【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~伊藤比呂美さん×鈴木涼美さん~」

23/02/03まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2023/01/27

#文学#読書

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2コマ目「きょうのセンセイ」、今回は伊藤比呂美さんと鈴木涼美さんのお2人にお越し頂きました。元日の「新春!初夢スペシャル」では、鈴木さんはスタジオ、伊藤さんはリモートでのご出演でしたが、今回はお2人ともスタジオにて! お正月の振り返りから始まり、「なぜ小説を書くのか?」という伊藤さんの問いに鈴木さんは・・・?? お話がはずみ過ぎて、なかなか「比呂美庵」にたどりつけませんでしたが(笑)、「比呂美・涼美庵」として開店、いつもとはまた違った味わいのものとなりました。

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
伊藤:伊藤比呂美さん(詩人)
鈴木:鈴木涼美さん(作家)

礒野: 源一郎さん、2コマ目です。
高橋: はい。きょうのセンセイは、まず、詩人のこの方です。
伊藤: 伊藤比呂美です。
高橋: そして、もうひとり! 作家のこの方です!
鈴木: 鈴木涼美です。
高橋: わ~い!(一同拍手)
礒野: よろしくお願いしま~す!
高橋: いや~、2人ゲスト!
礒野: きょうは特別!
高橋: すごいですね。なんか。
礒野: うふふふふ(笑)。
高橋: 大盤振る舞い(笑)。
伊藤: なんで、こんなに特別?
高橋: いや別に(笑)。そりゃもちろん、鈴木さんと伊藤さんですから。
伊藤: ありがとうございます。
礒野: 伊藤さんと鈴木さんは、初対面ですよね。ちゃんとお会いするのは。
鈴木: はい。この前はオンラインでお話をさせてもらったんですけど。
高橋: どうです? 見て(笑)。生は。
鈴木: いやぁ~、私、本当に小さいころ、伊藤さんが「子育て」について書かれたものを母親が読んで、それで育てられたので、なんか私の「ゴッド・マザー」的なイメージです。
高橋: あ~、確かに!
鈴木: でもイメージ通りです。
高橋: その通りだった?
鈴木: 割とそうです。
伊藤: 穏やかで…、静かで…、あまり話さず。
鈴木: あははは(笑)。
高橋: なにをバカなこと言ってるの(笑)。
一同: あははは(笑)。
高橋: いや~でもね、伊藤さんと鈴木さん、気が合うといいな~というふうに、ちょっと僕も思ってたんで、勝手に。
鈴木: いや~、嬉しいです。
高橋: まぁ、あの“叔母さん”?
伊藤: めいだもんね。
高橋: めいだよね。この前そういう話はしたよね。
礒野: 『元日スペシャル』でそういう設定でしたね。

元日の『新春!初夢スペシャル』どうでした?

高橋: 長女が…。
鈴木: 上野千鶴子さんで、次女がお母さんで…。
高橋: それから、三女が伊藤さんで、次女の娘が鈴木さんで。お母さんが亡くなっちゃって、“うるさいおばさんが2人いる”みたいなね(笑)。
伊藤: 『細雪(ささめゆき)』みたいな。
高橋: あ~!
伊藤: 『ざざめ』雪みたいな感じよね(笑)。
高橋: ざざめ雪になってるんだ(笑)。
え~っと、なので1月1日以来ということなんですが、あの時の感想はどうですか? 鈴木さん。
鈴木: 割とあっという間で、前半の上野千鶴子さんと高橋源一郎さんの「ロング対談」がすごく面白くて、それがなんか面白かったな~っていう話をしてたら、終わっちゃったぐらいの感じでした(笑)。
伊藤: そんな感じですよね。ホント、なんか、私いらなかったな~と思って、申し訳ないです(笑)。
鈴木: いや、そんなことないです(笑)。
高橋: この人すぐね「私いらない」って、すぐふてくされる(笑)。
伊藤: だってインタビュー面白いんだもの。
高橋: 面白かったよね。いや本当にさ、おばさんて言うか、「三姉妹」って思ったのは、僕は一応みんなの読者だからさ、読んでたらやっぱり「兄弟」とかね「姉妹」に近いなにかを感じて、それが3人来てもらって、番組でやったら、本当にさ、法事に集まったみたいで(笑)。
伊藤: ホントそんな感じ!
礒野: ナイスな設定でしたよね。
高橋: たぶんもっと前だったら、親が生きている時だったらけんかして会わなかったりとかさ、きょうだいもまだ若いと、いろいろ問題あったけど、もうだいぶ時も経って親も死んじゃったし、そろそろ「和解の季節」(笑)。
鈴木: でもやっぱり長女の伯母さん(上野千鶴子さん)は恐いっていうか(笑)。
高橋: あははは(笑)。
伊藤: あははは(笑)。
鈴木: 「なんで小説なんて書くんですか?」みたいな、ツメられたんですけど…。
高橋: 恐かったね。ツメられたね~(笑)。
伊藤: あ~、でもそれ私も聞きた~い!
鈴木: あっホントですか。ちなみに、たまたまちょっと別の用事があってメールを、編集者さんと一緒ですけど、していたんですよ、上野さんと。で、ちょうどあの選考会の次の日だったんで、「芥川賞がもらえなかったので」みたいなことを書いたら、「私はニュースを見て胸をなで下ろしました」っていう…。
高橋: あははは(笑)。どういうことだろう。
伊藤: 伯母さん、恐いよね(笑)。
高橋: 恐いよね(笑)。
鈴木: だから、たぶん「ちゃんと考えなさい」ということだと思うんですけど、なんで小説を書くのかみたいなものを。
高橋: 言われてると思うけど、そんなこと言う必要もないんだけどさ。やっぱり聞かれちゃうよね。「なんで書くのか」。
伊藤: なんで小説書くの?
高橋: でもさ「なんで詩を書く」とか、聞かれないよね?
伊藤: あっ、聞かれない。小説ってやっぱりさ、お金につながるから聞かれるんですかね?
高橋: 詩はねぇ…。
伊藤: 趣味だからね(笑)。
高橋: あははは(笑)。鈴木さんは、あの~まぁ別に対外的な理由でもいいんだけど、もう2つ書いたでしょ。
それで僕なんか同業者のもの読むの好きで、さっきの見方も、「ここはこう書いてるな」とか。
鈴木: あはは(笑)。

鈴木さんの最新作『グレイスレス(第168回芥川賞候補作)』について

礒野: 「見方」どうでした?(1コマ目「ヒミツの本棚」での読み解きについて)
高橋: 失礼はなかった?
鈴木: いやいや。すごい感動してしまいました。私が自分で書いた文でも、分析もすごいありがたいんですけど、読んでいただくとなんか、私の文に1つまた別の解釈が加わっている感じになって…。
伊藤: へぇ~!
鈴木: なんか不思議な感じです。
伊藤: 書く時に自分で読むんですか?
鈴木: 私、割とあの「ゲラ(ゲラ刷り)」は声出して読みますね。じゃないと、なんかこう何回も黙読してると、なんか変でも気付かない気がして。
伊藤: それじゃあ、人(自分以外の人)が読んで気持ち悪くない?
鈴木: いや…(笑)。
伊藤: 源一郎さんでも。だって自分が書いたのと違う感じで、どっかは読んでる訳でしょ?
鈴木: あぁでもなんか逆に、割と好きです。人に読んでもらうの。
伊藤: 小説家っていうのはアレですね、心が広いですね。
高橋: あぁ、詩は違うの?
伊藤: なんか私は気持ち悪くって。
高橋: 読まれるのが?
伊藤: そう。自分でも読まないし、人の詩は。
鈴木: でも詩のほうが朗読されやすいですよね?
伊藤: それは私たちはね、朗読してやる芸だから。えっ、あの、学生の頃から小説は書いてました?
鈴木: 大学生の時には書いてました。
伊藤: 書いてたんだ…。書いてたんだ!
高橋: それ、どんなんだったの?
伊藤: どんなの?
鈴木: それはでもすっごい地味な、あの~、なんて言うんだろうな。そんなになにも起こらない感じの…。
高橋: 淡々とした?
鈴木: 淡々とした。
伊藤: へえ。
鈴木: なんか「ゾラ(フランスの小説家 エミール・ゾラ)」とか、そういう感じの(笑)。
伊藤: ゾラ!?
高橋: ゾラ!
伊藤: ゾラ、怒るじゃん(笑)。
鈴木: なんて言うんだろう。そういうの書いてて、私、福田和也さんっていう先生で。前にちょっと源一郎さんには言ったかもしれないんですけど、先生が「君は優秀だけど、頭で批評を書いて、なんか感情で、感性で小説を書いてるけど、逆にしたほうがいいよ」とかって言われて。
高橋: そう。あいつにしてはいいこと言うじゃん(笑)。
鈴木: それで、なるほどって思ったんだけど「それがどういうことなのか」みたいなのを、割と考えながら、新聞記者になって、そのあと。で、そのあと普通にライターというか文筆業をしていて、エッセーとかが多かったんですけど、「先生が言ったのはこういうことだろうか」っていうことを考えることがあって、それで再開した感じです。
高橋: 頼まれたからでしょう?
鈴木: それもありますね。結構、割と『「AV女優」の社会学』とか、『身体を売ったらサヨウナラ』って、もう8年とか9年前の本を出したときに頼まれて、ずっと出してなかったんですよね。書いてもあまりなかったんですよ。「なにか書きます!」とかは言ってたけど、「いつか」みたいな感じだったので(笑)。
高橋: 2つ書いたじゃない。2つ作品を完成させて、ある程度評価も受けて、いまの感想はどうですか?
なかなかやるな、俺とかさ(笑)。
鈴木: あははは(笑)。1コ書くのは、書きだしてからっていうよりは書き出すまで、すごい時間かったんですけど、1コ書くとやっぱりその、こぼれたところを早く書きたいから、次に書き出すのはすごい早かったですね。
高橋: う~ん。
伊藤: う~ん。
鈴木: で、いま、また書きたいかも。
高橋: 書きたい感じでしょ!

小説とエッセーはどう違うの?

伊藤: 小説って何ですか?
高橋: ふふふ(笑)。伊藤さんも書いてたじゃない。
伊藤: え? なにを?(笑)。
高橋: 賞もらってるし、あなた。
伊藤: でも「芥川賞」落ちたし。
高橋・
鈴木:
あははは(笑)。
伊藤: 小説ってどういう意識で書くの? エッセーとどう違うの?
鈴木: う~んと~、それはなんか、え~と、エッセーはホントじゃないことも書くけど、でもなんか私の一応言葉として書くっていうのが、1つ大きいのかな? 私にとってはですけど、作ってるかどうかは別として、一応「私っていうのは私を指すみたいな」。
礒野: 鈴木さん主体で、ってことですよね? 視点が。
鈴木: そうです、はい。あとは一応この世界の出来事…。この、ある世界の出来事を書いてる意識があって、小説は一応「別の世界を作ってる感じ」。
高橋: 別世界ね。
鈴木: うん。
伊藤: なるほど。
高橋: それ、楽しい?
伊藤: 私もいま、それを聞きたかったの。
鈴木: これ楽しいです。
伊藤: 別の世界の出来事を作るのが楽しい?
高橋: 楽しいよね。
鈴木: というか「世界をまず作る感じ」じゃないですか? エッセーで例えば私が育った家とかについて書くこともできるけど、一応それは「この吸ってる空気を共有してる」ものなんですよ。その文章の中に立ち上がるのも。
高橋: でもだから、楽しいでしょ?!
鈴木: 楽しい。
伊藤: 楽しいんだ!
高橋: 伊藤さんは、楽しくなかったんだよね?
伊藤: 私? なんかねぇ(笑)。窮屈で。
高橋: 詩を書くのは楽しいんだよね?
伊藤: うん。でも、いま私が書いてるのは、もうちょっとはっきり言って、詩と言えないようなものでしょ。
高橋: え? なに書いてるの?
伊藤: わかんない。だから大きな意味では、小説の方がたぶん懐が深いので、そこに入ってるような気がするんですけど、でも小説って言えるのかなっていうところもあるし、おそらく小説の人たちは「こんなもん小説じゃねぇ」って言ってると思うし。
高橋: いやいや、なんでも小説ですよ。
伊藤: でしょ?! でも思われてないし。だから、わかんな~い。
高橋: 鈴木さんさぁ、さっき1つ目書いた時に、次書きた~いって言ってたじゃん。
鈴木: うん。
高橋: もう、次書きたい?
鈴木: そうですね。はい、なんか、すごく筆が早い日も遅い日もあるんですけど、書くのは楽しいので。「書き続けたい」っていう感じですかね。
伊藤: それってやっぱり「フィクション」にするわけでしょ? フィクションにして入っていくと「エッセーを書くよりももっと遠くに行ける?」。あるいは「自分は気が付かなかったなにかが出てくる?」。
高橋: いや、楽しいんだよ! この世界、決まってないからね。
鈴木: うん。
高橋: なにも。エッセーだともう決まってんじゃん。
伊藤: でも…、あぁそうね。まぁそういう、もっと深いところに行けるような気がして。
鈴木: エッセーだと、あとなんか、うそ書きたくなっちゃうんですよね。
礒野: 逆にそうなんですか? 本当のことかと思いきや。
高橋: そう、そう、そう、そう。
礒野: あっ、比呂美さん、1コマ目お聴きになってどうでしたか?
伊藤: あ~、面白かったですよ。ただ、やっぱり同じことを考えた。「なんで小説を書くんだろう?」って。
礒野: へぇ~!
高橋: それはね~。
伊藤: つまり、この「形がすごく小説」なので、この形がね…。私なんかほら、小説は窮屈なのよ。だからね、窮屈じゃないのかなって思いながら。でもこれ若い人の小説を読んでたら、たいていそれは感じる。窮屈じゃないのかな? いまどき小説って書いてて、面白いのかなっていう。
高橋: でもね、たぶん窮屈になったら、そっからだよね?!
鈴木: う~ん! なるほど。
伊藤: おそらくね!
高橋: やっぱり「窮屈なんだ」って、途中で気が付くんだよ。自由に見えても。その時に初めて、どうしたら窮屈じゃなくなるかって考えたら、次の…。
鈴木: おもしろ~い!
伊藤: それをなんか助けるのが、私は言葉の力のような気がする。
高橋: そう、そう、そう、そう。
伊藤: 詩の言葉っていうかね。
高橋: そう、そう。ときどきね、詩に助けてもらうと。
伊藤: そうそう。それは詩をやってるとさ、どうしてもそう思うんだけど。

毎月恒例のコーナー「比呂美庵」。きょうは・・・?!

礒野: 源一郎さん、そろそろ。
高橋: そろそろ、え~と、なんだっけ? どこだっけ?
礒野: 恒例のコーナーにまいりましょう!
高橋: あ~、はい、はい、はい~。恒例のコーナーです! え~と、伊藤さんここは?
伊藤: ようこそ! 「比呂美・涼美」庵へ!!
高橋: あ~、やった~!(一同、拍手)
鈴木: わ~い!
高橋: 「比呂美・涼美庵」ね(笑)。似てるね、名前。
伊藤: 似てる。
礒野: どんなお便りでもご紹介する「比呂美・涼美庵」。
高橋: 比呂美・涼美庵(笑)。
礒野: 早速、お便りをご紹介していきま~す!
京都府にお住まいの「ラジオ大好き」さん。40代の女性です。
高校1年生、16歳の1人娘がいます。最近、気分の落ち込みが激しいことが多く、生活リズムが安定しません。娘は保育園時代から紙芝居や絵本などで戦争のお話が出てくるととても敏感に反応し、涙を流すような子どもでした。平和を願う気持ちが強く、ロシアのウクライナ侵攻以降、毎日ピースマークのネックレスを身につけています。そんな娘ですので、最近の世界情勢の緊張の高まりに、怖いという気持ちが強くなり、眠りにつけない夜もあるようです。以前、源一郎さんが「どうしたらいいか、わからない時は本を読むといい」と、おっしゃっていたと思うのですが、こんな娘になにかお勧め頂ける本があれば教えてください。
高橋: じゃあとりあえず僕からいきます。えっと最近、娘と母親だと、全部、鈴木さんを思い出す(笑)。
伊藤: あははははは(笑)。
高橋: お母さんなら、なんて言っただろうってさ。「自分で本を選びなさい」って言ったかなとかさ。
鈴木: あ~。
高橋: 正直言ってね、どんな本でもいいんですよ。つまり、このお嬢さんは、すごくセンシティブ。感受性が豊かで、外界に反応しちゃってんだよね。で、落ち着くためには、なんか一旦、言葉を読んで落ち着くのがいいと思います。だから正直言ってなんでもいいんですが、せっかくいま戦争っていう言葉に特に傷ついてるっていうか、震えているなら『ぼくらの戦争なんだぜ』っていう本を出して、その時にも書きましたがね、あのまぁ「太宰治っていう作家は、生涯ずっと戦争中だった」って。それはね今回初めて本に書きましたけど、デビュー作から、1948年に亡くなるんですけど、ほとんど全部…。娘さん怖がってるけど、太宰って人は、ずっと怖い状況の中で、子どももいたしね。だから太宰治の作品をなにか、まぁ戦争が出ているものでもいいし、出てなくても戦争中に書いてるんで、このおじさんは、お父さんより若いね、たぶんね。このおじさんは戦争中にこんなことを書いて、子どもたち…。あっ、子どもたちに書いたものもあるね。『お伽草紙』とかね。だから、そういうのを読むと、これはこの戦争中に、子どもたちに「怖がらないように」って書いたもんだよっていうので、太宰治なんかいいかなぁというふうに思います。まぁなんでもいいですけどね。
伊藤: 涼美さんは?
鈴木: 私がまずこれ聞いた時、この娘さんすごい感度高くないですか? けっこうひと事っていうか、バーチャルにしか見えなかったり、冷笑的になったり。“いや、必要だから”みたいになっちゃう若者も。割と刺激に慣れてるから、でもだから戦争で心が乱れちゃう感性は無くさないでほしいなって思ったんです。
高橋: いやホント。16歳ね。高1。
鈴木: お勧めっていうか、私はだから「戦争が関係あって明るいもの」がいいなと思って。
伊藤: 例えば?
鈴木: 井上ひさしさんの『一週間』っていう、割と…。
高橋: 短編?
鈴木: いや…。
高橋: 長編なんだ。
鈴木: けっこう長いですけど、分厚い、新潮文庫だと1冊にはなってるやつで。あの人のは笑えるから、けっこう止まらず読めるんですよ。で、なんか気持ちは明るくなります。扱ってるのはけっこう戦争中の「シベリア抑留」みたいな話なんですけど。たった1週間のことを、こんな分厚い本に書いてる…。
礒野: へぇ~! 『一週間』、井上ひさしさん。
伊藤: はい!(挙手)
高橋: 手を挙げなくても、次は君の番だから(笑)。
伊藤: これさ(相談メール)、だって、だいぶ前にきたでしょ。ずっと気になってたの。
礒野: ちょっと数か月ね、前にいただいたお便りだったんすけどね。
高橋: ぜひ応えようと!
伊藤: 私は、私は、お勧めは『鋼の錬金術師』です。
高橋: あ~!
伊藤: すいません。漫画になりました。そしてね、そう思ってたら、このあいだ源一郎さんが話題に出した、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ね。
高橋: うん、うん。あれね!
伊藤: 私、アニメで観たんですけど、あれ、むっちゃお勧めなんですよね。
高橋: あれはいいね~!
伊藤: それ考えたら、もう1つお勧めしたいのが『SPY×FAMILY』。
一同: あ~~~!
伊藤: それね、なぜかって言うと、この3つに共通しているのは、「戦後の話」なんですよ。
高橋: あ~。
伊藤: 「戦争のあとに、どうやってトラウマを抱えたものを、どうやって生きていくのか」って話なのね。
だって私、本当にずっとこの人のこと考えて、この16歳のことをずっと考えてたの。ここのところ。
高橋: “ひとごと” とはと思えなかったよね。
伊藤: 本当に、うちの娘もこんな子だったし、うちの孫もこんな子だし。あぁなんか『ハガレン』を読ませてあげたいなとか、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』観てて、あぁこれはあの子に観せてあげたいなと思ってました。
礒野: だそうです。「ラジオ大好き」さん、よろしいでしょうか? たくさんヒントを頂きました。
伊藤: なんでね、いまね、こうやって日本のマンガって、戦後。「戦争後」のアニメが多いんですか?
高橋: 多いよね。
伊藤: 多いよね。
高橋: 無意識じゃない?
伊藤: “なんのあと” なの?
高橋: なんか「戦争が近い」か…。「戦後感」があるのか? 戦争が迫ってるのか?「戦争の影」みたいなものが…。
伊藤: 「戦争っていうのが、なにかのトラウマの代わりになっている」と思うの、私は。
高橋: あ~、なるほどね。
伊藤: それで日本の文化っていうのが「戦後」っていうのにロックオン…。でもこれって「第二次世界大戦」じゃないじゃない?
高橋: ないね。
伊藤: だから「架空の戦争」なんですよね。
高橋: そうそう。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』いいよね。
鈴木: 『風の谷のナウシカ』とかも。
高橋: あ~! そうだ~!!
伊藤: 私もそれ考えてた。忘れてた、言うの。そうだ、そうだ! あれは戦争中から戦後にかけてだもんね。
鈴木: そう! なんか『火の7日間戦争』みたいなのがあって、めちゃくちゃになっちゃった世界の話ですよね。
伊藤: ね! 最後はもう「戦後」。
高橋: そうだ、僕、この前『ぼくらの戦争なんだぜ』で書けなかったんだけどさ、要するに「戦後文学」って、偉い人がいっぱいいたじゃない。
伊藤: うん。
高橋: でも本当に戦後文学っていうのは、そういう『ナウシカ』とかさ、あちらのほうが説得力があるような気がするんだよね。
伊藤: そうね~。でも『ナウシカ』は80年代か、90年代でしょ。『鋼の錬金術師』は2000年代、あとの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が…。
高橋: 2010年代。
鈴木: まさにいま。
伊藤: いまだよね~。なんか、ずっと続いてるわよね。
礒野: 比呂美さん、どうしましょう? コーナーの残りがあと1分ほどなんですけど…。いっちゃいます?
高橋: じゃあ、相談だけ読んで。
礒野: いきましょう。
「プリプリ」さんからいただきました。
夫と私は20代後半に海外を旅していた時に出会いました。自由でおおらかなところにひかれましたが、子どもが生まれると、頼りない無責任と、長所が短所に感じられるようになりました。彼は物書きになりたいとずっと言っていて応援してるんですが、すぐ仕事を辞めてしまいます。仕事しながらでは書けないと。お互いに自立するためには私が子どもを連れて出ていくしかないと思ってます。でも生活のための仕事と好きなことを両立できるだろうかという、腹を立てた同じポイントで悩んでいる。

ということなんです。
高橋: はい。
礒野: どうしましょう。
高橋: 子どもを連れて、出てってください。
伊藤: え?
高橋: 駄目ですよ、一緒にいたら。この人は。
伊藤: それ、自分の経験から言ってる?
高橋: だから、いまのままでは、夫も全力を出せない。
伊藤: なるほど。
高橋: 1回、全力を出させてやるために、1回別れてあげたほうが、全力を出せる。だって全力出す気なくなっちゃっうんだもん。いまは言い訳できるから。
伊藤: 同じような形で、離婚した?
高橋: 僕のことは関係ない(笑)。
礒野: 比呂美さんはどうですか?
伊藤: 私はそういう形では離婚しませんよ。
高橋: 別にそんなことは聞いてないけど(笑)。
礒野: 応援したほうがいい、支えてあげたほうがいいってことですか?
伊藤: この人ね、やっぱり離婚したほうがいいんじゃない?
高橋: ほら!
伊藤: うん。
鈴木: 私は仕事しながらのほうが書けると思います。
高橋: あ~、そうか、偉い。いやでもね、この人は無理だと思う。
鈴木: そうかな~?
伊藤: でもず~っとイライライライラして、一緒に暮らしてるよりは、まだ若いから。あっ、若くない!
礒野: 50代ですね。
伊藤: 20代後半に会ってるんだ。
高橋: そうそう。いま50代だもん。
伊藤: なるほどね。
鈴木: じゃあ、かなり一緒に。
高橋: そうそう。もうだから無理だよね~。
礒野: ということで、「離婚して、出て行ったらどうか」っていうのが今のところ多数になっておりますが…。
高橋: ちょっと試してみてください。
礒野: 残り15秒ほどになりました。伊藤比呂美さん、鈴木涼美さん、ありがとうございました~!
伊藤: ありがとうございました。
鈴木: ありがとうございます~。
高橋: ありがとうございました!

【放送】
2023/01/27 高橋源一郎の飛ぶ教室 「きょうのセンセイ」

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23/02/03まで

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