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【10月2日放送】ジャーナル地域発「こども園をいざという時の避難所に」

番組スタッフ

投稿日時:10月 3日 (水) 午後 8時46分

NHKジャーナル

全国各地のさまざまな話題をお伝えするジャーナル地域発。今回は岩手からです。
大きな災害が続くなか、重要なのが「避難所」です。
東日本大震災で、1286人が亡くなった岩手県大槌町では地域のこども園を、
いざというときの避難所として機能するように施設を建て替えました。
(報告:盛岡放送局・羽隅将一アナウンサー)


こども園が地域の避難所に

こども園の様子
「みさきちゃーん!こっちにお花が落ちてるー」

緑の芝生が広がる中庭に、園児の遊ぶ声が響きます。
幼稚園と保育園の機能を併せ持つ「つつみこども園」です。
海を見渡せる住宅地の高台にあり、社会福祉法人が運営している民間の施設です。
6つある保育室はすべて中庭に面しています。すぐに避難出来るような作りになっています。
ことし3月に建て替えた平屋建ての建物は、
中庭を、カタカナのコの字型に取り囲むように建っています。
東日本大震災の際、このこども園は、防災拠点としての備えはありませんでしたが、
急遽、地域の人々の避難先となりました。多いときには120人が身を寄せました。
園長の芳賀カンナさんです。

芳賀園長
「水が一番ないっていうのが大変でした。やっぱ今の時代は不衛生って言うのはストレスにもなるし。歯ブラシをするだとか。手を洗うっていうことがまず出来ないっていう状況ですよね。水はやっぱり作り出すことができない。水のありがたさっていうか必要性は強く感じました」

 

震災の経験をカタチに

今年3月に完成した新しい園は、総額3億2000万円をかけて建てられました。
そのうち、6割は国と町からの補助金で賄われました。
このこども園は、2年前に、町から福祉避難所に指定されました。
福祉避難所とは、大きな体育館などでの避難生活が長期化した場合、小さな子供や高齢者、妊婦など、いわゆる災害弱者といわれる人々が避難する施設です。
大槌町では、10の施設が福祉避難所に指定されています。
保育施設は2か所。つつみこども園はそのうちの1つです。
今回の建て替えにあたっては、震災の時に避難所として苦労した経験を「形」にしています。
最大で100人が避難してくることを想定して、様々な設備を備えました。
大きくは3つ。「水と電気、そして食料」です。
まずは水の確保。震災した時は断水がおよそ1カ月間続きました。
水道が止まっても水が確保できるよう新たに井戸を掘りました。
普段も園児たちの水遊びや芝生の水やりに使っています。

こども園の園児
「ジャジャー!冷たい!冷たい! うえー、あーあー」

井戸水は非常時には飲み水として使えるよう、年に1回、保健所が水質検査をしています。
また、受水タンクも設置しました。給水車が来た場合、直接、このタンクに入れてもらいます。
2000リットル、ドラム缶に換算すると10本分を貯水できます。
この量は、状況にもよりますが100人が1日に必要な水の量に相当します。
これだけの量が確保できると、料理や、洗濯、トイレ、歯磨き、体を洗うなどさまざまな事に使えます。
さらに電源設備も備えました。屋上には太陽光発電のパネルを設置。
発電量は10キロワットです。
この電気、普段はこんなところで使っています。

芳賀園長
「こっちが冷蔵庫です。(ひんやりとしてますよね)はい。この冷蔵庫は太陽光で動いている冷蔵庫です」

冷蔵庫以外では、園内の照明でも使用しています。
また、蓄電池も敷地内に用意しました。縦横2メートル。奥行きが3メートルあります。
いざというときは、日中は太陽光発電、夜は蓄電池でカバーすることで24時間電気を供給します。
そして食料です。

芳賀園長
「こちらが備蓄の食料が入っている倉庫です。大人100人分が2日間対応できるようにしているんです」

敷地内にある倉庫には、アルファ米80袋。ちなみに1袋でおにぎりが2個作れます。
エビピラフ・ドライカレーがそれぞれ50袋、豚汁セット30食などが収納されています。
こうした防災食は、9月の防災の日や、消費期限が近くなると、園児と職員が給食で食べます。
さらに今年度新たに入った7人の新人職員を対象に行った初動訓練では防災食のアルファ米でおにぎりを作る訓練を行いました。
普段使わないアルファ米でのおにぎり作りは水加減が難しいという職員もいたそうです。
新人の指導に当たった職員です。

こども園職員
「命を守るっていうことの重要さとか大切さっていうのを、少しでも言葉もですけど自分たちの態度を通しても、真剣さといいますか、伝えられるようにしています」

いま、こども園には14人の職員がいます。
ここでは毎月、火災、地震などの災害を想定した防災訓練を行っています。
毎回リーダーとなる職員を決め、通報係、マスコミ対応係、園児誘導係などの役割をかわるがわる経験してもらいます。

 

普段から地域の人との接点を持つ

さらに、地域の人にも避難設備を整えた園を身近に感じてほしいと考えています。
新しい園が完成した3月には、地域向けの見学会を行いました。
また年間を通してさまざまな行事に住民たちを招待しています。参加した近所のお年寄りです。

地域の人
「そばにあるというのは何よりですよ。安心してここに何日もいられるような感じになります」「とっても安心ですね。何かあった時は、ここにくれば」

東日本大震災から7年半が過ぎました。
こども園が、避難所としても地域の人たちの役に立ちたいと、園長の芳賀カンナさんは考えています。

芳賀園長
「地域の人の顔を知っている。地域の方にも、顔を覚えてもらっているとかっていうのがすごい大事だと思います。子供を預かる施設を拠点として、いろいろ貢献、災害だけではなくて、地域作りにも貢献できたらなと思っています。」

取材を通して、避難先がなじみのある場所であれば、スムーズに避難にすることができ、それが減災、防災につながるかもしれないと感じました。

この日の放送を聴く [10月9日(火) 午後11:20配信終了]

羽隅将一アナウンサー

盛岡放送局
羽隅将一アナウンサー

趣味:焚き火・キャンプ

番組情報
NHKジャーナル番組HP
平日 午後10時00分~11時10分 生放送
キャスター:山田康弘、菅野真美恵
ニュースデスク : 岩本裕、森田智之