【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ ~AV女優・作家 紗倉まなさん~」

23/11/17まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2023/11/10

#文学#読書

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11月10日の「高橋源一郎の飛ぶ教室」、2コマ目の「きょうのセンセイ」は、AV女優で、作家としても活躍する紗倉まなさんをお迎えしました。今年、3年ぶりの小説集『ごっこ』が出版になった紗倉さん。最初の小説『最低。』は映画化され、『春、死なん』は野間文芸新人賞候補作になるなど、作家としてのキャリアも積み重ねてこられました。そんな紗倉さんですが、執筆について、作家としての先輩である源一郎さんに聞いてみたいこともあったんです。いったいなんだったんでしょうか。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
紗倉:紗倉まなさん(AV女優・作家)


礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、AV女優で作家の、この方です。

紗倉:
はい。紗倉まなです。よろしくお願いします。

高橋・礒野:
よろしくお願いしま~す(拍手)。

高橋:
お久しぶりです。

紗倉:
あっ、お久しぶりです。あの、私が初めてお会いしたのが、4年…、

高橋:
4年前…、某雑誌で、

礒野:
対談されたんですか?

紗倉:
そうなんです。

礒野:
そのとき、どんな話をされたんですか?

紗倉:
そのときも本にまつわることだったり…、

高橋:
あの~、『春、死なん』を出す前っていうことですよね?

紗倉:
そうです!

高橋:
小説は書いてたよね? 『最低。』と…、

紗倉:
『最低。』と『凹凸』は出してて。それで高橋さんに『凹凸』、2作目なんですけど、「あっ、自分を出して解放を始めたね~!」って、ありがたいお言葉をいただいて、『春、死なん』の励みになったという。

礒野:
へぇ~!

高橋:
そのあと2冊出して、『春、死なん』は、野間文芸新人賞の候補作になりました。

礒野:
では、簡単ではありますが、紗倉さんのプロフィールをご紹介させていただきます。
1993年、千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年にAVデビュー。2015年には、その活動を語ったエッセイ『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』を発表。初めて書き下ろした小説『最低。』は2017年に映画化され、東京国際映画祭にノミネートされました。また、3冊目の小説『春、死なん』は、第42回野間文芸新人賞の候補作になりました。

AV女優で作家? 作家でAV女優?

高橋:
ということで、あの~、どっから話をしようかと思ったんですが、いま言ったね、「AV女優で作家」と。これ、「作家でAV女優」ではない? どう?

紗倉:
私は作家と名乗れる者ではないと思っているので…、

高橋:
えっ!? そうなの?

紗倉:
いつもAV女優か、「えろ屋」っていうふうに…、ちょっと「下町」っぽく(笑)、言ってみたりとかしてたんですけど。

高橋:
せっかくですから、ちょっとAV女優としての紗倉さんの話も最初に、ちょっと。

紗倉:
ありがとうございます。

高橋:
ちょっとだけ。(紗倉さんにお話をきく上で)絶対必要だもんね。区別する必要はないんで。で、さっきご紹介した『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』っていうのと…、

紗倉:
付せんがいっぱい。ありがとうございます。

高橋:
あのね~、紗倉さんは6冊の本を出してるんですけど、僕、全部読んだんですけどね、今回また全部読み直しました。

紗倉:
あぁ! すごい!! いや、ホントに高橋さんすごいですよね。

高橋:
ちょっとね、寝不足で倒れそう(笑)。

紗倉:
そんなことができるんだ。こんな短期間に…。

高橋:
できますよ。簡単、簡単(笑)。

紗倉:
お忙しいのに、すみません。

高橋:
それで、やっぱりね、いろいろ感じるところがあってですね。紗倉さんは、自分でもよく言ってらっしゃいますけど、「自分の天職」だということで、AV女優を目指した。

紗倉:
はい。

高橋:
っていうことですよね。
それで、その話は、もうよくされているので、今日はしなくていいと思うんですけど、だいたい10年…、たちましたよね?

紗倉:
そうですね。今年で12年目に…。

高橋:
12年目!

紗倉:
はい!

高橋:
すごいね。ねぇ、もしかして、ずっと12年続けている人って、今はいないよね?

紗倉:
あ~、数としては、確かに多くはないんですけど、すごく最長の方とかだと20年とか…、

高橋:
あ~!

紗倉:
続けてる方もいらっしゃって。

高橋:
でもさ、紗倉さん、ひそかにじゃなくて、ずっと派手にやってるもんね(笑)。

紗倉:
あははははっ(笑)。ホントですか~?

高橋:
月1でしょ? だいたい、作品のリリースって。

紗倉:
はい! そうです。

高橋:
で、えっと~、僕、これから作家の話をするために、してるんですけど…、

紗倉:
はい。

高橋:
1コマ目で浜野佐知著『女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。』を紹介したんですが、ピンク映画出身の人はピンク映画に帰ってこない、普通の映画に行っちゃったみたいに言われていて、浜野さんは、自分は(ピンク映画を)やめたわけじゃない、っていう。

紗倉:
はい。

高橋:
で、紗倉さん、作家として活躍してます。本当にいい小説を書いてるんですが…、

紗倉:
ありがとうございます。

高橋:
AV女優をやめて書くっていうふうにはならなかったし、これからもしない感じなの?

紗倉:
そうですね。けっこう続けたくても、例えば、まぁ需要がなくなると…、

高橋:
あはははっ(笑)。

紗倉:
切られるとかクビになるとかはあるんで、それでできなくなるってことはあるかもしれないんですけど、気持ちとしては、まぁ続けたいのと、なんていうか、あまり分けて考えていない部分があって。職業として、両方とも。

高橋:
うん。

紗倉:
なので、けっこう、まぁ、さっき浜野さんの話があったときに、フォーマットを変えていこうとする戦士のようなお話だったじゃないですか?

高橋:
うん。そうですね! 自分が乗り込んでね。

紗倉:
そうです、そうです。でも、けっこうAVって、意外と変えられないフォーマットが多くて…、

高橋:
そうですよね~。

紗倉:
でも小説っていうのは、自分でいかようにも、なんていうか…、

高橋:
あぁ、変えられる。

紗倉:
変えられるっていうところで、なんか両方の良さがそれぞれあるのが私は好きで。

礒野:
ふ~ん。

高橋:
あの、なんかね、またAVの話が出てくるかもしれませんが…、

紗倉:
はい!

作家としての紗倉まなさん

高橋:
それで小説を、ある時期から書かれるようになりました。え~、どういう経緯で書くようになったかっていうのが『働くおっぱい』に書いてあるんですよね。

紗倉:
本当に全部読んでいただいて、ありがとうございます。

高橋:
えっと~、AV制作者の高橋がなりさんっていう有名な方がいまして、同じ高橋ですけど。

紗倉:
うふふふっ(笑)。そうですね。

高橋:
その高橋さんが、あるとき、紗倉さんが書いたものを読んで、というか、読ませたんでしたっけ?

紗倉:
あっ、そうです。突きつけた(笑)、というか…。

高橋:
そもそもなんで、それを書くことになったんでしたっけ?

紗倉:
それは、もともと私、書くことの気持ちよさみたいなのがどこかで発散できたらいいな、みたいに思っていて、なんかず~っと書いていたんですけど、そのことを、あの…、

高橋:
女優になってからもね。

紗倉:
女優なってからも。で、がなりさんに言ったら、「え~、ちょっと、じゃあ読んでみようか」みたいに、おっしゃって下さったので、すぐさま持ってったら、「いや、こんなに量があると、ちょっと話と違うんだけど」みたいに言われて。あはははっ(笑)。
「多いな~」みたいな(笑)。

高橋:
ちなみに、何を書いたんでしたっけ? そのときは。

紗倉:
そのときは、短編だったんですけど…、

高橋:
あぁ、小説か! 最初から。

紗倉:
はい。小説を書いてて。でももう、いま思うと小説の形には全然なってないような、なんというか、なぐり書きのようなものだった…、って感じなんですけど。

高橋:
で、そのときの高橋がなりさんの批評がね、けっこういい…、

紗倉:
はい。

高橋:
あのね、なんて言ったんだっけ…、「エネルギーはすごいけど、ひどい」って言ったんだっけ?

紗倉:
あっ! そうです!

一同:
あはははははは(笑)。

紗倉:
本当にあの~、ひと言でいうと、それでした!

礒野:
え~!?

高橋:
これはね、ちょっと誤解を受けるかもしれないけど、褒め言葉なんですよ。

紗倉:
あぁ~。

高橋:
そう思わなかった? 「ひどい」のほうが頭にきちゃった?

礒野:
どう思いましたか? その言葉を聞いて。

紗倉:
最初は、何かしら、たぶん期待してたんだと思うんですよ。
初めて読んでもらうということで、どういう反応がくるのかわからなくて、いろんなシチュエーションを想定してたんですけど、でも、がなりさんのことだからきっと、なんかよかったところを述べてくれるのかなと思っていたら…、

高橋:
思ったら…、

紗倉:
「熱量すごいね。内容ひどいね」って言われて(笑)。

高橋・礒野:
あははははっ(笑)。

紗倉:
「えっ!?」って、ちょっと、そのときは一瞬とまどったんですけど、いま思うと、確かに…、いい言葉だなぁ、って。

高橋:
「熱量がすごい」って、なかなか言えないんだよね。
あの~、内容は練習やトレーニングによるけど、熱量は、もともと持ってるものなので! 馬力みたいなものですよ。車のね。

紗倉:
なるほど。

高橋:
そこから書くようになったんですよね。

紗倉:
はい。

高橋:
だから最初から小説っていうのが、なんで…、だったのかしら?

紗倉:
小説を…、たぶんこう、まぁ読むのも好きだったというのがあったのと、そのときに、なんかいろいろブログとかも書いてたんですけど、ブログではない、でもこれはなんだろうっていう、立ち位置を考えたときに、なんか小説っていうのがいちばん自分にとって書きたい気がしてて…、

高橋:
うん。

紗倉:
それでもあれは内容としては、がなりさんがおっしゃっているとおり、小説も何も、ただひどい感じだったんで(笑)。

高橋:
どんな話だったんですか? ちなみに。

紗倉:
いや、それが~、覚えてなくて…。

高橋・礒野:
あははははっ(笑)。

高橋:
だよね~(笑)。なんか、ワ~ッと浮かんで書いちゃった感じ?

紗倉:
そうです、そうです、そうです! ホントに(笑)。

高橋:
この本の中にあったと思うんですけど、割と親しかった友達から、小説を読まされる話が…、

紗倉:
あぁ、そうですね!

高橋:
「これ読んだらどう?」っていう。この話も割といい話ですよね。

紗倉:
いい話です。自分で言うのもなんなんですけど(笑)。私がAV女優を始めたときに、「すごくあなたらしい小説があるよ」と。「あなたにぴったりだし、あなたが読むべきものだと思う」っていうことで、あの小説を渡してもらって、それまで実は、本は読むんですけど、小説はそこまで触れたことがない時期だったんで…。

高橋:
タイトルあげてもいいよ、別に。

紗倉:
あぁ…、桜庭一樹さんの、本なんですけど。
あの~、『少女七竃と七人の可愛そうな大人』。

高橋:
いい話なんですよ。

紗倉:
いい話なんです。あの~、読んで、衝撃を受けて、なんか自分に合うって勧められて読む本が初めてだったのもあったと思うんですけど、「あっ、こういう世界があるんだ!」とか、文字で紡がれる温度感っていろんな種類があるんだっていうのをそのときに感じて…。

高橋:
あのね~、けっこうね、小説家としてはね、理想的なスタートですね。

紗倉:
あっ! そうですか!?

礒野:
へぇ~!

高橋:
あの~、がなりさんも、その友達もね、本質を見抜いて、きついことを言ってくれる人、それからその人に合った小説、作品を教えてくれる人。

紗倉:
なるほど。

高橋:
そういう人って、なかなかね、いないから。

紗倉:
確かに。

高橋:
これはね~、この2人がいなかったら、書いてなかったかもしれないですよ。

紗倉:
恵まれてたと思います。本当にそういう意味では。

高橋:
もちろんそういうものがあって、書いた。それで、まず『最低。』という…、

紗倉:
はい。

高橋:
これは連載したんだっけ?

紗倉:
『最低。』は書き下ろしですね。

高橋:
え~と、あと4冊やらなきゃいけないので、サクッといきますけど。
これは基本的に、経験に近いとこですね。登場人物は、メインの人が4人、女性が出てくるんですけど、まぁ、もっといるんですけど。だいたいみんなアダルトビデオに出る話なので、このへんはたぶん、えっと~、割と経験に近いところで書いてたと思うんですね。

紗倉:
はい。

高橋:
で、次の『凸凹』になって、これけっこう複雑な話なんで…、

紗倉:
そうなんです。

高橋:
3世代出てくるんだよね?

紗倉:
そうなんですよ。継承されていく感じの話です。

高橋:
なので、お母さんなのか娘の話なのか、よくわかんない…、

紗倉:
あはっ(笑)。

高橋:
そのね、混乱具合がなかなかすてきなんですが。
えっと~、そのあと『春、死なん』という。だからやっぱりね、『最低。』とか『凹凸』までは、やっぱり、ある種、手探りみたいな感じがあったと思うんですが、この『春、死なん』は、僕ちょっとホントに好きな小説で…。

紗倉:
ありがとうございます。

礒野:
どんな小説なのか、紗倉さんからご紹介いただけますか。

高橋:
当人からね。これは2編あるんですけど、あの、まぁ、『春、死なん』というタイトルのほうを…。

紗倉:
『春、死なん』は、2世帯住宅に住む高齢者の主人公が、いわゆるその役割というか、祖父らしさみたいなものを求められて生活をしている中で、でもあの~、そうは言っても性欲とかっていうのはあるよねっていう、ちょっとこう、人間の普遍的な部分を書きたいなと思って書いた短編になりますね。

高橋:
そう。だからもう「老い」の…、

礒野:
高齢者の?

高橋:
老いの孤独と…、奥さんは亡くなっちゃうんですよね。

紗倉:
はい。

高橋:
それで独りぼっちになるんですけど、でももう「老人なんか性欲ないでしょ?」って思われてて、そういうすごい、ただの孤独じゃなくて、「性欲あるんだけどな~」って。でももう、そういう人じゃないでしょって。もう「終わり」っていうふうにね。あはっ(笑)。だからね、そういう意味では、僕ね~、この主人公より2歳年上なんだよ(笑)。

紗倉:
あはははははっ(笑)。

高橋:
しかも読んだとき、その歳だからさ! あ~、もうね、ヤバいなと思いつつ。

紗倉:
いや、いや。

高橋:
この老人が主人公になったんですけど、なぜ老人にしようと思ったんでしょうか?

紗倉:
それは私の中でやっぱり自分の延長にある、近い女性とか近い年齢の人で書くと、けっこう自分のことを投影されちゃって読まれたりだとか。

高橋:
あぁ、そうですよね。

紗倉:
あと、なんか、これは結局、「私小説」みたいなところでしか捉えてもらえないんじゃないかっていうのは、2冊出したときに思って…、

高橋:
そう読まれちゃうよね。

紗倉:
そうなんです、それで。とは言いつつ、この『春、死なん』の主人公の気持ちは、私にもすごくよくわかる部分があって、ちょっと大幅に変えてみようかしらと…。

礒野:
なるほど。それで高齢者で男性、ということなんですね。

紗倉:
そうなんです。ぜんぶ自分とは…。

高橋:
そうなんだよね~。すごいその孤独な感じ…。
ぜんぜん関係ないんだけど、息子の妻、感じいいよね!

紗倉:
あはっ(笑)。そうですね。

高橋:
(周りに)聞いたらね、みんなね~、彼女のファンになっちゃって(笑)。

紗倉:
あっ、そうですか(笑)。

高橋:
結局、いい人だったんじゃないかって(笑)。

紗倉:
うふっ(笑)。

最新作『ごっこ』のこと

礒野:
そして、そして、源一郎さん! 今年2月に…、

高橋:
これね~!

礒野:
4冊目となる小説、短編集の『ごっこ』を発表されました~!

高橋:
はい。あえて、じゃあ僕が説明しましょう。

紗倉:
ありがとうございます。

高橋:
これはね、(表題作の短編『ごっこ』には)2人しか出てきません、基本的に。

紗倉:
はい。

高橋:
え~っとね、ミツキさんという31歳の女性と、モチノくんという25歳のだめな男が…、

紗倉:
うふふふ(笑)。

高橋:
で、2人が、まぁいろいろあって、逃げる話、逃亡する話。ミツキさんは会社を無断欠勤して、で、運転免許を持ってるのはミツキさんだけなんだよね?

紗倉:
そうなんです。

高橋:
モチノくんはどうしようもないやつでね。

紗倉:
うふふふふふ(笑)。

高橋:
どうしようもない男を書くの、ホントうまいよね(笑)。

紗倉:
あははっ(笑)。なんか私、「男性、嫌いなの?」ってよく聞かれるんです(笑)。

礒野:
あははははっ(笑)。そうなんですか。

高橋:
救いようがないでしょ! でも、つまり、ミツキさんも言ってんだけど、「救いようのなさ7割」の中に組み入れられて、3割ぐらいはいいところがある、みたいなね。

紗倉:
う~ん。

高橋:
ね! 「7:3」か「8:2」で。

紗倉:
はい。

高橋:
でも、2か3はぐらいは、いいところがあるんだよね(笑)。

紗倉:
ちょっと。 ちょこっと。

高橋:
そんなにないか。あはははっ(笑)。

紗倉:
うふふふふふっ(笑)。

礒野:
今回この3編の小説を収録した『ごっこ』を、これまでの小説とは違った、恋愛に重きを置いたようなものになってますけど、どうして書こうと思ったんでしょうか?

紗倉:
経緯としては、もともと書いてた原稿があって、それがすごく煮詰まってて。なんかこう「どうしよう…。全然うまくいかないな」ってときに、「息抜きに何か書いてみませんか?」っていう…、

高橋:
これ、息抜きなの? もともとは。

礒野:
へぇ~!

紗倉:
でも、結果としては、すごく書きたかった話がこれだったんだっていうところで、全部恋愛という軸に沿った小説にはなったんですけど。

高橋:
そう、それでね、みんな恋愛小説なんですよ。この『ごっこ』も、『見知らぬ人』も『はこのなか』も。
それもさ、これ全部読んだら、恋愛したくなくなるよね(笑)。

紗倉:
あははははは(笑)。

礒野:
逆に!

高橋:
いや、いや、もうね~、しかも恋愛って、こんなもんだったよねって思うと…。
たぶんこれね、初めて恋愛する人が読むと、ちょっとビビるんじゃない?

紗倉:
あ~。そうですね。ちょっと希望というよりかは…、

高橋:
絶望が…、

紗倉:
そうですね。

高橋:
でも『ごっこ』に関しては、結局まぁ、2人は死にに行くんですよ。本当はね。

紗倉:
はい。

高橋:
一緒に心中しようと思ったけど、あまりにもモチノくんがつまんないんで、どういう結論なのか、最後、車をどんどん加速させていくところで…。映画の『テルマ&ルイーズ』ってあるんですけど、超かっこいいですよね、ココ。

紗倉:
あっははははは(笑)。

礒野:
そこを絶賛(笑)。

紗倉:
うれしいです。

高橋:
どうするの? あのまま行くの?

紗倉:
あのまま、もう、踏み込んでいくっていうところで…。

高橋:
そう! あれがね~。

礒野:
結末は、ぜひ読んで楽しんでいただいてということで!

紗倉さんが源一郎さんに聞いてみたいこと

礒野:
ここで、紗倉さんがぜひ今回、源一郎さんに聞いてみたいことがあるそうですね?

紗倉:
はい。

高橋:
答えられませんよ、僕(笑)。

紗倉:
いいえ、本当に高橋さんは、なんて言うか、私にとって神様みたいな方なんで。

高橋:
あぁ、もう「あの世」に行ってる(笑)。

紗倉:
そういう意味じゃないですから~(笑)。すみません。

高橋:
大丈夫です(笑)。

紗倉:
あの~、けっこう原稿も、ものすごいたくさん書く機会もあると思うんですけど、そのときに担当編集者さんとのやり取りとかの中で、自分が書きたいことと、求められてることとかズレたときに、どう折り合いをつけて書かれている感じなのか、それとも、そういうことを、そもそも言われないんですか?

高橋:
えっとね、言うことは聞かない。

紗倉:
あっはははっ(笑)。
断言!

高橋:
あの~、いやだから、別に、好意で言ってらっしゃるし、当たってることもあるんですよ。
ただ、当たってても、言うことを聞くかどうかは、また別問題…、

紗倉:
う~ん。

高橋:
ですよね。だから自分のやりたいことやって、間違ったりするじゃん。

紗倉:
はい。

高橋:
それでもいいじゃないかと僕は思ってるので。

紗倉:
あ~、すごい!

高橋:
つまり自分も納得いくでしょ?
言われたとおりにやって、うまくいかなかったらさ、相手のせいにしたくなるじゃない(笑)。

紗倉:
はい。

高橋:
でも自分で押し通して失敗したら、全部自分のせいだから、最高ですね、気分が。

紗倉:
あ~。でもその責任の重さにしんどくなるってこととかもないんですか?

高橋:
ない、ない、ない。

礒野:
ないんですか(笑)。

高橋:
責任なんかさ、だって、どうせ死んじゃうんだから。あははっ(笑)。

紗倉:
あはははははっ(笑)。

礒野:
どうですか? 今の答えを聞いて。

紗倉:
いや、もうなんか~、しびれますね。やっぱり。それで、なんかハッとしますね。自分がすごく愚かな気がしてきちゃいました(笑)。

高橋:
いや、だから、編集者の人の話はフレンドリーにちゃんと聞くけども、最終的には「うん、うん、うん、うん。ごめん、違うことやるから」って(笑)。

紗倉:
あっはははははっ(笑)。ずっとそのスタイルは貫いてきた…?

高橋:
うん。デビューしたときから。

紗倉:
あっ、わ~、でもなんかすっごい、私の中で今、光が見えました。「え~、いいんだ!」と思って。

高橋:
だってさ、好きなことやるために書いてるんでしょ?

紗倉:
はい。

高橋:
じゃあ、自分の言うことだけ聞けばいいじゃん。

紗倉:
はぁああぁ~。

高橋:
ということですね。

紗倉:
なるほど。マジ解決です。あははははは(笑)。

高橋:
でも、あの人、いい人だから、編集者。

紗倉:
あっ、えっと、あの…。

礒野:
今日いらっしゃってますから。スタジオの外にね。

紗倉:
今日いらっしゃっている編集者さんは、全然、そういう、あの~、問題とかは全くないんですけど、そういう意味じゃなかったので、ごめんなさい。

高橋:
いい人だから。(小声で)

紗倉:
すっごい、いい人です。

高橋:
いつも僕、言うこと聞いてるよ。

紗倉:
あっははははは…(笑)。

高橋:
ウソです(笑)。
次の作品も楽しみにしています。


【放送】
2023/11/10 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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