NHKラジオブログ
ラジオの魅力をお伝えします

ブログトップ > 【9月18日放送】ジャーナル地域発「ふるさとに帰るかどうか 避難者の揺れる思い」

【9月18日放送】ジャーナル地域発「ふるさとに帰るかどうか 避難者の揺れる思い」

番組スタッフ

投稿日時:9月20日 (木) 午後 8時45分

NHKジャーナル

全国各地のさまざまな話題をお伝えするジャーナル地域発。
今回は茨城からです。
東京電力福島第一原発の事故から7年半がすぎました。
福島の自宅から避難を余儀なくされた人は、全国で4万4千人を超えています。
避難している人たちが入る仮設住宅の無償提供の終了の方針が、相次いで発表されるなか
ふるさとに戻るかどうかで揺れる避難者の思いとは・・・。
(報告:水戸放送局・大野済也アナウンサー)


ふるさとに帰還するかどうか決断迫られる避難者

内堀福島県知事:
「今後の生活再建の見通しを早い段階から立てていただくためにも、今回の終了時期をこうした形で進めていくことが重要という判断に至った」

先月27日に行われた、福島県の内堀うちぼり知事の会見です。
福島県は原発事故で避難している人たちが入る仮設住宅について、これまで行ってきた「無償提供」を、大熊町と双葉町を除くすべての地域で、原則、再来年3月に終了する方針を決めました。
しかし、避難指示が出され一時帰宅しか許されなかった地域では、多くの家が荒れ果ててしまいました。いつかは帰ろうと考えていた自宅には、カビが生え、家の中に入り込んだ動物の糞が部屋中に散らばっているところも珍しくありません。
原発事故にともない、町の広い範囲が帰還困難区域とされている浪江町で、こうした家々のハウスクリーニングを請け負っている人がいます。
ハウスクリーニング業を営んでいる石田貴博さん(40)です。
大きな家では、3日ほどをかけてゴミを取り除き、床や天井、壁にこびりついた汚れを、丁寧に落としていきます。
家の中には、かつての暮らしが、あの日の状態のまま、残っています

石田さん:
「(カレンダーとかそのままですもんね)みんな3月のままですもんね。未だに2011年の・・・結構皆さん写真とかいまだに飾ってるところがあって。家族の集合写真とか、そういうのが多くて。七五三の写真とか、そうするといろいろ、ああこの人たち今どうしてるのかなとか、ちゃんと一緒に生活できてんのかなって。思っちゃいますねやっぱり」

 

自宅への帰還の手助けをするハウスクリーニング

ふるさとへ戻ろうとする人が再び自宅で暮らせる環境を作るため家の清掃を行う石田さん。
実は、茨城県の日立市から、車で1時間半もかけて浪江町へ通っています。
石田さんは、これまで浪江町で、およそ90軒のハウスクリーニングを請け負ってきました。
なぜ、茨城県の日立市に住む石田さんに、そんなに依頼が舞い込むのか。
実は、石田さん自身も浪江町からの避難者なのです。
原発事故の前、石田さんは、浪江町でハウスクリーニング業を営んでいました。
しかし、事故によって、妻と、当時小学1年生の娘とともに避難。
現在は、茨城県日立市に住んでいます。
そしておととし、避難先の日立市で、事業を再開しました。
以来、自宅に帰りたいという避難者たちの思いに、仕事を通じて応えてきました。

石田さん:
「まあ復活させたいっていうか再生させたいっていうかそういうのがやっぱ強いですね。それよりもなによりもやんなきゃいけない使命感っていうのが強かったですね」

石田さんにハウスクリーニングを依頼した1人、佐藤秀三(さとうひでぞう)さんは、避難先の二本松市から、去年、浪江町の自宅に帰ってきました。

佐藤さん:
「ものすごく丁寧にやってもらったんで・・・あれいいなあれいいな、あの人紹介してーって結構な数が言ってくれたんでね。自信持って薦めてるんで、ちょっとこう、あっち(日立市)から通わないで、早く浪江に事務所を置いてくれ、って頼んでるんですけど」

 

今はふるさとには帰らないと決めた石田さん

佐藤さんのように「石田さんにもふるさとに戻ってきてほしい」という声をかけられることは少なくないと言います。
石田さんも、避難当初からずっと「いつかは、ふるさとに帰ろう」と心に決めていました。
ただ、ハウスクリーニングの仕事で、ふるさとの福島を頻繁に行き来するようになって2年。
次々と新しい建物が建ち、かつての面影が消えていく様子を目の当たりにしてきました。
石田さんは、変わってしまったふるさとで暮らしていく厳しさを感じています。
さらに、ふるさとを離れた7年半という歳月は、家族を取り巻く状況も大きく変えました。
当時、小学1年生だった娘は中学生になり、日立市で事業を再開した会社には、従業員もいます。
石田さんは、このあとも、ふるさとには戻らず日立市で暮らしていこうと考えています。

石田さん:
「悔しいとか淋しいとか辛いとかそういう気持ちがあったから・・・最初は、子どものことがなければ全然もどれたんだけど。それぞれ、事情があるから、戻る戻らないじゃなくて、どう関わっていくか、関われなくてもどう思っていくかってことでいいだろうな、っていう・・・。仕事がなければ戻れないし、戻っても大変だろうし・・・・・・」

我が家に帰りたいという福島の人たちの自宅をきれいにすることで、地元とのつながりを持ち続ける石田さん。
そこには、ふるさとへの変わらぬ思いを抱き続けながらも現実的な選択を余儀なくされる避難者たちの「いま」がありました。

この日の放送を聴く [9月25日(火) 午後11:20配信終了]

大野済也アナウンサー

水戸放送局
大野済也アナウンサー

平成8年入局。趣味・特技は、冷蔵庫にあるもので料理(おそうざい・アテ系)、マニアックなテレビやラジオの番組をだらーっと見たり聴いたりすること。
安くて旨い店探し(主に立ち呑み屋・居酒屋)、街歩き、温泉・銭湯探訪、家族を巻き込んでのあて無きドライブ、生オケでの歌謡曲・J−POP熱唱、時刻表熟読

番組情報
NHKジャーナル番組HP
平日 午後10時00分~11時10分 生放送
キャスター:山田康弘、菅野真美恵
ニュースデスク : 森田智之