【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~詩人 伊藤比呂美さん~」

23/11/03まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2023/10/27

#文学#読書

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「きょうのセンセイ」は、詩人の伊藤比呂美さん。リスナーの皆さんのお悩みに答える「比呂美庵」もオープン! その前に、まずは、1コマ目の感想からどうぞ。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
伊藤:伊藤比呂美さん(詩人)


礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、詩人の、この方です。

伊藤:
伊藤比呂美です。

高橋・礒野:
今日もよろしくお願いしま~す(拍手)。

伊藤:
よろしくで~す。

1コマ目「ヒミツの本棚」 耕治人 著『一条の光・天井から降る哀しい音』を聞いて

伊藤:
冒頭の「今夜のコトバ」で紹介していた耕さんの言葉は、いい言葉だったわね。「長い間お世話になりました」って、私も言いたい。

高橋:
あはっ(笑)。

伊藤:
でね、そのときに対面している編集者は誰だろうって思っちゃったんですよ。
自分が若いときは、おじさんやおばさんだったでしょ。

高橋:
今はだんだん若くなってくるもんね。

伊藤:
今は若い人が何人もいるから、あの人かな、あの人かなって…。源一郎さんもでしょ?

高橋:
僕もね~、若い人ばっかりになっちゃったね。

伊藤:
ね~。

高橋:
いや~、でもね、その気持ちは…。
まぁ、普通は、書いてると「これが最後」ってわかんないかもしれないけど…、もしわかったら、やっぱりちょっとお礼は言うと思うよね。

伊藤:
うん。言うと思う。

高橋:
言うよね。

礒野:
でも受け取った編集者さんも、なんて答えていいかとか、返していいか、ちょっと考えますよね?

高橋:
返さなくていいよ(笑)。

伊藤:
返さなくていいのよ。

礒野:
噛みしめれば?

高橋:
黙って持って帰って(笑)。

伊藤:
黙って持ってって(笑)。

礒野:
はい!

伊藤:
いい話だったんですよ~。すごいね~、楽しく読んだの、この本(『一条の光・天井から降る哀しい音』)。

高橋:
ホント?

伊藤:
でも、ムカついた~。

高橋:
ムカつくよね。

伊藤:
あはっ(笑)。

礒野:
え? どうしてですか?

高橋:
これは、だってさ、妻のヨシさんは、もう仕える一方でね。

伊藤:
それで男がね、男がっていうか、耕治人さんが、「なんか俺、こんなに介護をやってんだぜ」みたいなところが、ちょっと見え隠れしてるみたいな。

高橋:
それは、ないよ。

伊藤:
ないと思う?

高橋:
あっはっはははは。

礒野:
体をきれいに拭いてあげたりとか、汚してしまったのを片づけたりとか、そういう描写がね、いくつかあるんですよね。

伊藤:
ことさらに書くじゃない? ここまで、ここまで、って。

高橋:
それはね、書くことがないんだよ。

伊藤:
いや、そう言うけどさ~。
でもね、私が唯一、唯一っていうか、本当になんかムカついたのはね、同じようなものを私も書いてるんですよ。

高橋:
あ~、そっち。

伊藤:
それは「私小説」って言われないの。だからね、こういう私小説っていう世界がなんかとってもね、「男の世界」。でね、私たちみたいな女の作家が書くと、それは「女のすなる『エッセイ』」っていうところに押しやられていくんだなっていうところが…、

礒野:
あ~!

伊藤:
すっごい「男の世界」っていうのをね、読んでて、不思議に感じたんですよね。

高橋:
その通りですね。

伊藤:
でもね~!

高橋:
あはははっ(笑)。

伊藤:
文学って、男も女もないでしょ。

高橋:
あぁそうだよ。

伊藤:
え~、そうなの?

高橋:
あのさ、だから、なんて言ったらいいのかね。文学の歴史があるでしょ。

伊藤:
う~ん。

高橋:
え~と、近代文学の。その中で、いろんなものが生まれて消えてて、その中で「特異な発生をしたジャンル」があったの。それは、この「日本版私小説」なんです。

礒野:
日本版私小説?

高橋:
つまりね、世界中で、こういうものって、無いの。この形のものは。

伊藤:
うん。

高橋:
つまり、どういうものかって言うと、自分のことを書くっていう小説は世界中にあるんで、そういう私小説は、どこでもある。ただ、日本ってものすごく狭くて、何がって言うと、書かれているのは身の回り…、っていうよりも、出てくるのが友達だけなんだよね。

伊藤:
うん。それはもうこの本の、前のほうに…、『詩人に死が訪れるとき』って、もうね、知り合いしか出てこない、みたいな。

礒野:
友達がたくさん出てきて話をしてましたよね。

高橋:
で、知り合いが全員、作家。

伊藤:
うん。

高橋:
「作家の知り合いがいる人が、その作家の知り合いについて書きながら、自分の生活の話をする」っていうのが、『私小説』。

伊藤:
そうね、そうね~。
私さ、家の周りを歩いてて、すれ違う人がいるのね。そして「こんにちは」とか「こんばんは」って言うんですよ。するとね、返事しないのがオヤジなのよ。

高橋:
あはははっ(笑)。

伊藤:
で、ツーンとして歩いてて、「あれ? 人の声が聞こえないのかな~?」って思いながら。そういう人たちが書いてるような感じがしました。

礒野:
うふふふふふっ(笑)。

伊藤:
自分たちは返事をしなくてもいいんだ~、みたいにして歩いてるのね。でもね、そういう特権っていうか、いや、ことさらにこれをね、ジェンダーの問題に落とし込むのはね、不本意ではありますが…、

高橋:
あはっ(笑)。

伊藤:
不本意ではありますが、なにか、すっごい感じてさ。そのへんが…。

礒野:
あ~。厳密にジャンルが、エッセイと私小説って、あるのかな?って、全くの素人からすると…

高橋:
そこはね、境界はいつも曖昧ですよ。

伊藤:
自分が私小説だと思ったら私小説だし、自分がエッセイと思ったらエッセイ、自分が詩と思ったら詩、なんですけど、でも私なんて、今までずっといろんなものを、私小説かもしれないとかって思って書いてると、誰もそんなことは言ってくれない。「エッセイ」って言うんですよ。おとしめられてるかも…。

高橋:
だからね、今、いわゆる日本版の私小説は、無くなったんです。

伊藤:
無くなったんですか!?

礒野:
あ~、そうなんですか?

高橋:
どうしてかっていうと、さっき言った「作家の友達づきあいの話」だから、基本。

伊藤:
無くなったわけね?

高橋:
そういう友達づきあいが無くなったんだよ。
いわゆる「文壇」っていうものは、ほとんど存在しなくなったので。似たようなものはあるけども、この耕治人さんみたいなものが最後で。あとは、まあ、絶滅危惧種だったんですよ。

伊藤:
(いまは、)もっとね、コミュニケーションが外に向かって開かれているような気はしますね。だから自分が書いてるものも、やっぱりこう狭いところに書こうと思って言ってんじゃなくて、もっと広い読者を想定して、書いてるでしょ。

礒野:
あっ、同業以外の方に読んでもらう、というか?

高橋:
…というか、これはやっぱり、ある時期…、

伊藤:
そうね、昭和の…、

高橋:
昭和のある時期…、志賀直哉が神様でいて、そういう文壇に入りたいなと。

伊藤:
うん。

高橋:
その中で認められたい。認められるって、読者じゃなくてさ、偉い作家に認められたい。

伊藤:
はぁ、はぁ、はぁ。なんかそう考えてくると、どんどんどんどん嫌な人に見えてしまうんですけど(笑)。

礒野:
うふふふ(笑)。

高橋:
でもさ、そういう、ものすごく狭いところでしか生きられない人もいるじゃない。

伊藤:
うん。

高橋:
それを、お前は狭いところで生きてるから駄目だって、僕は言えないね。

伊藤:
う~ん。

伊藤:
でもね、コミュニケーションが不全だわ~。
小説ってやっぱりさ、あるいは文学ってさ、コミュニケーションをするために…、こういう、しゃべるっていうのじゃなくてね、とにかく「自分を表現して、それを誰かに伝えるための、なにか」なんじゃない?

高橋:
僕もそう思いますが…。

伊藤:
はい(笑)。
思ってなかった人がいっぱいいたのね?

高橋:
で、それができない人を僕は認めない、というふうには、ならないんだよね。

伊藤:
なるほどね~。

高橋:
つまり、できない人もいるんだよ。えっと、実際の人間関係でもできず、小説の中でもコミュニケートできず。「お前はじゃあ用無しだ」、とは言えないんだよね。そこでしか生きられない人がいて、たぶん妻のヨシさんも、そこでしか生きられない、どうしようもない人を、まぁ養ってるようなもんだよ、もう。
だから僕はまぁ、ある意味犠牲になったと思うけど、でも同時に、そこにその…、子育てみたいなものだよね。

伊藤:
でも犠牲になる楽しさっていうは、絶対あったと思うんですけどね。

高橋:
あるよね。

礒野:
じゃ、次の話題へいきましょう!

世界がひっくり返る『さいたま国際芸術祭』

伊藤:
今日ね、今日は大変だったの、1日。

高橋:
うん(笑)。えっ、なんで?

伊藤:
朝ね~、埼玉県の、なんだっけな、国際芸術祭っていうのに行ったんですよ。

礒野:
『さいたま国際芸術祭』、今やってますね。

高橋:
雑談しに来てるよね。

伊藤:
えへへ(笑)。

高橋:
いいよ、いいよ(笑)。

伊藤:
いい? それがすっごい面白くって、私がちょっと関わってるのね。

高橋:
なんかしてるのね?

伊藤:
なんかしてるの。
で、これから壊されるっていう昔の市民会館があって、そこを使って芸術祭をやって、使い終わったら、もう壊しちゃおうっていう。

高橋:
あ~、最後なのね。

伊藤:
つまり、全部ね、アンダー・コンストラクション(工事中)。

高橋:
じゃあ壊しつつあるんだ。

伊藤:
壊しつつある感じ。

高橋:
あぁいいね~、なんか。

伊藤:
ここ壊し、あそこ壊しみたいな感じで、それがそのまんま置いてあって、その中に、トッ、トッ、トッ、トッてアートがあって。

高橋:
廃材みたいにあるわけね(笑)。 すでに。

伊藤:
そう! それが、区別がつかないんですよ。

高橋:
あっ! 置いてある展示物と壊した建物の区別?

伊藤:
わざと置いてあるものと、たまたま置いてあるものと、それからアートと、そして、そこにいる人もね、そこでガラスを磨いてたりしてね、それがね、なんて言ったかな…、ランドスケープの「スケーパー」だ! 「スケーパー」っていって、わざわざそこにいる人。
(注:英語のlandscapeは、風景などを意味する単語。「スケーパー」は、その 「scape」 に、「人」などを示す「-er」 をつけた造語)

高橋:
工事の人じゃなかったのね(笑)。

礒野:
そうなんですか~! アートの一部!

伊藤:
わかんないの~。

高橋:
面白いね~。

伊藤:
そしてそこにね、ヘッドホンが置いてあるんですよ。あぁヘッドホンだなって、何気なしにそれをとってみると、伊藤比呂美がそこで朗読をしてるっていう(笑)。

高橋・礒野:
あっはっはっはっはは(笑)。

礒野:
そういうことですか(笑)。

伊藤:
もうず~っと朗読してたんで、今日もね。ずっと通って、朗読したんですけど。

礒野:
へぇ~。そこに行くと比呂美さんの朗読も聴けると!

伊藤:
うん。で、そこを出るでしょ。駅まで歩いて帰る途中に自転車が置いてあると、「あっ! これもアートかしら?」とかね。

高橋:
わかんないよね。

伊藤:
わかんない!

礒野:
境目がわからなくなる!

伊藤:
「世界がひっくり返る」っていう。

高橋:
あ~、それ面白いね。「ここがアート」って、普通は区別してるじゃん。

伊藤:
うん。で、そう、そう。アートは見るものでしょ。それをさ、「見る目を自分で取る、選び取る」みたいな。絶対、来た人たちは、選び取れなくて、何があったんだろうって、帰っちゃうと思うんですよ。

礒野:
う~ん。

伊藤:
でね、あんまりね、コミュニケーションがないんですよ。置いてあっても見ないでくれ、みたいな顔してそこにアートがあるから、するとね、さっきコミュニケーションって言ったけど、アートってやっぱり、コミュニケーションだと思うんですよね。あんまりコミュニケーションがないから、すっごい不安になってきて、そこらを歩いている人にね、「あれ見ましたか?」とかって…、

礒野・高橋:
あははははは~っ(笑)。

伊藤:
コミュニケーションしちゃうの、おばさんが(笑)。で、スタッフがいて、「あっ、ここからどうやって行くんですか?」とかって、聞かなくていいことを聞いちゃって(笑)。

高橋:
面白いね~。
でもね~、実は、私小説って正反対の方向で同じことをやってて。

伊藤:
どういうこと?

高橋:
どういうことかっていうと、普通の小説は「小説だ」ってわかってんじゃん、もう。

伊藤:
うん。

高橋:
フィクションだって!

礒野:
うん、うん。

高橋:
で、あの~、私小説って、「全部事実だという前提」になってるんで。

伊藤:
なってるんですか?

高橋:
一応ね、一応。でも本当かどうか、わかんないじゃない。

伊藤:
うん、うん。

高橋:
一応、事実としておくんだよ。ここに。だから「ホントにこれ事実なのか」「作ってんじゃないのか」「作家だからわざとやってんじゃないの?」っていうところが、区別がつきにくい。

伊藤:
演技的なところと?

高橋:
そう、そう、そう、そう。

伊藤:
へぇ~! で、この人の場合は? 耕治人さん。

高橋:
これがね、わかんないんだよ。耕治人さんは。もしかすると本当のことと演技がもう区別がつかなくなっているかもしれない。50年もやってると。

伊藤:
あっ、自分がね。

高橋:
自分がね。

伊藤:
ずっとやってるから!

高橋:
そういう内面の動きが全部見えるからさ。

伊藤:
なるほど~。「恥の多い生涯を送って来ました」って、自分で思ってるようなものよね。

高橋:
そう、そう、そう。それって本当かよって。
「じゃあ本当は何?」っていうことになるでしょ。

伊藤:
う~ん。

高橋:
そういう意味では…、怖いところがある。

伊藤:
うん。

高橋:
普通の小説のほうが安心なの。全部作り物だと思ってたら、もうなんかさ、3Dの映画を観てるようなもんで、「お~、面白れ~!」って言ったりするけど、やっぱりね、私小説は傷つくんでね、こっちも。

伊藤:
でもね、それってエッセイって言われている分野もそうでしょ? 本当か嘘か、わかんないのにスッと入ってって、地続きで、そのものがあって、で、本当か嘘か、わかんない。リアルか、リアルじゃないか。

高橋:
これね~、たぶんなんだけど、エッセイでももちろん、そういうものが多いんだけど…、

伊藤:
うん。

高橋:
私小説ですごいやつは、もう1歩、切り込むね~。

礒野:
へぇ~。

高橋:
要するに、だから耕治人さんのもそうだけどさ、「いや、そこまで書いていいんかい!」みたいな。

伊藤:
なるほど。エッセイはある程度…、

高橋:
エッセイはある程度…、

伊藤:
そう! そこが私は嫌なの!

高橋:
はぁ? あははっ(笑)。

伊藤:
つまり、私の書いてるものを「エッセイ」って言われるんですよ。で、私、切り込んでるの! 本当に切り込んでるのに…、

高橋:
知ってる知ってる。

伊藤:
それなのに、エッセイって言われると、まだ切り込んでないみたいなところに、ポ~ンとね、投げられて、おとしめられていくような気がして。

高橋:
エッセイだと、そういうふうに受け取られちゃうよね。

伊藤:
でしょ~! なんで私小説って言わないのって思っちゃうの。でも、自分から言ってないから…。

高橋:
言えばいいんだよ(笑)。

伊藤:
あははっ(笑)。はい。嫌で…。

礒野:
言いましょう。

高橋:
言いましょう。

礒野:
言ってみたらいかがですか?

伊藤:
(小声で)私小説書いてます。

礒野:
うふふっ(笑)。ちっちゃく言いましたね。まだまだお話は尽きませんけれども…、

高橋:
尽きないよ。

礒野:
いかがでしょうか? そろそろ…、

伊藤:
雑談をやめて(笑)。

礒野:
恒例のコーナーにまいりましょう!

毎月恒例の人生相談『比呂美庵』

礒野:
では「比呂美庵」にまいりましょう。今日も時間の限り、お便りを紹介していきま~す。
ラジオネーム「もーちゃん」さん。富山県にお住まいの10代の中学生の女性ですね。

高橋:
10代で聞いていらっしゃる方。中学生!

礒野・高橋:
うれしいですね。

礒野:
来週、学園祭があります。私は部活のパフォーマンス(書道)とクラスの準備(たこ焼き)の両方をしなければなりません。ですが、女子はあまりやる気がなく、とある男子は「クラス準備に必ず全員参加してくれ(部活のパフォーマンスがある人も)」と言って、先生は「みんなで決めてください」と、まとまりが全然ありません。比呂美さんがもしこの状況になったとしたら、どう乗り切りますか?

伊藤:
ひとりで頑張る。

高橋:
あ~。

礒野:
うふふふふ(笑)。

伊藤:
で、先生が言ってることも、とある男子の言ってることも聞かない。
あまりやる気がない女子の言ってることも聞かないし、見もしない。私が、自分がやりたいことをやる。で、すごく大変だったら頑張る。

礒野:
どっちですか? 書道ですか、たこ焼きですか?

伊藤:
両方ともやりますよ。

高橋:
両方やるんじゃない?

礒野:
両方しっかり。

伊藤:
もうしっかり。自分が動けばいいだろうって。他人を動かすより自分が動いたほうが簡単だし、物事は簡単に片づくし、また、なんか、そのほうが面白いし。人に言われてやるよりはね。とにかく先生の言うことを聞いちゃいけないと思います。

高橋:
それはそうですよ。原則です。

礒野:
あっははっは(笑)。

高橋:
先生の言うことを聞かなきゃ、あとは何をしてもいい。

伊藤:
とある男子の言うことも聞くなって、私は思うわ。

高橋:
とある男子?

礒野:
とある男子は「クラス準備に必ず全員参加してくれ(部活のパフォーマンスがある人も)」と。

高橋:
あ~。それはつまんないね。

伊藤:
「ほっとけ!」とか言って、参加する。

高橋:
あ~。言うことは聞かないで、参加する。

礒野:
自分の意思が大事ってこと?

高橋:
やっぱり好きなことをやればいいじゃないのかね~。

伊藤:
Exactly(その通り)!

礒野:
だそうです!

高橋:
他の人がさぁ、何を言っても関係ないよ、そんなの。

伊藤:
そうなの。

礒野:
言われたから、じゃなくてね。

高橋:
そう、そう、そう、そう。

伊藤:
やりたいことを、やりたいようにやればいい。

高橋:
なんか言ってるな~で、いいんだよ。

伊藤:
でもこの場合、2つやりたいわけだから。ね~、もーちゃんはやりたいわけだから、やりたいんだったら両方やっちゃおう!

高橋:
まとまりなんかないよ、もともと。

伊藤:
ないですね。

高橋:
何事もね。

礒野:
うふふふふっ(笑)。

高橋:
まとまりがない、っていうのが良いことですね。

礒野:
続いてのお便りは、ラジオネーム「恵の雨」さん。茨城県にお住まいの40代の女性です。

不妊治療をするかどうか悩んでいます。7歳の娘が1人います。私はずっと第2子を望んできましたが、日本の生活でストレスをためている外国籍の夫は賛同していませんでした。きっかけがあり、夫の気持ちが変わって、今は不妊治療にも積極的です。自然妊娠を私は望んでいたものの授からず、まもなく不妊治療の保険適用ができなくなる43歳を迎えます。授かりもの、と考え、踏み切れずにきました。自分の執着のままに欲しいものをお金や高度医療によって手に入れていいのかという迷いがあります。しかしもう1人望む気持ちはふっきれません。自分に合わないと思えばその時にやめればいいと考えていますが、不妊治療を始めてこれでいいんでしょうか。

伊藤:
うん、これでいいんだけど、そもそも…。

高橋:
あの~、僕、思ったんですけど、「夫は賛同していなかったけれども、きっかけがあり気持ちも変わり」って、なってるんで、これはねやっぱり、夫婦で決めることなので、あの~、なんで我々に相談してきたのかなっていう気も、ちょっと…。

礒野:
う~ん。
執着のままに欲しいものをお金や高度医療によって手に入れていいのかという迷いもあるようですけど。

高橋:
いやだから、自分が本当は何がしたいか、自分に聞いてみたらどうですか?

伊藤:
そうね。

高橋:
いろいろ夫の意見とか、これがあれで、こう言われてるからって、外を見てるでしょ。

伊藤:
う~ん。そうね。

高橋:
それで「どうかな?」って言ってるけど、本当の気持ちがもしあるんだったら、それに従ったほうがいいと思うんだけど。

伊藤:
本当の気持ちっていうのが、なかなか見えないんですよ、この場合。そもそも第2子を望んできたっていう、それはなんでなんだろう…、

高橋:
なんでなんだろうね。

伊藤:
っていうのは、私はわかんないし~。だから…、なんて言ったらいいか、わかんないわね~。

礒野:
今のところ「もう1人望む気持ちはふっきれず」なので…、

高橋:
ふっきれないんでしょう。

礒野:
このままいってみようかな~っていうところなんですね。

伊藤:
ですよね。

高橋:
それでいいんじゃないですか。あの~、僕やっぱりね、本当の気持ち…、本当の気持ちがあるかっていうのは難しいところでね、迷っていると自分の気持ちさえわかんなくなるから、それは僕らに聞いてもわからない。

伊藤:
そうね~。わかんないと思うわね~。

高橋:
夫と話して、もう1回自分の気持ちを確かめて、それに従うっていうことで、よろしいんじゃないでしょうか。

伊藤:
ですね~。

礒野:
はい、ありがとうございます。では、もう1通いきましょう。
ラジオネーム「なかじ」さん。山形県にお住まいの20代の男性です。

私は非行や犯罪に関わる子ども減らしたいという思いから「トー横キッズ」に携わることができないかと考えています。

「トー横」というのは、新宿歌舞伎町の東宝ビルの横の略でして、「トー横キッズ」はそのあたりに集まる若者のことなんですよね。その周辺で事件やトラブルが相次いでいるというニュースもありますけれども…。

ただ彼らに関わるといっても、どういう関わり方がいいのか、わからないのです。なんと声をかければいいのか。声をかけたとしても言葉を返してもらえるのか。そして彼らが居場所としている歌舞伎町そのものに入っていくこわさもあります。源一郎さんだったら、彼らになんと声をかけるのか、教えていただきたいです。

高橋:
いや、とりあえず、声をかけるってつもりが今のところないので。
あの~、これさ、世界にはいろいろな問題がいっぱいあるでしょ。で、全ての問題に答えられないからさ、僕ら。

伊藤:
うん。

高橋:
だからやっぱり、自分に近いところ、強い関心があるところに答えていくしかないんだよ。いく場合も。
で、僕はこの方がさ、なんで「トー横キッズ」に関わりたいのかが、そもそもよくわからないんだよね。

伊藤:
でも、すっごく、こだわってるんだよね、「トー横キッズ」に。でもこの人、お住まいは山形県で、20代。若いんだよね。

礒野:
問題意識がね、たぶんそこに今ね、若い方は…。

伊藤:
「トー横キッズ」って東京でしょ。

高橋:
新宿ですね。

伊藤:
じゃあまず最初に、東京に出てきて、東京に住み着いて、2つ方法がある。

高橋:
はい。

伊藤:
自分が「トー横キッズ」になるか。あるいは「夜回り先生」って、いたでしょ。

高橋:
あ~、いたね!

伊藤:
あんなふうに夜回りをして、とにかく夜回りをし続ける。で、関わる。あっ、3つめがあった!
東京に出てきて「おまわりさん」になる。

礒野:
なるほど、具体的ですね。

高橋:
あはははっ。仕事で!

礒野:
仕事としてね~。

伊藤:
そしてほら、なんかあったら、「ダメじゃないか!」と補導して、彼らと付き合ううちに、ほらすごく、情のあるおまわりさんっていう。

高橋:
現場に行ったほうがいいよね~。

伊藤:
現場が重要で。


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2023/10/27 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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