「映像の世紀バタフライエフェクト」をラジオで語り尽くせ!

映像の世紀を語るラジオ

放送日:2023/12/29

#インタビュー

総合テレビで毎週月曜日夜10時から放送中の「映像の世紀バタフライエフェクト」がラジオに登場! 番組ファンの2人とプロデューサーが、過去に放送した回から特におすすめのエピソードをイチオシ。その見どころや印象的なシーンを語り尽くしました。見て、誰かと話すことで理解がより深まる「映像の世紀バタフライエフェクト」。一羽の蝶の羽ばたきが嵐を起こすかのように、あなたの心にも“バタフライエフェクト”が起こるかも!?

【出演者】
東野幸治さん(芸人)

ちきりんさん(社会派ブロガー)

寺園慎一(番組プロデューサー)

「映像の世紀バタフライエフェクト」とは
1995年に放送を開始した「映像の世紀」の新シリーズ。蝶の羽ばたきのような、ひとりひとりのささやかな営みが、いかに連鎖し、世界を動かしていくのか? 世界各国から収集した貴重なアーカイブス映像をもとに、人類の歴史に秘められた壮大なバタフライエフェクトの世界をお届けするドキュメンタリー番組。

映像の世紀バタフライエフェクト

総合 毎週月曜 午後10時ほか

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三人三様 「映像の世紀」への思い

左から、ちきりんさん、東野幸治さん、寺園慎一プロデューサー

ちきりんさん:
この番組の初期に、映像が最初に記録したのが戦争だったっていう話が出てくるんですけど、これが私にはとても印象に残って。例えば、美術館にある昔の戦争の絵はどれもすごい美化されていて、日本軍もそうですけど、従軍の絵描きさんが記録していた時代って嘘ばかり描けるわけですよ。だけど、映像になるとごまかしがきかない。どんな悲惨な戦場もそのまま記録される。その意味では、1900年から2000年ぐらいの100年に映像が出てきたことの意味ってものすごい大きいなと思ったんですね。
一方で、これが100年しか続かないっていうのもすごく面白いと思って、今からって家でフェイク映像がいくらでも作れるものになりますからね。

東野さん:
もうすでに始まっていますもんね。

ちきりんさん:
そうなんです。そうすると、映像を素直に信じれば歴史がわかった時代って、100年しか存在してないんですよ。なので、この100年の貴重さっていうのが番組タイトルに込められているのが、私はすごい感動しているんですよね。

東野さん:
めちゃめちゃええコメントですよ(笑)。
僕の場合は、この番組には、この映像をどこで見つけてきたっていうのがものすごいたくさんあって、例えば動画サイトに最初に投稿された映像とか、ちょっと残酷なんですがナチス・ドイツのアウシュビッツ収容所でユダヤの人がたくさん亡くなられている映像も、映像の力というか。そういうエンターテインメントから歴史の事実みたいな、ありとあらゆる世界中の映像を集めてきてくれるっていう。それを見て気になったり、面白かったりすると、民放テレビ局でこの番組の話をよくしていました。

寺園プロデューサー:
今回のシリーズに「バタフライエフェクト」とつけたのは、きっかけとなる出来事が1つあって。それは皆さんの記憶の端っこにあるかもしれないんですけども、JRの新大久保駅で山手線の線路上に人が落ちたのを韓国人留学生が助けようとしていて、結局助けられなくて電車に轢(ひ)かれて亡くなっているんですね。

東野さん:
ありましたね。

寺園プロデューサー:
それが2001年1月26日なんですけども、それから6年後のちょうど同じ1月26日に、その亡くなった韓国人留学生の本を数日前に読んだ人が、今度は上野駅で人が線路に落ちた時に飛び込んで助けたんです。その話はすごいなと思っていてね。つまり、その2人にはまったく人間関係がないんですが、2001年1月に亡くなった人は自分の思いは果たせなかったけれども、その意志というのが6年後に巡り巡って誰かの気持ちに残って、それで彼の勇気を後押しして人を助けるという。本当に一人のささやかな勇気が、時に世界を変えることがあるという典型的な例ですよね。そういう話を是非作っていきたいなと思ったんです。
もちろんそれは勇気だけじゃなくて、ネガティブなことありますよね。罪もありますけど、やっぱり歴史っていうのはそういういろんな連鎖で動いている。そういう積み重ね、連鎖ということを大事にして、「バタフライエフェクト」というキーワードで番組を作りたかったんです。

寺園プロデューサーイチオシ「モハメド・アリ 勇気の連鎖」

寺園慎一プロデューサー

寺園プロデューサー:
これはモハメド・アリという偉大なボクサー、ヘビー級のチャンピオンですね。その彼がボクサーを志したのが、12歳の時に大事な自転車を盗まれたというところから始まるんです、番組が。それで盗んだやつをぶちのめしてやると、当時は本名のカシアス・クレイが警官にそう訴えた。その警官は偶然、ボクシングのジムのトレーナーだったんですよ。それで「お前、人をぶん殴るんじゃなくて、その怒りをボクシングにぶつけないか」ということで、彼はボクシングを始めて、すぐにローマオリンピックでヘビー級のチャンピオンになって。その後、無敵のアリだったんですけど、彼がひとつつまずくというか大きな転機になったのが、ベトナム戦争の徴兵に反対して、徴兵を拒否して、それでボクシングのライセンスもチャンピオンのタイトルも剥奪されたんです。が、彼がそこで、そのベトナム反戦運動、若者達の反戦運動に火を付けていく。かつ、アリの勇気に、ハワイにその時いたオバマ少年がですね…

東野さん:
そうなんですよ。覚えてますよ、アリの写真。

寺園プロデューサー:
そう、オバマの執務室にはアリの写真を掲げてあるんですね。さらにアリのその勇気というのが、メキシコオリンピックで皆さん記憶あるかもしれないんですけど、ブラックパワー・サリュートという黒人差別に反対する動きがあって、どんどんどんどんアリが始めたことが世界に広がっていくというのが見事なバタフライエフェクトだなということで、これを選びました。

ちきりんさん:
モハメド・アリさんって、もちろん名前は存じ上げているんですけど、私のイメージではすごい強かったプロボクサーっていうイメージしかなくて。アスリートとしては一流だけれども、世の中とか社会とか政治とかにどういう影響を与えた方なのかって全然知らなかったんですよね。それがベトナム反戦に一石を投じたとか、将来のオバマ大統領に繋がったとかそういうのを聞くと、本当に「連鎖」っておっしゃっていたのがすごくよくわかるって感じがしますよね。

東野さん:
一人のスポーツ選手だけの話じゃないですもんね。

寺園プロデューサー:
だから、「差別はダメですよ」とか「戦争はダメですよ」と口で言うよりも、そういうアスリートが言うからこそ、行動するからこそ、やっぱり人の心に届くっていう部分がすごくあると思うんですね。運動ではなくて、彼自身が身を持って怒ったり、黒人差別に抗議したり、ベトナム戦争に反対したり、そういう勇気みたいなところが、彼だからこそ伝わったというものというのがきっとあったんだと思うんですよね。

社会派ブロガー・ちきりんさんイチオシ「砂漠の英雄と100年の悲劇」

ちきりんさん

ちきりんさん:
タイミング的にみんな、今これを見るべきだろうという意味も含めて、パレスチナとイスラエルの問題の根源を扱ったこのエピソードを選びました。
そもそもあそこにはパレスチナ人とかユダヤ人とかいろんな人が、国っていうものではなくて地域に住んでいたっていうところに、イギリスがオスマントルコというイスラム圏を倒したいという裏の心とか、あのあたりに石油が出るってこともわかっていましたし、その利権も取りに行きたい。第1次世界大戦の時に、戦争に勝つためにはユダヤ人のお金も必要。アラブ人に戦争協力してもらうことも必要というので、両方に「お前たちの国を作っていいよ」という約束をしたという、その二枚舌のところから、実際には戦争が終わった後、ユダヤ国家=イスラエルだけ建国されて、アラブ国家建国は放置されてしまった。そこから、どっちの領土なんだっていう問題が始まって、戦争の連鎖が今も止まらないという問題なんですね。
で、最初の「砂漠の英雄」っていうのは、恐らくロレンスっていうイギリスの将校の話だと思うんですけど。

東野さん:
アラビアのロレンス。映画とかにもなった人物ですよね。
こんな話になるとは思わなかったんですけど…

ちきりんさん:
私も、このロレンスの話ぐらいしか知らなかったんですけど、その後に例えばアインシュタインさんが出てきてこんな言葉を言っていたんだとか、アラファト…当時の議長が出てきて、我々はナチスの行いの対価を支払わされているっていうように言われていて、結局イスラエルがパレスチナからのテロにものすごく反発するのは、やっぱりホロコーストの記憶があるからだ。でも、それってパレスチナの人が悪かったわけじゃなくて、ドイツのせいでしょう。確かにそう言われればそうだなと、そのイギリスの責任とかドイツの責任とか、先進国がこの問題の解決にもっと積極的に乗り出さなければいけないのを放置していることの罪っていうのがすごくわかる番組になっていて、そこがやっぱりもう一度今見てほしいなと思ったところでもあるんですよね。

東野さん:
これはロレンスがスパイであったっていうこと…

寺園プロデューサー:
ロレンスがイギリスの情報将校として、アラブをだます訳ですね。結果として、彼はそれで良心の呵責(かしゃく)にずっと苦しみ続けるという。

ちきりんさん:
「私のやったことで誇れることはひとつもない」っていうようにロレンスさんは振り返っていらして、まぁ映画だとすごくヒーローですけど、個人としては、特に今の状況をご覧になったら本当にがっかりされるだろうなっていうようには思いますよね。

寺園プロデューサー:
ちきりんさんがおっしゃってくれたように、今の世界の背景を読み解く上ではすごく参考になる番組だと思うんです。ロレンスのいろんな苦しみっていうのを見ていくことで、中東を語るということがすごくいい切り口だったかなというふうに思いますね。

東野さん:
だから本当に「100年の悲劇」、イスラエル、パレスチナ、それ以外にもいろんな悲劇があって、アフリカもあんなきれいな定規みたいな線で国境を引かれたりとかして、さまざまな思いがあるってことでしょう。

ちきりんさん:
先進国の責任は本当に大きいと思いますし、同時に今、ものすごく多くのアラブ人がイスラエルであったり、それをサポートしているアメリカに対しても、自分の絶望の人生というものに対する憎しみをものすごい増幅させてるプロセスが今も続いていて、誰か止めないと100年の悲劇は200年の悲劇になっちゃうなっていう、本当に悲しい思いがしますよね。

東野幸治さんイチオシ「ハリウッド 夢と狂気の映画の都」

東野幸治さん

東野さん:
番組プロデューサーを前にこれを話すのはすごく恥ずかしいんですけども、めちゃくちゃ面白いというか、怖いというか、えっ、こういうことだったのっていう発見がたくさんありました。

寺園プロデューサー:
どのあたりですか?

東野さん:
まずエジソンが関係あるのかと。ハリウッドにエジソンが関係あるってことと、ホンマにプロデューサーって大体悪いやつやねんなっていう(笑)。
どういうエピソードかと言いますと、20世紀初頭の発明王・エジソンに高額な特許料を求められた映画人たちが自由に映画を作るために田舎に大挙して引っ越す。その引っ越したところがハリウッドだったっていう。これもまったく知らなかったんですけど。
そこで第1次世界大戦を経て、世界最大の映画の都にどんどんどんどんなっていく。で、みんなが楽しそうにやっているけれど、実は裏ではこんな悪いこと、こんなむごいこと、こんなつらいことがあったっていうのを知らされる。
ある子役、女優さんなんですけど、当時、時の人で人気者だったけれども、彼女自身も「私は小さくてかわいいから人気があるから、大きくなってはいけない」と。なおかつ映画プロデューサーとか映画会社が、よくわからないですけど、彼女に覚醒剤のような何か飲み物を与えて、ご飯もあんま食べずにダイエットさせる。で、次から次へと若い、かわいい女の子が来る。自分はどんどんどんどん追われる。精神も不安定になる。で、とある映画のNGシーンですごく怒りをぶつけてるようなシーンがあって。
一方でスターシステムっていう、権力がある方が気に入った女の子をいかようにもスターにできるっていう。
それは恥ずかしい話じゃなくて、僕はこんなに力があるんだよっていうような証言があったりして、いや、ハリウッド恐ろしいなとか…。日本はそうじゃないかもわからないけれど、去年あたりから芸能界の問題もあったし、そういう意味で本当に深刻に見させていただきました。

ちきりんさん:
結構怖かったです。めちゃくちゃ怖かったけど、ここまであからさまにしていいのかって。

東野さん:
これ、日本に置き換えて、若干かぶってるというか。あるスターがいるプロダクションがあって、そのプロダクションもやっぱりずっと儲(もう)けていかなあかんから、スターがいる間に次のスターを見つけなきゃいけないんですよ。上手に競演したりしながら、その次のスターの方がどんどんどんどん人気になってスターのバトンタッチをして、スターになったら次、また次のスターの予備軍を作っていくっていうのは、日本でも全然ない話ではないなって。

ちきりんさん:
ハリウッドに凝縮してるように見えるけど、多分世界中、芸能界って一緒なのかなっていう感じもしました。

東野さん:
しましたでしょう。

ちきりんさん:
あと、あまりにも競争が激しいっていうのは、こういう状況になるんだなって思いまして。今、人気者だけれども、明日には忘れられてしまうかもしれないっていう極度の不安の中でみんな戦っているから、それを少しでも自分を安心させるために薬を飲む、過激なダイエットをする、パワハラとかセクハラを受け入れるみたいな。いや、普通はそういうことをしちゃいけないよねってことが、もうどんどんどんどんみんなやってるじゃないみたいな話になっていくっていう。怖かったですね。

あなたにも「バタフライエフェクト」を起こしたい…

寺園慎一プロデューサー

寺園プロデューサー:
45分の番組の中でできることって本当に限られているんですね。だから、ストーリーを省略しながら、ある部分単純化しながら語っているところもある。でも、間違いがないように歴史を伝えていきたいとは思うんです。だから、この番組がすべてだと思わないでほしい。ここから興味を持って、どんどん自分で勉強していくことが、本当にこの番組が、まさに皆さんの中にバタフライエフェクトを起こしていきたいなということなんです。興味を持って歴史の入口に来てくれるっていうのが一番大事なことかなと思っています。

東野さん:
何か見て、人に言いたくなる番組ですからね。

ちきりんさん:
見るだけじゃなくて、同じ番組を見た人といろいろ語り合いたいという気持ちがすごく高まる番組だなと思いました。終わった後にみんなでお茶飲みながら、そういう機会をぜひ作っていきたいなっていう気分になりましたね。


【放送】
2023/12/29 「映像の世紀を語るラジオ」

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