【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ ~詩人 伊藤比呂美さん~」

24/02/23まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2024/02/16

#文学#読書

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月イチ恒例! 比呂美庵、オープンです! ということで、きょうのセンセイは、詩人の伊藤比呂美さん。いつものように、リスナーの皆さんから寄せられたお悩みに、源一郎さんとお答えしていきました。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
伊藤:伊藤比呂美さん(詩人)
礒野:礒野佑子アナウンサー

伊藤さんの近況報告~最近、何やってるんですか?~

礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、詩人の、この方です。

伊藤:
伊藤比呂美です。

高橋・礒野:
よろしくお願いしま~す(拍手)。

伊藤:
よろしくお願いしま~す。

高橋:
ということで伊藤さん、最近、何やってるんですか?

伊藤:
私? 犬の世話をやってますよ…。あはははっ(笑)。

礒野:
犬の世話!?

伊藤:
犬の世話と猫の世話と、もう大変なんですよ~!

高橋:
増えたんだっけ?

伊藤:
1匹ね、あのね~、18歳の子がね、アメリカから輸入したの。

高橋:
18歳!?

伊藤:
うん。輸入って言うんですよ、犬を連れてくるってことを…。

高橋:
前に飼ってた犬だよね?

伊藤:
前に飼ってた犬。

高橋:
伊藤さんの本によく出てきた犬!?

伊藤:
私が6年前に日本に帰ってきたでしょ。その時にね…。

高橋:
置いてきたんだよね。

伊藤:
置いてきたの。「3年間待っててね」って言って。

高橋:
それで6年経ったの(笑)。

伊藤:
どんどんどんどん、年とってきちゃって…。

礒野:
ええ。

伊藤:
18歳で「もうちょっと、これは無理かな~」って言いながら、娘がね、ちょうどね、孫2人と3人で来た時に…、

高橋:
連れてきたの?

伊藤:
連れてきた。

礒野:
へぇ~。

高橋:
ねぇ、18歳、元気?

伊藤:
だって、谷川さんくらいじゃない?

高橋:
うっほほ、あっはっはっはっはっ(大笑)。

礒野:
谷川俊太郎さん…。

高橋:
なんと、なんと言っていいものやら…。

礒野:
今どういう構成なんですか? 飼ってらっしゃるのは?

伊藤:
犬が3匹。猫が2匹。

礒野:
うゎ!

伊藤:
で、猫が大型猫なんですよ~。

高橋:
えっ、何? 種類は?

伊藤:
なんかね…、知らない。

高橋:
あっはははっ(笑)。

伊藤:
抱くとね、「よいしょ!」って言って、2、3回「よいしょ!」って言わないと抱けないようなのが2匹。

高橋:
すごい…ね(笑)。

高橋・礒野:
大変ですね~。

伊藤:
大変です!

礒野:
でも源一郎さんもね!

高橋:
そう!

礒野:
犬を飼い始めて…。

高橋:
僕は1匹だからね。全然…。

伊藤:
でも、散歩してて、人としゃべるんでしょ?

高橋:
めっちゃしゃべります。

伊藤:
私ね、人がいないとこ、いないとこ行くんですよ。

高橋:
いるんだよね、そういう人が!

礒野:
お散歩中に…、あえて?

高橋:
あのね~、犬の飼い主って2種類いるよね。犬を連れてみんなとコミュニケーションする人と、できるだけ避けている人。

伊藤:
そう! 避けてるほう。

礒野:
えっ! どうしてですか?

伊藤:
うちはね、3匹いて、1匹しか散歩できないから…、

高橋:
うん。

伊藤:
シェパードは、やっぱりあんまり、他の犬とはうまくいかないの。

高橋:
あ~、なるほどね。

伊藤:
いく子もいるけど、うちはもう代々ダメだ。

高橋:
う~ん。

伊藤:
だからもう犬がいると、人はいいんだけど、サ~ッと…。

高橋:
犬がね~。そう、そう、そう。犬が苦手な犬がいるからね。

伊藤:
そう、そう、そう。

高橋:
そうですか~。

比呂美庵 1通目~「マルハラ」、どう思いますか?~

礒野:
そろそろ恒例のコーナーに行っていいでしょうか!?

高橋:
いいでしょうか!?

伊藤:
比呂美庵へ…、あっ、「ようこそ、比呂美庵へ!」

高橋・礒野:
わ~い(拍手)。

伊藤:
わ~い(拍手)。

礒野:
今日も時間の限りお便りを紹介していきます。

高橋:
はい、はい!

礒野:
まずはラジオネーム「こけしりとり」さん。長野県にお住まいの40代の女性です。
最近「マルハラ」という言葉を聞きます。源一郎センセイたちは「マルハラ」についてどう思いますか?
私は大人の側が若者に気を使いすぎなんじゃないかなぁ。お互い歩み寄りというか、若者側も、大人は「。」を使うんだなって知ってくればいいのに、と思ってしまいます。

高橋:
あの~「マルハラ」って知ってます?

礒野:
「マルハラ」って最近ね、ちょっと聞く言葉ですけども…、

高橋:
聞く言葉ですね。

礒野:
LINEなどのコミュニケーションの中で、文末に句点「。」がついた文章を若者が威圧的に感じてしまう、ということで、「マルハラ」と言われるそうです。

伊藤:
「ほっとけよ!」って思っちゃう、私(笑)。

高橋:
あはははは(笑)。

伊藤:
「うるさい~っ!」って(笑)。

高橋:
う~ん。あのね~、「マルハラ」って知らなかったんですけど、なんて言ったらいいんですかね…。

伊藤:
「ハラ」言い過ぎ!

高橋:
いや、これが、どうしてハラスメント…、「ハラスメントだ」っていうふうに感じたりするほうも、ちょっともう少し、なんて言うかな…、ハラスメントで使っている人はいないはずだから。

伊藤:
そうね。

高橋:
う~ん。

伊藤:
自然に「。」つけちゃってんですよ。

高橋:
これさ「日本語の文章」じゃない!? 僕らもね、ものを書いたり読んだりしてると、ここで「。」つけたいなとかさ、ここで「、」があったりとか、それは日本語を使う時に、もうちょっとこうやると「。」が多いから、うっとうしい文章だな、とかさ…。これはちょっと、どっかに「、」つけて欲しいな、とかっていうのを、僕らは文章として読むので、本来そういう「文章の美しさ」とかさ、使い方を、そこだけ切り取って、何か圧迫を感じるっていう方向だけを切り取るような、その~、みんなが「あっ、これはハラスメントじゃないですか!?」っていう、社会全体の動きが、僕はちょっと恐いなという…。

伊藤:
う~ん。

礒野:
比呂美さん、どうですか?

伊藤:
私ね、この言葉をね、知ったのはすごく最近、新聞で読んだんですけど…、

高橋:
僕も!

伊藤:
そうでしょ。

高橋:
知らなかった。

伊藤:
新聞が取り上げるから「孤独死」でもなんでもね、問題になるんですよ。

高橋:
うん、うん。

伊藤:
まぁそれは置いといて、ですよ(笑)。

礒野:
うふふふ(笑)。

伊藤:
どっちにしてもね、LINEやってて、私、すごい学生とやるでしょ。

高橋:
うん、うん。

伊藤:
で、そしてね、時々ね、「。」をね、つけない時があるんですよ。いつもはつけてるわけ!

高橋:
あ~。

伊藤:
それでつけないで、ファ~っていっちゃって、そしたらなんか「走ってるような感じ」で「息がそのまま漏れたような感じ」で、気持ちがいいの!

高橋:
あ~~。

伊藤:
これはこれで! 「あ~、なんか完結しないで送っちゃった~」なんて思って、でも、その感覚っていうのは新しいもので「あぁいいな~」なんて思ってたんだけど、「マルハラ」なんて言われると、「うるせ~っ!」って思っちゃうわ(笑)。ほっとけよ、みたいな(笑)。

礒野:
う~ん。

伊藤:
「つけたっていいじゃん!」とか。

高橋:
うん。

伊藤:
なんかこう、なんでも威圧感を感じて、それを訴えるっていうのは行き過ぎなような気がする。

高橋:
う~ん、だからさ、なぜ威圧感を感じるのかな? ちょっと教えて欲しいね、っていう…。

礒野:
「冷たい感じ」がする。「距離感を感じる」ということらしいですけどね~。

伊藤:
「蓮コラ(はすこら)」って、知ってる?

礒野:
えっ?

伊藤:
「蓮コラ」って言うの。「マルハラ」みたいな言葉で。

高橋:
ハスコラ?

伊藤:
それね、蓮(はす)の実みたいにいっぱい穴が開いてる図柄を、「蓮コラ」って言うの。

高橋:
うん。

伊藤:
で、それを1回授業で写したら、みんなからブーブー文句言われたの。

高橋:
え~、なんで?

伊藤:
怖がる人がいるんだって。

礒野:
えっ? コラージュですか?

伊藤:
わかんないんですよ。

高橋:
絵、だよね。そういう絵。

伊藤:
「ハスフォビア」みたいな…。
※参考:トライポフォビア(集合体恐怖症):小さな穴や斑点などの集合体に対する恐怖症のこと。

高橋:
そういう「点々」みたいな…?

伊藤:
「丸」が空いてるの。

高橋:
あっ、それが不気味だっていう!?

伊藤:
そう、そう、そう、そう! 「それが怖いからやめてください」みたいなことを言われて、何人もから…。

高橋:
あ~。

伊藤:
「あ~、ごめん」って言ったんだけど、でもなんかそれと同じような…、違う?

礒野:
「いいじゃん」っていう? うふふふっ(笑)。

高橋:
じゃあまぁ…、

伊藤:
そういうのがあってさ、それを、まぁね…。すみませんね、変なこと言って(笑)。

高橋:
いえ、いえ、いえ(笑)。

礒野:
ラジオネーム「こけしりとり」さん、ありがとうございます。

高橋:
ありがとうございました。

比呂美庵 2通目~30代後半の息子とどう接すれば~

礒野:
では続いて、2通目にまいりましょう。ラジオネーム「朝の空」さん。茨城県にお住まいの60代、女性。
30代後半の息子のことです。息子は大学生になった頃から、親とは必要なこと以外、話をしなくなりました。本人は性格が変わっただけと言います。ヘンに冷めたところがあります。そんな息子が2年前にリウマチを患い、治療のメドは立っていますが、再就職に向けて動き出す気配がありません。離職して通院をしているそうです。私たち親と同居し、金銭的な余裕はあるため、それに甘んじているかもしれません。
息子の思いを理解しようと思いますし、話をしたいのですが、多くを語ろうとしないのでうまくいきません。息子にどう接していくのがいいのか、悩んでいます。

高橋:
え~と、僕からいいですか?

伊藤:
はい、どうぞ。

高橋:
30代後半の息子さんですよね。

礒野:
ええ。

高橋:
「大学生になった頃から、親とは必要なこと以外は話をしなくなりました」って、僕は小学校の頃から話をしなかったけどね。あはははは(笑)。

礒野:
親と!

伊藤:
本当!?

礒野:
必要なこと以外は…?

高橋:
必要なこと以外は。

伊藤:
あら! 私はよくしゃべった。

高橋:
あ~、だから…。

伊藤:
割と普通ですか?

高橋:
親と話をする? ふっはははっ(笑)。

伊藤:
え~! するじゃん!!

高橋:
する人もいる…。いや別に、してはいけないとは言ってませんけど…!

礒野:
それぞれの家庭がね。

高橋:
でも、しないのは別に普通だと、僕は思います。僕の友人の何人かも「親とは、そういえば話したことないね」みたいな。

伊藤:
うん、うん。

高橋:
それは別に関係が悪いってことじゃないんだよ。

伊藤:
あっ、そうなの?

高橋:
うん。つまり、まぁ例えば、共通のテーマとかさ、話題がない…。っていうか「自分の世界がある」でしょ!? みんな。

伊藤:
うん、うん。

高橋:
そっちに向かうべきで、親のほうばっかり行ってたら、そっちのほうがおかしいと、僕なんかは思いますよね。まぁそれと、この問題はちょっと別だと思うんですけれども、どうなんだろうな~。あの~、30代後半でしょ。これ言っちゃうとさ、「ほっとけばいいんじゃないの?」。

伊藤:
う~ん。

礒野:
そうですか!?

伊藤:
それしかないような気もするんですけどね。でも親の心配も分かるわよね。なんで同居してるんだろうなって思いますけどね。

高橋:
そう! そうなんですよ。

伊藤:
う~ん。

高橋:
だから僕なんかはさ、よく言うんだけど、18歳で家を出たくてしょうがなかったから! で、出たら結構大変じゃない!?

伊藤:
うん。

高橋:
それはそれでしょうがないと思って…。

伊藤:
そう、そう。

高橋:
もう生きていくしかないな、と。だから、そういうふうに、するべきだったんだよね。

伊藤:
もっと早くね。

高橋:
もっと早くね。抱え込んだまま、ずっとしてて、それに慣れてしまったら、ちょっと大変なんだよね。

伊藤:
うん、そうね。

高橋:
だから今「じゃあ、もう出てって」というふうにはなかなかやりにくい…。

伊藤:
今、病気を持ってるから、やっぱり親はそれが言えないんだろうな~と思うんだけど…。

礒野:
心配ですよね。

高橋:
うん。

伊藤:
なんかどっかでね、母親が、そうね~、こうやって悩むことをやめてですね~。やっぱり悩むのよ。子どものことはすごく心配だから。

高橋:
うん。

伊藤:
だけど、ある程度離して、子離れをして、子どもも親離れをしてっていう方向に持っていかなくちゃ、しょうがないような問題のような…。

高橋:
これはさ~、親子関係で1番大事なのは「どうやって離れるか」だから…、

礒野:
う~ん!

伊藤:
もう体が離れるしかないような気がする。

高橋:
それの準備というか、怠ってきて…。後になればなるほど痛みが増すからね。

伊藤:
そう、そう。

礒野:
あ~、年月が経ってしまうと…。

伊藤:
でも私、ほら、相談者を否定したくないでしょう。

高橋:
じゃあ僕が否定してるような…(笑)。

伊藤:
いやいや、してないんだけどさ(笑)。
このまま居たらよ、自分たちが年をとって介護が必要になった時に、この子がやってくれる!

礒野:
あ~! 息子さんと同居を続けていれば!

伊藤:
いれば! やってくれる。でも親が死んじゃった時に困る。

高橋:
う~ん、そうね…。いや、財産があるかもしれないじゃん。

伊藤:
あぁ、そうね。

礒野:
ただ、たぶん「病気どうするの?」とか「再就職は考えてるの?」とか、本当は声をかけたいんでしょうね。どうなんでしょう、それは言ってもいいですか?

伊藤:
それは言わないほうがいいでしょ。

高橋:
言わないほうがいいよね~。

伊藤:
ほっといたほうがいいでしょう。

高橋:
とりあえず、金銭的な余裕があるんだったら、このままでもいいんじゃないの? ダメ?

伊藤:
えっ!? そうきますか!

高橋:
う~ん。

伊藤:
そうね。

高橋:
う~ん。これはね、正解がないからね。

伊藤:
難しいわね。

高橋:
さっきも言ったように、本当はものすごく早い段階でどんな親も…。

伊藤:
離しちゃったほうがいいの。

高橋:
離さなきゃいけないんだけど、「チャンスを失った後で、どうするか?」

伊藤:
でも、そんなこと言ったら、相談者は「じゃあ私はもうダメなのか?」って思うでしょ。そう思わせたくないの! 今からでも、やりようはあるの。

高橋:
そうね~。じゃあ、ゆっくりと話していこうか…。手放して。

伊藤:
そうね~。

礒野:
ゆっくりと。

高橋:
う~ん。

伊藤:
手放して。

高橋:
少しずつ。まぁ遅いけど、成長を促す、と。

伊藤:
難しいわね~、ホントにね。

礒野:
朝の空さん、いかがでしたでしょうか。

高橋:
いや~、うちだって大変なんだよ。あはははっ(笑)。

伊藤:
あははははっ(笑)。

高橋:
そんなことを言ってたら、どの家でもね。

伊藤:
ね! どの家でもね。

高橋:
そう、そう、そう。伊藤さんでもね、僕でもね、未だに悩みはありますよ。

伊藤:
ありますよ、ホントに。

番組へのメッセージはこちらから!

「高橋源一郎の飛ぶ教室」では、リスナーの皆さまからのメッセージを募集しています。番組のご感想、源一郎さんやゲストへのメッセージ、月イチ恒例の「比呂美庵」で相談したいことなど、ぜひお送りください。

高橋源一郎の飛ぶ教室

ラジオ第1
毎週金曜 午後9時05分

メッセージはこちら


【放送】
2024/02/16 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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