お酢博士の“カルシウム増量”しじみのみそ汁

23/02/16まで

ごごカフェ

放送日:2023/02/09

#医療・健康#たべもの#レシピ

14時台を聴く
23/02/16まで

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お酢博士の小泉幸道さんに、お酢の効能や、お酢を継続的にとるためのレシピを紹介していただきました。お酢にはうれしい健康効果がたっぷりです!(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
小泉幸道さん(東京農業大学名誉教授)


<プロフィール>
1951年、横浜生まれ。東京農業大学農学部醸造学科卒業後、1997年に東京農業大学教授に就任。専門は発酵食品学、醸造学。著書多数。


――お酢博士として活躍中ですが、お酢は毎日とられているのですか?

小泉: わが家の冷蔵庫には大根、きゅうり、にんじんの「スティック野菜の甘酢漬け」が常にストックされていて、毎日食べています。

――インフルエンザも流行していますが、こんな時期だからこそお酢をとってほしいそうですね?

小泉: お酢には唾液の分泌を促す働きがあります。唾液には多くの抗菌・抗ウイルス物質が含まれているので、お酢をとることで細菌やウイルスが体内に入るのを防いでくれるんです。

お酢は人類最古の調味料

小泉: お酢が初めて文献に登場するのは紀元前5千年頃です。メソポタミア南部のバビロニアでは、デーツの果汁から質の良い酢がつくられたとの記録があります。日本では太古から自然発生的にお酒、お酢の存在が知られていましたが、5世紀には中国からお酒づくりの技術が伝えられました。奈良時代には、魚介類を保存するためにお酢が使われ、平安時代には、かんきつ類のしぼり酢や柿酢のように、果肉や果汁をそのまま利用したお酢が出回るようになりました。江戸時代、元禄のころには、日本酒の副産物である酒粕からお酢をつくる技術が開発されました。このころ、ご飯にお酢を混ぜるようになり、お酢は江戸の食文化の発展に大きく関わりました。明治時代には、ヨーロッパからアルコール発酵や酢酸発酵の原理が入ってきて、マヨネーズや果実酢の生産もされるようになったんです。その後、昭和の戦時中はお米がなく、醸造酢の代わりに化学的な合成酢が主流になりましたが、戦後、醸造酢が復活しました。人類最古の調味料であるお酢は、今なお進化を続けているんです。

純米酢の作り方

小泉: 精米した米を洗って蒸して蒸米(むしまい)をつくります。これとは別に、蒸米に麹(こうじ)菌をふりかけて米麹をつくります。タンクの中に、蒸米、米麹、水、酵母菌、乳酸菌を入れてアルコール発酵させるとお酒(アルコール)ができます。この酒を水で薄めて種酢(酢酸菌)を加えると発酵が始まり、熟成期間を経てお酢ができあがります。お酢はアルコールを酸化させてできたものなので、お酒をつくることができる原料であれば、米や小麦などの穀物はもちろん、りんごやぶどうなどの果物、豆や野菜からもお酢はつくることができます。

毎日大さじ1杯のお酢があなたを変える!

【血圧】

小泉: お酢の酢酸には、血圧上昇に関わるホルモン調節機構を穏やかに抑制する働きがあると同時に、酢酸代謝の過程で生成されるアデノシンが血管拡張を引き起こすことでも血圧が降下することがわかっています。血圧が高めの成人男女は、大さじ1杯をプラスした食生活を始めましょう。
正常な血圧の人がお酢を毎日とっても、血圧を下げる心配がないことがわかっています。

【血糖値抑制】

小泉: 血糖値の上昇は糖尿病のリスクにつながります。糖尿病予防のためにはインシュリンの過剰分泌を抑える食べ方が大切です。それには食べ過ぎないことや糖の分解速度が遅い食品を選ぶことがポイント。お酢には糖の吸収を穏やかにし、血糖値の上昇を緩和させる作用があります。

【内臓脂肪】

小泉: 肥満気味で平均血中中性脂肪が高めの成人男女に、大さじ1杯のお酢を朝晩2回に分けて12週間、毎日続けて摂取してもらったところ内臓脂肪が減少しました。これは酢酸の働きで、脂肪の合成が抑制され、燃焼が促進されたからです。

【疲労回復】

小泉: 体を動かした時に疲れを感じるのは、体内に蓄えられたエネルギー源が不足するからです。食事でとった糖分は、体内でブドウ糖に分解されグリコーゲンという形になって、肝臓や筋肉に蓄えられますが、これが不足することで疲労を感じます。グリコーゲンの補給には糖の摂取が欠かせませんが、肝臓のグリコーゲンは糖分だけでは回復しません。しかし、お酢といっしょに糖をとることで、グリコーゲンの補給がスムーズになり、疲労回復につながります。

【便秘】

小泉: お酢には胃酸の分泌を促す作用があります。分泌された胃酸やお酢の成分そのものが胃や腸を刺激し「ぜん動運動」を活発にします。その結果、便通が良くなり、便秘が改善されます。もちろん、適度な運動やバランスの良い食事をとることも大事ですよ。

――お酢のとり方で気をつけることは?

小泉: 飲む場合は必ず5~8倍に薄めて飲んでください。お酢をとるタイミングとしては、食事の最初に酢の物でお酢をとることをオススメします。食欲がないときも、酸味と香りが味覚や嗅覚を刺激して、唾液を出して食欲をよみがえらせてくれます。また、食べ物が飲み込みにくくなっている高齢者などは、酢の物を最初にとることで唾液が出て、のどを通りやすくします。

小泉博士のオススメレシピ

  • カルシウムたっぷり「しじみのみそ汁」
小泉: 肉や魚の骨にはカルシウムが多く含まれています。食材をお酢で煮ることで効果的なカルシウム摂取につながります。お酢によって殻からカルシウムを溶出させる「しじみのみそ汁」を紹介します。

【作り方】
水200mlに殻付きのしじみ(50g)を入れ、お酢(小さじ1と1/2)を加え、弱火で8分間煮ます。火を止め、みそ(10g)を入れて溶かします。酢を入れない時と比べてカルシウムが多く溶け出します。健康のためにお酢をたくさん入れたくなるところですが、これ以上入れるとみそ汁の味が変わってしまうので注意しましょう。

  • スティック野菜の甘酢漬
小泉: きゅうり、大根、にんじんをスティック状に切り、リンゴ酢(150ml)、砂糖(70g)、塩(小さじ2)の漬け汁に漬けます。冷蔵庫で保存し、食事の時に取り出して食べてください。食物繊維とお酢を両方とることができますよ。キャベツやタマネギなど、身近な野菜でいろいろ酢漬けを試してください。
  • りんご酢ミルク
小泉: グラスにリンゴ酢(大さじ1)を入れ、はちみつ(大さじ1)、牛乳(120ml)を加えてかき混ぜます。お酢の影響でタンパク質が変化し、トロッとしたヨーグルトのような味になるので、牛乳が苦手な人でも飲みやすくなりますよ。また、無糖の炭酸水(120ml)にリンゴ酢(大さじ1)とはちみつ(大さじ1)を入れた「リンゴ酢サイダー」もオススメです。

お酢の魅力

小泉: お酢は爽快な酸味と芳香を持つ調味料として、日本の食文化の形成に大いに貢献してきました。魚介類、野菜、果物など、多くの食材と合い、さまざまな料理にも使われています。お酢を使った料理は、生鮮食品を素材として用いることも多いので、過剰に摂取しがちな加工食品を回避することにもつながり、栄養上好ましい結果をもたらしてくれます。さらに食酢は健康効果を高めてくれます。お酢を暮らしの中で上手に活用し、実り豊かな健康ライフを築いていただきたいと思います。単なる調味料ではなく健康に良い調味料として、積極的に活用してみてください。

――今日から私も「大さじ一杯!」始めます。ありがとうございました。


【放送】
2023/02/09 「ごごカフェ」

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