【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ ~日本犬専門誌 元編集長 井上祐彦さん~」

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2024/01/19

#文学#読書#どうぶつ

この回の冒頭、なんと犬を飼い始めたことを告白した源一郎さん。2023年に「ヒミツの本棚」で取り上げた片野ゆか著『平成犬バカ編集部』で紹介されていた日本犬専門誌を作り上げたのが、元編集長の井上祐彦さん。いまは、雑誌の制作とはまるっきり違う仕事についているんです。その仕事とは、植木職人!それまでとは全く違う仕事を始めて、今感じているのは、新しいことを知るのは楽しい、ということ。当時どんな思いで雑誌を作っていたのか、そして、なぜ植木職人になったのか。番組の内容をあらためてご紹介します。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
井上:井上祐彦さん(日本犬専門誌元編集長・植木職人)


礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、日本犬専門誌の元編集長で、植木職人…、変な言い方だね(笑)…の、この方です。

井上:
初めまして、井上祐彦(まさひこ)と申します。今は東京都内の造園会社で働いている、ただのおじさんなんです(笑)。

高橋・礒野:
あっははは(笑)。

礒野:
ようこそ、おいで下さいました~!

井上:
こちらこそ、ありがとうございます。

高橋:
いや~、まぁ確かにね、「ただのおじさんです」っていうゲストは、たぶん初めてかもしれないですね(笑)。

井上:
あははははっ(笑)。

礒野:
さぁ簡単に、井上さんのプロフィールをご紹介します。
1964年(昭和39年)、東京都のお生まれです。1991年に出版社に入社。パチンコ雑誌の編集長を経て、2001年に日本初の日本犬専門雑誌『Shi-Ba』を創刊されました。2019年1月付で出版社を退職。現在は、植木職人をされていらっしゃいます。

高橋:
なんか、編集長から植木職人って、かっこよくない?

礒野:
かっこいいですよね!

高橋:
その話を聞いたときに「ぜひ来てもらおう!」と、その瞬間に!

井上:
あぁ、そうですか!

高橋:
そうなんです。その話は追々していきますが、えっと、そもそもですね、さっきの1コマ目で、なんで『イラク水滸伝』を紹介したかというと、『平成犬バカ編集部』を書かれた片野ゆかさんのパートナーなんですね、著者の高野秀行さんが…。

井上:
そうですね。うん、うん。

高橋:
ということで、まぁ、井上さんをお迎えするのに…、ちょうど “変わった人”を続けて、という感じでやろうと思っておりますので、今日はよろしくお願いします。

井上:
よろしくお願いします~。

「犬バカ」編集長時代の井上さん

高橋:
あの~、もちろん僕が井上さんのことを知ったのは、片野さんの本『平成犬バカ編集部』からなんですけども、自分が書かれている、この本…、どういう感想でした?

井上:
そうですね、はじめは僕っていうか編集部自体の、その歴史というか、本の作り方とか、そういう話なのかな~と思ってて、で~、実際できてみたら、自分の個人の話とかも書いてあったりとか…。

高橋:
結構ありましたよね。

井上:
ちょっとそれは驚いたのと、あとは、その本ができるまで何回かインタビューみたいなものも受けてたんですけど、「こんな話したかな?」ってことまで書かれてて、ということはかなり『Shi-Ba』を、かなりの冊数を持って帰られてたんで、「本当に全部読んできたんだな」と思って、ちょっとそれは驚きましたね。

高橋:
あ~でもね、インタビュアーはね、それ、するんですよ。

礒野:
きちんと読んで、全て。

高橋:
そう、そう、そう、そう。よく分かります。それで、実はですね、今日は井上さんに『Shi-Ba』のバックナンバーを…、

礒野:
ねぇ! お持ちいただきました。

高橋:
しかも、頼んでないんですよ(笑)。

礒野:
うふふっ(笑)。

高橋:
勝手に持ってきてくれた。あははっ(笑)。

礒野:
ありがとうございます~!

井上:
いえ、いえ。

礒野:
ご自身が編集長時代の、ですね~!

高橋:
編集長時代の!

井上:
はい。

高橋:
僕もね、何冊か読んだことあるんですけど、いや~、ひどい…、じゃない、すごいですね(笑)。

礒野:
あははは(笑)。面白いですよね~。

高橋:
面白いですね~! あの~、今の『Shi-Ba』はちょうど、手元にあるんですけど…、

礒野:
もう編集長が変わられた『Shi-Ba』のほうですね。

高橋:
あの~、なんていうか、真面目な感じの雑誌になってますが、え~、井上編集長のときには、かなりふざけているというか。まずね、この雰囲気を味わっていただくためにですね、雑誌の、えっと、メイン・コピーですね。
例えば2003年の4月号は、「チャラチャラしてんじゃねーよ!」と(笑)。

礒野:
うふふふ…(笑)。

高橋:
どういう…(笑)。で、え~っと、これは2012年の5月号。「メシ&サンポ、近頃、手抜きが目立ちません?」

礒野:
うふふふふ(笑)。

高橋:
それから、2002年のウィンター号ですね。「軟派なシバはお嫌いですか?」。それで、あぁ、これすごいですね! 2005年9月号。「飼い主を散歩させるのは犬の義務」。

礒野:
うふふふふ(笑)。

高橋:
よく考えますね。

高橋:
で、2018年の9月号。「一度ぐらい猛犬注意と言われたい」って(笑)。

礒野:
あっははは(笑)。

高橋:
そして、『平成犬バカ編集部』でも話題になりました! この「袋とじ」が付いている2011年9月号。

礒野:
これは10周年記念号ですね~。

高橋:
表紙の細かいとこころを見るとね、「ぶっちゃけ うちのコ ゆとり世代」とかね。犬にも「ゆとり世代」があるんだとかさ…。「冷やし柴、はじめました。」とか、よく分かんないコピーを書いてて…(笑)。

礒野:
コピーがホントに面白いですね~!

高橋:
それで「袋とじ」があってですね~。炎上しましたけど、犬の胸のところに貝殻があったりですね、「あ~、クレーム来そうだな~」というような…、

礒野:
少しセクシーな…、犬の…、

高橋:
けっこうセクシー。

礒野:
グラビアを、ね…、撮っている…。どういう意図だったんですかね?

高橋:
あっはっ(笑)。

井上:
意図っていうか、まぁ当時、週刊誌みたいなのは、たいがい「袋とじ」みたいなのが、あったじゃないですか。

高橋:
あった、あった。

井上:
で、やっぱりなんか10周年なんで、ちょっと変わったことしたいな!、というんで、かといって、特別付録をつけるような予算も無いし…、

高橋:
うっふふ(笑)。

井上:
なのでまぁ、紙しかないですよね、やれることって言ったら。「紙で何ができるんだろう?」と思ったら、「袋とじだな!」っていうので…。ただ犬ってもともと裸なんで、「さて、どうする?」っていう…、あはははっ(笑)。

高橋:
そうだよね。犬って、もともと裸ですよね(笑)。

井上:
そうですね(笑)。なので、まぁそういう形で、とにかく「くだらなければ、なんでもいい!」みたいな感じで、当時の部下に、みんな好きに自由にやらせてるんですけど、そしたら出てきたものが、けっこう僕もびっくりするような…(笑)。

高橋:
あはははは(笑)。

礒野:
そうなんですね!

高橋:
とんでもないものが…(笑)。

礒野:
例えば、犬が下着をつけていたりとか、そういったお写真が載っているんですけど…。

井上:
そうですね。

礒野:
「くだらなければ、なんでもいい!」っていうのがコンセプトだったんですか? 編集長として…。

井上:
やっぱり、そうですね、はじめは自分で面白がって作ってたんですけど、まぁ自分さえ面白ければいいなと思ってたんで、当時。でもやっぱり、やってるうちに、周りの部下なんかも、どんどん自分たちが面白くなってきて、“自分たちならでは”の、いろんな独自性のある企画なんかを出してくるようになってきて、それの集大成みたいな感じですよね。

高橋:
こういうアイディアとかは、いつ出るんですか?

井上:
会社員だったんですけど、だいたい午前10時から午後6時の会社なんですけど、6時を過ぎたら、僕なんか正直言って、ビールとか…、

高橋:
あっはっ(笑)。

井上:
買ってきちゃうんですよね。あの~、一応6時までが会社なので、ということは、そっから先は僕の時間なんで、何しようが、僕の勝手なんで(笑)。まぁ、酔っ払うじゃないですか…。

高橋:
うん(笑)。

井上:
今は酔っ払うと、すぐ寝ちゃいますけど、当時はなんか酔っ払うと、頭がぐるぐる回ってくるんですよね。

高橋:
よかったですね(笑)。

井上:
ようやく回転し始めるっていうか。で、そこでいろいろお酒飲みながら、パソコンをカチャカチャ、ネットを見ながらですけど、大概ずっ~と11時ぐらいまで、妄想してますよね。

高橋:
ずいぶん長いですね。6時から11時まで!?

井上:
なんとなく、くだらないことを考えてるんです。で、なんか思いついたら、当時、SNSの掲示板みたいなのが出始めてたんで、それになんとなく、ネタっぽいやつを書いてみて反応とかを見たりして、「あっ、これ、いけるな~!」とか「あれ? 面白いと思ったんだけどな~」とか反応を見つつ…。

礒野:
あ~~~!

井上:
そういうのでやってましたね。やっぱり、そのときの時間は僕にとって貴重な時間なので、だいたいそこで思いついたキーワードだけパソコンに打ち込むんですよ、ダダダっと。それはもう何十枚にもなってるんですけど~。

高橋:
うん。

井上:
だいたい、そこから始めて…、

高橋:
こういうのってそうですか? 「メシ&サンポ、近頃、手抜きが目立ちません?」とか「チャラチャラしてんじゃねーよ!」とか(笑)。

井上:
そういうの、そうですね。なんとなく「犬が言いそうな言葉」。

礒野:
犬が言いそうな言葉なんですか、それ!
うふふふっ(笑)。 犬目線!

高橋:
僕、思ったんですよ。今のを、別に批判するわけじゃないんですけど、今の『Shi-Ba』って、例えばタイトルが「犬と防災」「愛犬を守れるのはあなただけ」って、これ人間目線ですね。

礒野:
去年の夏ごろに出たものなんですけどね~。

高橋:
これさ、「一度ぐらい猛犬注意と言われたい」って、全部、犬ですね、主語が…。

井上:
そうですね。たいがい全部、犬の写真もアップで、視線はこっち見てるんで…、

高橋:
あぁ、確かに!

井上:
で、本屋さんで、それが並ぶじゃないですか。

高橋:
うん。

井上:
そこを通り過ぎた人が、なんとなく気になって見て…

高橋:
見られてると(笑)。

井上:
となると、「おぉ、なんか言ってるぞ、こいつ!」っていうので、ちょっと見てみようかな、みたいな感じで、となると犬に興味ない人も手に取るじゃないですか。

高橋:
うん、うん。

井上:
で、取ってみると、「くだらないこと」が書いてあって、「おぉ、面白い。なんだこれ?」っていうので、まず買ってもらう。

礒野:
へぇ~!

井上:
そこで、読んでもらう、みたいな感じすね~。

礒野:
すごく、キャッチーですね~。

高橋:
あの~、さっき話題になった「袋とじ」の、これは100号? あっ、10周年だ、10周年ですね!
これ明らかに、当時のギャル雑誌ですよね。

井上:
そうですね。思いっきりパクってますよね。

高橋:
ねぇ!

礒野:
あはははっ(笑)。
ちょっと可愛らしい、デコった…、

高橋:
デコった…、

礒野:
文字で…。

高橋:
完全に(笑)。

井上:
このへんは、僕がこうしろって言ったのではなくて、デザイナーの後藤さんという方だったんですけど、後藤さんが乗りに乗って、「思い切ってこういうの、10周年だから、どうですか?」ってみたいな感じで提案してきて、「あぁ、いいんじゃないですか! 面白いですね~」って、採用!

高橋:
しかも、表紙の柴犬が、歯をむき出してる(笑)。

井上:
あはははっ(笑)。

高橋:
それで思ったんですけどね、本当に…、
楽しんで作ってますよね? 編集長が!

井上:
そうですね。やっぱり、あんまり犬愛にあふれて創刊したわけでもなんでもないんで。あくまでも自分の犬がかわいかったんで。企画なんかでも自分の犬で知りたいことなんかを中心に企画を出しますよ。当時は出してましたよね。
どっかちょっと調子悪いんであれば、実際にじゃあ「その病気の兆候はどんなもんだろう?」って、実際にそれで取材してみたりとか…。

高橋:
だから「犬が好きな人の犬雑誌」というよりも「福太郎ちゃん」ていう井上さんの愛犬が、

礒野:
当時の…、

高橋:
好きな、当時の愛犬が…、

井上:
そうですね。

高橋:
ある意味、超個人的な雑誌ですよね!

井上:
そうですね。だから旅行のコーナーなんかも、当時は車がなかったんですよ。
旅行するって、キャリーケースに入れてバスや電車で運ぶ旅行だったんですよ。だから旅行コーナーも、そういう車とかは使わない、電車だけの旅とか、そういうふうにやってみたりとか。
とにかく自分が分からない部分じゃなくて、自分が感じたことをとにかく出すってことですよね。

高橋:
そういう雑誌が、僕はいちばん面白いと思うんですよね。
作ってる人が面白いと思わないと、読む方も面白くないですよね。

井上:
ただ、その反面、デメリットもあって、いわゆる広告みたいなのは厳しいじゃないですか。

高橋:
あっはっはっはっ(笑)。

井上:
あはははっ(笑)。

高橋:
あんまり勝手にやれないんだ(笑)。

井上:
でもやっぱり、誰が買うかっていうと読者なんで。やっぱり読者がいちばん喜んでもらわないとダメなんで…。広告が入るからといって、ちょっとこの記事、もうちょいオブラートに…、なんて言われた日には「冗談じゃねぇよ~!」ってなっちゃうだけなんで(笑)。

礒野:
戦う編集長ですよね~!

高橋:
それでまぁ結局、辞められちゃったんですが、その後もですね、僕ちょうど、お聞きしたいと思ったんですけど、僕、ちょっと個人的な話をしますと、犬を飼うようになりましたとカミングアウトしたんですけど…、

礒野:
番組の冒頭で、今日初めて!

高橋:
実はね、番組が始まって以来、今日、初めて欠席しそうになったんですよ。

井上:
はぁ…。

高橋:
どうしてかって言うと、ちょっと体調を壊して、僕、もうめったに具合悪くならない。で、ちょっと医者に聞いたら、オーバーワーク!

井上:
ほぉ~。

高橋:
「なんでですか?」って聞いたら、僕、犬の散歩を、今ね、朝晩やってて、昼は仕事場から家まで通ってるんで、1週間、1日に1万8000歩、歩いたんですよ。

井上:
はぁ~、すごいですね!

礒野:
1日で!

高橋:
1日に! 1万8000歩×7日。そしたら膝が痛くなるし、腰も痛くなるし、ついに発熱しちゃって。

礒野:
う~ん!

高橋:
それがね「オーバーワーク症候群」て言われたんですけど。
大変ですよね(苦笑)。

井上:
ふぅ~ん。

礒野:
今日、大丈夫ですか?

高橋:
だから昨日は1日寝てましたよ、僕。

礒野:
あぁ、そうだったんですか。

高橋:
あの~、その後、福太郎ちゃんという犬が亡くなって…、というところまで書かれています。

井上:
そうですね。

高橋:
で、その後、福三郎さんとか来て…、今、井上さんのところで飼ってるのは?

井上:
その福三郎という柴犬が、今6歳かな。で、あとは猫の福次郎と幸子っていうのがいて…。

高橋:
全部「福」ですね。

一同:
あははははは(笑)。

井上:
それが今、13歳くらいかな。飼ってますね。

礒野:
犬1匹、猫2匹。

井上:
そうですね。

高橋:
どうですか? 生活形態としては? 僕は、妻も子どももいるんで、いろいろさせますけども、例えば、「誰が世話をする」とかね。それから、それまで散歩させたことがなかったんで、この時間帯にこういう人がいるって、外の世界を知らなかったの。

井上:
あ~、はい。

高橋:
犬は外に出るじゃないですか。猫を飼ってたから、猫って家で飼うだけだから、全然つきあいがないんですよ。

井上:
はい、はい。

高橋:
井上さんは逆に、猫が最近なんですよね?

井上:
13年経ちますけどね、完全に家の中なんで、そうですね…。犬は先ほど、番組の冒頭で高橋さんがおっしゃる通り、表に出ていろんな発見があったり、その通りで…。
僕なんかは、平日は会社なんで、土日の休みなんかは、僕が朝、近くの公園まで車で連れてって遊ばせてますね。そこにはもう、犬を介しての友達というか、そういう方々もいっぱいできて、行けばみんな可愛がってくれるし、おやつくれるし…、

高橋:
面白いですよね~。

井上:
そうです。面白いですよね(笑)。

礒野:
コミュニティがね、ありますよね~!

高橋:
いつも同じ人がいてね、優しくしてくれたり…。

井上:
そうですね~。

高橋:
井上さんの場合どうなんでしょう?僕なんかはね~、完全に「僕の犬」じゃなくて、「犬の僕」ですからね。

井上:
あ~、はい、はい、はい。

高橋:
「ナントカちゃんのパパ」とかね。「ナントカちゃんのおじいちゃん」とか。

井上:
あぁ、そうですね。でも大概そうですよね。

高橋:
ね~。

井上:
僕なんかもそうですもんね。

高橋:
「この前は奥さんが連れてましたよね?」って言われて、「はい!」って。

礒野:
うふふふ(笑)。

高橋:
だから犬は知ってるけど、僕は知らないんですよね。

井上:
はい(笑)。

礒野:
「福三郎くんを連れている方」って思われてるわけですね。

井上:
はい。

礒野:
犬のコミュニティーでは!

井上:
自分の名前は知らなくても、あぁ…!

高橋:
あの犬の…(笑)。

礒野:
これだけ編集長をされていたら、すごく犬についての、日本犬について知識とか、つながりとかって…。

井上:
知識はぁ~、知識あるんですかね(笑)。なんだかあんまり…、あんまり勉強しないようにはしてたんですよね。

礒野:
ええ。

井上:
だから常に素人でないと、企画って、どんどん詳しくなっちゃうと…、

高橋:
あぁ、そうだよね。

井上:
やっぱり、もとの、根本の企画っていうのが、使えなくなっちゃうじゃないですか。
常に素人目線じゃないと。

礒野:
へぇ~!

井上:
だから、どんどん詳しくなっては、いけない…、かな、っていうのはありますよね。

高橋:
なるほどね~。

犬の環境は変わった?

高橋:
えっと、雑誌は何年やってたことになるんですか?

井上:
何年やったんですかね…、『Shi-Ba』自体は…、

礒野:
2001年に創刊ですね。

井上:
17、18年ですね~。

高橋:
そのころと、もう辞めたころでは、犬の環境は変わりました?

井上:
そうですね。まぁ福太郎のときは、スタジオに連れてったり、写真のいろんなモデルとかやったんですけど、今の福三郎は、もう何もやってないですね。

高橋:
う~ん。

井上:
もう本当に飼い方も全く逆で、超シンプルで、しつけも特にやってないみたいな感じで、過ごしてるんで、なんだろう、まぁ、根本はかわいがってるんですけど…、

高橋:
うん、うん、うん。

井上:
ちょっとタイプが違うんで、かわいがり方もまた変わってくるのかな、という感じがします。

高橋:
あの~、せっかく、犬雑誌の元編集長が来られたので、これはまぁ、お答えにならなくてもいいんですけど、この前の飛行機の事故で「ペットを飛行機に乗せていいのか問題」とか、よく地震とか災害があったときに「被災地でペットをどうするのか問題」っていうのは、これまで聞かなかった問題ですよね?

井上:
はい、そうですね。

高橋:
もちろんもう雑誌から離れていらっしゃるんですが、もしかして井上さん個人で思ってらっしゃる感想みたいなものはありますか?

井上:
そうですね。やっぱり、犬を実際に僕も飼ってますから、飛行機に乗せれば便利だろうし、なんかのときは一緒に暮らせればいいなと思いますけど、ただやっぱり、そうでない人もいるし。
僕も犬は飼ってますけど、他の犬の声って、やっぱり気になっちゃうと思うんですよね。

礒野:
あっ、はい。

井上:
なので僕は、う~ん、難しい問題で…。
飛行機なんかは、昔のスタイルのときは何回か乗せてたんですけど、目的地に着いて、ケージから、荷物室から下りてくるじゃないですか。で、開けたら、ものすごいパニックなんですよね…、

高橋:
あぁ~。

井上:
すでに。
あと、すごく臭いんですよ。臭いっていうのは、恐怖心で肛門腺が漏れるみたいで、すごい匂いがして、ほんとパニックなんですよ。
よく考えたら飛行機の離陸のときって、ものすごい振動じゃないですか。ガタガタって。

高橋:
恐いよね。

井上:
やっぱりすごい恐いと思うんですよ。

礒野:
ええ。

井上:
やっぱり、「安易に乗せちゃいけなかったんだな」って、僕は今は思ってて、僕は飛行機でペット連れOKとなったとしても、できれば乗せたくないですね。う~ん。

編集長から植木職人になった井上さんの今

高橋:
え~と、実はですね、もう時間があまりないので、本当はもう1つ、植木職人の話を…、

礒野:
現在の井上さんのお話もね~。

高橋:
出版社を辞めたっていうのは、いろいろ理由があったと思うんですけど、どうして植木職人になったんですかね?

井上:
辞めるにあたって、出版界にいましたけど、どうせ変わるんだったら、もう出版社時代とは1ミリもかぶらない業界にしたいなと思ったんです。

礒野:
へぇ~! いさぎよく…。

井上:
だから全く違う世界。で、いろいろ調べてみたら、いろんな仕事があるんだな~っていうところで。

高橋:
うん。

井上:
職業訓練校みたいのが、ちょっとあったんで、どうせ辞めるなら1年ぐらいフラフラしたいのもあったんで(笑)、どうせだったらそういう学校とか行ってみようかな~って、ちょっと入ってみたのが「造園土木科」っていうところで。

高橋:
うん。

井上:
やってみたら、なんか面白かったんですよね。

礒野:
へぇ~!

高橋:
何が面白かったですか?

井上:
おもてで働くこと自体が面白いですし、あとは結局、植物の世界、動物もそうですけど、覚えることがめちゃくちゃ多いんですよ。

高橋:
全部初めてですもんね。

井上:
そう! 初めてですから、常にまっさらのことからやらなきゃいけない。
で、勉強なんかね、何十年の職人さんもいますけど、ぜんぜん僕なんかアレですけど…、勉強することが多い。

礒野:
う~ん。

井上:
それは面白い。

高橋:
あぁ~!! 「1から勉強できること」って、ないですよね、今ね。

井上:
ないですよね。

礒野:
いやぁ~でも、すごい思い切った決断で、面白いですね。

井上:
もう4、5年になりますけど、いまだに飽きないですね。

高橋:
まだ勉強することが多い?

井上:
うん。勉強っていうか、やっぱり常に、新発見じゃないですけど、今まで全くできなかったことが、剪定(せんてい)もそうですけど、できたりとかすると、やっぱりうれしいじゃないですか。そういうのの繰り返しなんで、本当に退屈することはないですね~。

高橋:
でもね、退屈な仕事がないっていうのは大切なことだと思いますよ。時間がないんですけど、僕20代は全部、肉体労働をしてて、外で働くのって楽しいですよね!

井上:
そうですね。

高橋:
陽を浴びて!

井上:
そうですね。

高橋:
大変ですけどね。寒かったり、暑かったり。

礒野:
ちょうど関東も、ここ数日、冷え込みそうですので、お体に気をつけて…。
2コマ目のセンセイは、日本犬専門誌の元編集長で、植木職人の井上祐彦さんでした。
あっという間でしたが、ありがとうございました!

高橋:
ありがとうございました!

井上:
こちらこそ、どうも、ありがとうございました!

高橋源一郎の飛ぶ教室

ラジオ第1
毎週金曜 午後9時05分

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【放送】
2024/01/19 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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