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【10月1日放送】ジャーナル特集「ザリガニ駆除に新機軸?」

番組スタッフ

投稿日時:10月 6日 (土) 午前10時25分

NHKジャーナル

山田キャスター:
ジャーナル特集です。今日は外来種の駆除について考えます。
ウチダザリガニをみなさん、ご存知でしょうか。もともと国内にはいなかった外来種で、二ホンザリガニや日本固有の水生生物の生息に脅威を与えています。

菅野キャスター:
スタジオには取材にあたった国際放送局の姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクターがいます。
ヤオさん、外来種というとアメリカザリガニが有名ですが、ウチダザリガニも外来種なんですね?

姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクター:
はい、アメリカザリガニも同じ外来種なんですが、ウチダザリガニは特定外来生物に指定されていて、飼育や運搬などが原則として禁止されています。北海道を中心に、長年、地元では駆除に手を焼いてきました。
しかし最近、思わぬところでこのウチダザリガニが注目を集めています。
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北海道東部の観光地、阿寒湖は、マリモが生息することでも知られていますが、実は大量のウチダザリガニが住み着いています。

北米原産のウチダザリガニは、アメリカザリガニよりもやや大型で尻尾から頭の先までの長さが20cmにまで成長する個体も多くいます。小さい頃は在来種の二ホンザリガニによく似ていますが、ハサミに白い斑点があるのが特徴です。

フランス料理では高級食材として扱われていることもあり、1920年代に北米の原産地から、食用目的で日本各地の水産試験場に持ち込まれました。しかし、ザリガニの食用は日本では根付かなかったため、その後ウチダザリガニの存在は忘れられていました。

低い水温を好むウチダザリガニは、その後北海道を中心に、各地の川や湖に分布を広げました。国立環境研究所によると、北海道のほか少なくとも福島、滋賀、長野、千葉、栃木で生息が確認されています。阿寒湖では、増えすぎたウチダザリガニが国の特別天然記念物のマリモを食い荒らすと報告されています。

2006年に特定外来生物に指定されたウチダザリガニは、駆除の対象となりました。例えば、北海道では捕獲したウチダザリガニを冷凍し、砕いて農作物の肥料にしていました。

しかし阿寒湖では、ウチダザリガニ漁が行われており、最近その出荷量が増えています。

漁は毎年5月から11月まで行われます。湖の約50カ所に仕掛けた特殊な籠を一人の漁師が一日かけて引き揚げます。ロープをたぐり寄せて籠を上げると、ウチダザリガニが次々と姿を現します。水温が高くウチダザリガニの動きが活発な7、8月は1日100キロ近く水揚げされるといいます。

地元の漁協では捕獲したウチダザリガニをすぐに生け簀に移し、注文に応じて出荷します。最近、思わぬところから多くの注文が舞い込むようになりました。

阿寒湖漁業協同組合販売加工課長 中井祐一さん :
「中華なぜ広まったのかな。なぜか注文来るんだよね、中華さんから。」

今年のウチダザリガニの出荷量は、去年の同じ時期より5割ほど増え、月間で800キロに達しています。注文の多くは、東京の中国料理店からだといいます。

中国人が多く集まる東京の池袋駅周辺では、本場の味を提供する中国料理店が軒を連ねています。最近、中国で大人気のザリガニ料理を出す店が増えました。

この店では、阿寒湖から毎月40キロほど、ウチダザリガニを仕入れています。唐辛子などの香辛料で一気に炒めるザリガニ料理は中国人の大好物。特に水の澄んだ湖に生息するウチダザリガニは泥臭さもなく、非常に美味しいと評判が広がっています。

お客さん:
「ハウチー?」「ハウチー!(おいしい)」「美味しい(日本語)」

店長フェイさん(男性、中国語) :
「阿寒湖のウチダザリガニは味が新鮮です。去年と比べて、今年ザリガニ料理は倍以上売れています。今週だけでも20キロも売れました。」

店長のフェイさんによると、最近はザリガニ料理を食べにくる日本人客も増えています。しかしこの人気を行政側は複雑な思いで見つめています。

環境省外来生物対策室 北橋義明室長: 
「駆除したものを食べる、売るという形であれば問題ないんですけど、それを持続可能な水産資源というような形で捉えられてしまうと、逆に今度は数が減ると商売として困ってしまうとかですね。あるいは他の湖に持って行って、新しい漁場をつくろうということになってしまうとそれはもう本末転倒な話で、そういったことにならないような注意が必要かな、と思っています。」

阿寒湖漁協は特定外来生物の指定より前に漁業権を取得したため現在もその権利が守られています。しかし特定外来生物に指定されて以降、ウチダザリガニの新たな漁業権は認められなくなりました。そうした規制のなかでウチダザリガニの美味さを駆除に活用しようという取り組みがあります。

ウチダザリガニが繁殖している福島県裏磐梯地区では、7年前から、毎年夏、複数回に渡ってウチダザリガニの釣り大会が開催されています。

「三匹目!」という子供

釣り上げたウチダザリガニをその場で調理することは法律にも違反しません。カレーや塩ゆでの料理にして参加者全員で味わいます。釣り、自然、食事を一度に楽しめるこのイベントは家族連れなどに人気となっています。

主催者の一人は、このイベントによる環境改善への手応えを感じているといいます。

裏磐梯エコツーリズム協会 長岡幸二さん :
「長く続けていくうちに、またホタルが飛び出したり、今まであまり姿を見なかった魚が池に帰ってきたりとか。ウチダザリガニを駆除していくことは環境を元の状態に戻してるんだなという実感ができました。」

味の良さで100年近く前に日本に持ち込まれたウチダザリガニ。その味の良さがやっと認められつつある今、必要としているのは食材としての人気を駆除に繋げる知恵かもしれません。
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菅野キャスター:
ウチダザリガニの味、気になりますね。ヤオさんは食べたんですか?

姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクター:
阿寒湖と池袋で食べましたが、肉がしっぽとハサミにたっぷり詰まっていて、カニに近い食感がしました。また頭には濃厚なみそがあり、とにかく美味しかったです。

山田キャスター:
しかし、その美味しさの認知度が高まっていくにつれ、万が一にも拡散するようなことがあっては困りますよね。順調に駆除が進むといいですね。
国際放送局の姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクターでした。

この日の放送を聴く [10月8日(月) 午後11:20配信終了]

姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクター

国際放送局
姚忻如(ヤオ・シンル)ディレクター

平成26年入局
出身:中国・成都
趣味:旅行、バイオリン、茶道

番組情報
NHKジャーナル番組HP
平日 午後10時00分~11時10分 生放送
キャスター:山田康弘、菅野真美恵
ニュースデスク : 岩本裕、森田智之