: 医療用のインソールを作って矯正することをオススメします。

足の8020運動

久道: 80歳になった時もキビキビと20分歩けるようにしよう!というキャンペーンです。それぞれの体力に合ったキビキビ歩きでOKです。歩くことは、もっとも基本的な移動手段であり、自立を支える根本的な動作です。歩行の維持ができれば健康寿命をのばすことができます。

――人生100年時代。健康と足、歩くことの大切さ、勉強になりました。


【放送】
2022/11/17 「ごごカフェ」

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