【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ ~雑誌編集長 堀由貴子さん~」

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2024/02/09

#文学#読書

きょうのセンセイは、雑誌編集長の堀由貴子さん。戦後まもなく創刊された歴史ある総合雑誌を、編集長としてリニューアルさせたことで、いま注目が集まっています。リニューアルへの思いについて伺っているうちに、テーマは、雑誌のあり方へと移っていきます。一時期、新聞で論壇時評を書いていた源一郎さんも、いろいろとお話ししたいことがあったようです。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
堀:堀由貴子さん(雑誌編集長)


礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、台本に書いてあるのを読むとね(笑)、「今、業界で大注目の雑誌編集長」の、この方です。

堀:
堀由貴子と申します。

高橋・礒野:
よろしくお願いしま~す(拍手)。

堀:
よろしくお願いしま~す。

高橋:
堀さんで~す! はい、もうね、今日はね、聞きたいというか、激しく追及したいことが…、あははははっ(笑)。

礒野:
追及~!?(笑)。

高橋:
ウソ、ウソ。ウソです(笑)。

礒野:
まずは堀さんのプロフィールから、簡単にご紹介させていただきます。
堀由貴子さん。1985年、大阪府生まれ。2009年に岩波書店に入社し、2017年末まで総合雑誌『世界』編集部に所属。その後、単行本編集部で、坂上香『プリズン・サークル』、伊藤詩織『裸で泳ぐ』、榎本空『それで君の声はどこにあるんだ?』などをご担当されます。
そして2022年10月から『世界』編集長に就任されました。

高橋:
はい。ということで、雑誌『世界』の…、僕ちょっと間違えてましてね、あの~、初の女性編集長だと思っていたら、違ったんですね。

堀:
あっ、そうなんです。

高橋:
女性編集長としては2代目…、

堀:
はい。そうです。

高橋:
ということだそうで、申し訳ございません。
で、え~っと、いろいろお聞きするんですけど、僕、堀さんが担当した本を5冊買ってる。『プリズン・サークル』でしょ、榎本空さんでしょ、伊藤詩織さんと、森本あんりさんと、周防正行さん!
(堀さんがご担当とは)知らなかった(笑)。

堀:
ありがとうございます!

高橋:
お買い上げしましたよ。あははっ(笑)。

礒野:
いかがですか? 堀さんはそれを聞いて!

堀:
いや~、うれしいですね。

高橋:
全然知らなかった! だって、そこまで読まないもんね。本の後ろのほう…、あの~、担当者が誰かって、気が付かなかったんで。岩波書店の本はあまり買わないんですけど(笑)、けっこう堀さんの本を買ってたんだ~と思って、ちょっとびっくりしました。

堀:
ありがとうございます。榎本さんの本も読んでくださっていたとは、びっくりしました。

高橋:
そう!
これね~、面白かったです。黒人神学の話で、僕ちょっと、いろいろあって、これも含めて何冊か…。ね! これはなかなか取り上げられない人の話が出てくるんで…。

礒野:
単行本編集部にいたときの思い出というか、なにかありますか?

高橋:
っていうか、そもそも最初が『世界』だったんですね。

堀:
あっ、そうです! 入社してすぐ『世界』編集部に配属になって、

高橋:
で、一旦出て、単行本に行って、また『世界』に戻ったっていう感じなんですね。

堀:
はい。

単行本と雑誌

高橋:
雑誌と単行本って、だいぶ違うと思いますけども、どうなんですか? 岩波の単行本は?
っていうか、単行本っていうのは?

堀:
単行本はとっても楽しいですね。雑誌も楽しいんですけど(笑)。

高橋:
いや、いいんですよ(笑)。

堀:
単行本っていうのは、やっぱりすごく自由度が高くて、新書とかあるいは雑誌っていうのは、まぁ、お弁当箱が、「箱」が決まっているんですけど、単行本はカバーとか、判型(はんけい)とか、色をどうするかとか、すごく自由度があって面白いですし。自分にとっては、単行本の編集作業をすることで、自分が本当に面白いもの、自分が読んで面白いって思うものを素直に企画化していくっていうことの大事さを…、
まさに榎本空さんの本で、『それで君の声はどこにあるんだ?-黒人神学から学んだこと』っていうタイトルなんですけど…、

高橋:
ホントだよ! 『君たちはどう生きるか』だね~、これ~! タイトルは!
(※1コマ目の「ヒミツの本棚」でご紹介した吉野源三郎さんの著書)

堀:
自分と編集活動をつなぐような時間だったのかなっていうふうに思います。

高橋:
けっこう単行本を見ると、攻めてますよね。

堀:
あ、そうですか?

高橋:
なかなか、お~、ちょっと、「え、これ、岩波?」みたいな…。
こういうのってもちろん…、やっぱり、すんなり決まるんですか? それとも「いや、それは…」って感じになるの?

堀:
そうですね。1回では通らなくって、何回も説得したりプレゼンしたりっていうことを…、

高橋:
いちばん大変だったのはどれ?

堀:
いや~…、

高橋:
そうでもなかった?

堀:
中にはやっぱりこう、いろんな反響が予想されるものもあったので…、

高橋:
あ~、そうね。想像できるもんね。それはやっぱりちょっと、もう少し、っていう…。

堀:
慎重に、その本を出すことの意味と、反響に対してどれだけ誠実に答えられるかということを、事前になるべく詰めておくっていうような…、

高橋:
で、がっちりプレゼンするわけですね。

礒野:
へぇ~!
坂上香さんの『プリズン・サークル』はこの番組でも、ご紹介させていただきましたよね~。

高橋:
そう、そう、そう、そう。

堀:
そのときは、こちらの控室で番組を聞いていたので、まさか、自分がこんなスタジオの中に入るということは想像できなかったんですけど。

雑誌『世界』の編集長として

高橋:
ということで、結局、元いた『世界』編集部に戻ったということなんですけど、これは、編集長として戻ったんですか? っていうことですね?

堀:
そうですね。最初は、少し、半年ぐらい編集部員として、前の編集長のもとで一緒に仕事して、いろいろ引き継ぎしていく期間があったんですけれども、(2022年の)10月から編集長になりました。

高橋:
なんで?(笑)。
いや、『世界』っていうのはね、まさに初代編集長が吉野源三郎さんで、ちょっと後でもう少し『世界』の話はしたいんですけども、歴史があって、イメージもあって、ある程度決まっているような感じもあって。
僕なんかは昔から読んでたから、「変えたほうがいいんじゃないの?」っていうふうには、ずっと思ってたんですが、堀さんが編集長になったっていうころって、「変えよう」っていう話でなったんですか? どうなんでしょう!?

堀:
そういうふうにも言えると思いますね。自分自身も、自分に編集長が本当にできるんだろうかって、自分もとても悩みましたし、自分にとっても驚きでしたね。

高橋:
え~と、なんで堀さんになったのかしらね? それは分かんないか(笑)。
上から「お前やれ」って感じだったの?

堀:
あっ、いえ、いえ。人事というのは確かに会社が決めることなんですけれども、う~ん、やっぱり、変化を、託された、ということなのかもしれないですね。

1コマ目の続き ~吉野源三郎 著『君たちはどう生きるか』~

高橋:
えっと、せっかくですので、さっき『君たちはどう生きるか』を、ちょっと話しました。堀さんもやっぱり、入社する前に読んでなかったというふうにおっしゃいまして…、

堀:
はい。

高橋:
僕も本を読むのは好きなんですけど、なんとなく有名じゃない?
なんかさ、「君たちはどう生きるか」…、「はい!」っていう。

礒野:
う~ん?。

高橋:
タイトルだけだと、あまり読みたくならないじゃん? 普通。
いやいや、ちょっとさ、もう…、

礒野:
問いかけられてますもんね。

高橋:
そう、そう。あんまり問わないで、って感じ。だって「あまのじゃく」だから、本を読む人は…。
で、意外と、名作って読まなかったりしますよね?

堀:
あぁ、そうですね~。

高橋:
それで宮崎駿さんが(このタイトルを借りた作品を)監督するぐらいだから、面白いのかなと思ったら、これは面白いんだよね!
堀さんはどういうふうに…、僕はちょっと、あぁいうふうな紹介の仕方をしたんですけど、どう思われます?

堀:
私も本当に、タイトルっていうのは、倫理を問う、とても鋭いタイトルなんですけども、読んでみると、すごく「小さな物語」で。“雪の日の事件”であるとか、浦川君が油揚げをお豆腐屋さんで揚げている場面だとか…、

高橋:
お母さんがいい人だったりね(笑)。

堀:
そう! お母さんの荷物をね、運んであげられなかったっていうエピソードが、とっても私も…。
ある意味、とりとめのない日常的なことを、そのディテールの豊かさが楽しいんですけど、でも実はその「日常の中の観察」っていうことこそ、特別な…、驚天動地の驚く出来事があるわけではないんだけど、その「“普通の日常を、丁寧に観察していくこと”、ということこそ“特別”」で、「どう生きるか」ということとつながっていくんだっていう、なんか、その小ささが、とっても心に残りました。

高橋:
そうですね。本の中でマルクスの話が出てきたり、凄惨な話が出てきて、「お? ちょっと社会主義っぽくなるのかな?」と思うと、やっぱりここはなんか、吉野さんが本能的に「いかん、いかん。そういうふうにしちゃ」って。やっぱりちゃんと「話」だよって。もともと物語作家でもないのに…。
だからあえて、ね、そういう物語を作るんじゃなくて、「日常の風景」しかないんですよね。誰でもあるような…。だから、今、堀さんがおっしゃったように「小さい物語」。
あの、僕よく、この番組でも「戦争モノ」を取り上げるときに、本当にきちんと戦争に抵抗できるのは「小さい物語」と「日常」がある人が抵抗できるんで、大きいことを言っている人は、だいたい抵抗出来ないんだよね。

堀:
う~ん。

高橋:
っていうふうに思うと、「やっぱりそうか! 吉野源三郎さんって、こんないいこと言ってたんだ!」っていうふうに、ちょっと驚いたってのは正直なところ。

雑誌『世界』のリニューアルについて

高橋:
で、その初代編集長が吉野源三郎さんということで…、

礒野:
雑誌『世界』の!

高橋:
はい。で、え~っと、リニューアル…。ということは、その前にすでに編集長だったんですよね?

堀:
そうですね。

高橋:
要するに、形、装丁などが変わったのは、2024年の1月号。

礒野:
今年の1月号からですね~。ガラリと変わりましたよね。これまでの、お写真のある感じから、イラストというか…。

高橋:
はい、まず、逆に言うと1年間準備して、

堀:
そうですね。

高橋:
虎視眈々(こしたんたん)と、と言うか。狙いは、どうなんでしょうか?

堀:
虎視眈々と、というよりは、本当に必死に自転車をこぎながら回していたって感じなんです。
ただ、編集長を引き受けるっていうときに、自分の中で自然とリニューアルするということは、そういうふうにしたいというふうに決めていたんですね。それで、いくつか方針を編集部の中で共有して、1年かけてずっと、骨を、幹を太くしていったという感じです。

礒野:
へぇ~。

高橋:
あの~、なかなか言いにくいことも多いと思いますが(笑)、言いたくなかったら言わなくてもいいんですけど。
僕たちは外にいるから、逆に無責任に「あ~だこ~だ」言うじゃないですか。もうね、「『世界』おもしろくないよ」とかさ。「あれでいいの?」とかっていう、そういう声は聞こえてました?

堀:
そうですね。厳しい声も聞こえて。編集部に最初に入ってたときから、やっぱり聞こえていましたし。
自分自身もすごく、編集部で、とっても楽しかったし、好きな環境ではあったんですけど、自分の中にも、距離感というか…、も、あったのかなというふうに…。
それを編集部の中にいるときは必死で学びとっていくっていう感じだったんですけど、

高橋:
だって、それ、『世界』を出しながらだもんね。

堀:
そうですね。

礒野:
お忙しいですね。「月刊」でね~。

高橋:
月刊で雑誌を作るって、要はもう、終わったら次の号、その次の号をやりながら、でも、全部を変えなきゃいけないっていうのと同時進行ですよね。

堀:
あぁそうですね。

高橋:
大丈夫? あはははっ(笑)。

礒野:
さっき「方針」っておっしゃってましたけど、どんな方針が頭の中におありでしたか?

堀:
いくつかあったんですけど、「新しい書き手の方に登場していただきたい」ということですね。

高橋:
新しい書き手ね。う~ん。

堀:
特に女性の書き手が半分になるように、編集として常に心がけていこうっていうことも、その中の1つでしたね。

高橋:
なるほどね。
あの~、えっとね、これは雑誌『世界』だけの問題ではなくて、岩波書店の…、
で、もっと大きく言うと、日本の本とか出版全体の…、たぶんそれをちょっと『世界』という雑誌は象徴してると思うんですよね。
それで、ちょっと面白い本があってね、読んだことあります? 『岩波書店と文藝春秋』って。

堀:
あっ、いや、すみません。

高橋:
これ面白いんですよ。毎日新聞社で出てる、岩波書店と文藝春秋の比較を、両方の会社が出来て以来を、ず~っと比較しているっていう!

礒野:
え~! それが毎日新聞社から出てるんですか?

高橋:
これがなかなかね。取材班を作って、ず~っと取材をしてたっていう。これもけっこう前の本なんですけども…。
で、岩波と文藝春秋って似てるんですよね。もともと出来たのは、え~と、岩波がね、大正2年で、文藝春秋が大正12年。岩波茂雄と菊池寛ね! それぞれ東大と京大を出て、それぞれ、本屋というか、雑誌を立ち上げて。ただ、方向が全然違ってた。

礒野:
ふ~ん。

高橋:
これね、いろんな人が座談会をやってて、誰かが言ってたんですけどね、「岩波は空を見て、絶対の真理を見つめる」と。「文藝春秋は地面を見る」と。地べたをはい回る、と。

礒野:
へぇ~!

高橋:
「これが、岩波茂雄と菊池寛の違いだ!」っていうふうに。で、今を見ると、やっぱりそうかもね、と。

礒野:
今のはうかがっていかがですか?

堀:
確かに「低く暮らし、高く思う」っていう…、

高橋:
そう、そう。

堀:
っていうのが岩波茂雄のモットーで…。

高橋:
理想を追いかける。
だからそれはずっと、岩波書店ができて以来。その1つの象徴が、まぁ『世界』っていう雑誌なんですよね。で、僕もいろいろ面白いエピソードがあってですね、あの~、昭和22年に、戦後すぐ、哲学者の西田幾多郎さんていう…、難解で知られている…、その全集が売られることになって、第1回の配本のとき、岩波書店の周りを3日前から若者が、買うために並んだっていう!

礒野:
へぇ~!

高橋:
で、それで面白いのが、それを文芸春秋の人が、ホントにうらやましかった、っていう。あははっ(笑)。
それは戦後すぐで、要するに「哲学」とか、そういう言葉を求めた人たちがたくさんいた。時代もね。
で、岩波はそういう人たちが、中心だったんですけど…。
それから戦後70年以上が過ぎて、時代も、人々の好みも変わっていって、それをこう、岩波書店というか、雑誌『世界』としては、どういうふうに追いかけていこうっていうふうに今思ってるのかなと、思うんですけど、編集長としては?

堀:
やっぱり今、世界の動きって本当に目まぐるしいし、まさに、ずっと、去年の10月にガザの人道危機っていうのがとっても深刻になって、やっぱり今、世界で起きてることっていうのは、すごく、自分の足元からかけ離れたというか、手が届かない所でどんどん展開してしまっている。で、自分はやっぱり無力なのかなっていう、世界の動きがあまりに激しくて、どんどん離れていって手が届かなくなっていく。
そこが足元…、それぞれの人が生きてる現場とか足元とつながってるってことを示す、雑誌を使って示すっていうふうなことを考えています。

論壇誌と総合雑誌

高橋:
これね、批判も褒める言葉も両方あって、僕は非常に面白かったんですけど。その中でやっぱりいちばん多かったのは『世界』は「論壇誌」ということになってますね。で、岩波って、ほかにいわゆる雑誌って無いじゃないですか。こういう総合誌。
で「論壇誌」ってことになってくると、「総合雑誌」でもあるよね?

堀:
はい。

高橋:
で、「総合」っていうことだったら、もっといろいろ取り上げてはどうでしょう、という気がして…。例えば、実は、安部公房っていう作家の傑作の『第四間氷期』って『世界』に連載してたんですよ。

堀:
はい。

礒野:
ふ~ん!

高橋:
そう! ちょうどその、大江健三郎とかね、えっと、開高健とかが芥川賞を取ったころに、『世界』では、安部公房。だから、小説を載せるとか…、僕が書くって言ってるんじゃないですよ(笑)。
なんか、もうちょっと、「雑」もやったらどうかね~、っていうふうに。もちろん見ると、だいぶ「雑」っぽくはなってるんですけど、その辺は編集長、いかがでしょうか。

堀:
あっ、本当にそうですね。高橋さんが論壇時評を書かれていたときに、「誰も、政治や社会を書く言葉を、実は持ってないんじゃないか」っていうふうに書かれてて。私は『世界』っていうのは、最初はドキュメンタリー写真を取り上げる扉から始めてるんですけど…、

高橋:
そうですね。

堀:
でも、雑誌って本当にいろんな言葉が集まってるもので、『世界』の中には政治学者の方、あるいは研究者の方が書かれた「学問の言葉」もあれば、本当に、「運動の言葉」もあれば、「作家の言葉」もあれば、でも、それぞれが世界をどう切り取るかっていう、すごく真摯に対峙(たいじ)して、それぞれの人が見ている世界を、それぞれの言葉で書いていただいてると思っていて…、その言葉がもっと豊かになっていけばいいと思うし…、思っています。

高橋:
いや~、でもだいぶ変わりましたよね。これ~、まず1つ。そもそもさ、タイトルが『世界』じゃない?

堀:
はい。

高橋:
だから、なんでもありだよね! あはっ(笑)。
「ワールド」ですからね。うん。
で、リニューアル第1回に出ている人の名前が、(リニューアルした号の表紙を指しながら)この中に乗っかってるんですが、桐野夏生、松村圭一郎、林香里、武田砂鉄、小川公代、多和田葉子…。
文芸誌だね(笑)。

堀:
でも、上のほうには中満泉さん、国谷裕子さん、若手の根岸陽太さんも…、

高橋:
そう、そう、そう、そう。
だから、そういう意味では、ここまで、いわゆる非論壇的な人が、場所を借りてるっていうのは、なかったんじゃないですか?

堀:
特別に何か意識したということではないんですけど、でもやっぱり自分が編集長になるってときに、読みやすいもの、自分でも読めるもの、入りやすいもの読みやすいもの…、そういうこう、日常とつながってる言葉で世界を語っていただくということは重視していたので、それが結果として表れているのかな、と。

高橋:
もっともっと、そういうのをやってもらえると、ね!

礒野:
最新号には上野千鶴子さんや、奈倉有里さんのお名前がありますね。

高橋:
あっ! そうですね。ちゃんと編集長の意図は伝わっている、ということだと思います。
それで、もう1つ。今日いちばん最初に、紙の本の話をしまして…、

堀:
はい。

高橋:
え~っと、ねぇ、あの、紙の本は駄目になると言いつつ、やっぱり僕は残るんじゃないかと思ってるんですよ。便利に…。だから雑誌も、もっぱらウェブ媒体っていうふうに思う人も多いと思いますけど、まだまだ紙でやれることはあるんじゃないかっていうふうに、僕なんかは思うんですけど、編集長いかがでしょうか?

堀:
そうですね。そう思います。
やっぱり「世界の、物事の奥行きを知りたい」とか「世界を立体的に知りたい」と思ったときに、4,000字とか6,000字とか1万字の原稿が載ってるんですけど、紙の雑誌っていうのは、レイアウトとか形で、それがいちばんわかりやすい形になるように工夫して作ってるので…、

高橋:
うん。

堀:
きっと、雑誌だからできることが、まだあると思ってます。

高橋:
あの、僕、新聞で論壇時評をやっているときに、あまり『世界』のものを取り上げなかったんですよ。

礒野:
ええ、ええ。

高橋:
もっと、本当の世界、「リアル世界」のほうに、いろんなものがいっぱいあるので、ぜひ雑誌『世界』も、「リアル世界」と同じ幅の広さに向かって行っていただけるとうれしいな、と。応援いたしますから!
是非とも頑張ってください。

堀:
はい。

高橋:
何かあったら僕にも書かせてください(笑)。

礒野:
あははははっ(笑)。最後に!

堀:
よかった。あはははは(笑)。

高橋:
ホントですか(笑)。

礒野:
2コマ目のセンセイは、雑誌編集長の堀由貴子さんでした。ありがとうございました。

高橋:
ありがとうございました~。

堀:
ありがとうございました!

高橋源一郎の飛ぶ教室

ラジオ第1
毎週金曜 午後9時05分

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【放送】
2024/02/09 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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