放送:土曜 21時00分〜21時40分(ラジオ第2)
再放送:翌週の土曜 15時10分〜15時40分(ラジオ第2)

今日では特に読みにくい地名・人名などを除くと、振り仮名は付けないことが多い。しかし、明治期には、全ての漢字に振り仮名を振った書籍や新聞が珍しくなかった。しかも、読みにくいから振り仮名を振るのではなく、こう読んで欲しい、この言葉にはこの漢字を使いたいという、書き手の強い意志を感じる振り仮名があるという。振り仮名が頻繁に使われるようになるのは室町から江戸以降だが、さかのぼって日本書紀などの振り仮名を詳細に分析すると、そこに日本語の歴史が見えてくるという。4回シリーズで振り仮名を考える。
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サザンオールスターズの「Moon Light Lover」は、片仮名表記の英語とアルファベット表記の英語が混じる。ルージュやワインはそのまま片仮名で、Moon LightやWoo , Babyなどはアルファベットで表記される。振り仮名にも、「合図」という漢字に「サイン」、「匂艶」に「にじいろ」と振られている。歌を耳で聞くだけなら分からないが、歌詞を読むと、作詞者:桑田佳祐の感性が表現されている、と見るべきだろう。
振り仮名の始まりは日本書紀と言われる。しかし頻繁に使われるようになるのは、室町時代に入った頃からだ。この頃には、漢字の左側と右側の両方に仮名を振るという新方式が考え出された。左右どちらかが読み方で、もう一方はその意味を示した。木版印刷が広く普及して、一般庶民も本を読むようになったためと思われる。有名な南総里見八犬伝は全ての漢字に仮名が振ってある。
明治になると、左右の振り仮名は、右側が現在と同じように読みを、左側がその意味を示すように統一される。活字の大きさを示すルビという外来語も普及し、新聞社の中には、新聞を所謂総ルビで発行するところも現れた。それと同時に、何故、自分の国の言葉に振り仮名を振るのか、振り仮名がなければ読めない言葉は使わなければよい、という、振り仮名廃止論も現れる。
現代の当用漢字・常用漢字の考え方では、振り仮名は原則として必要ない。夏目漱石の作品は出版された段階では総ルビだが、自筆原稿は特定の文字にしか振り仮名はない。サザンオールスターズの例を挙げるまでもなく、文学の世界では、作者の意志が振り仮名に現れる。漢字という中国の文字から仮名文字を作り出し、欧米のアルファベットを取り込んで豊かな表現を生み出す日本語に、振り仮名の果たす役割は大きい。
| 放送日 | 再放送日 | 内容 |
|---|---|---|
| 5/5 | 5/12 | 「振り仮名から見る日本語の歴史」(1) |
| 5/12 | 5/19 | 「振り仮名から見る日本語の歴史」(2) |
| 5/19 | 5/26 | 「振り仮名から見る日本語の歴史」(3) |
| 5/26 | 6/2 | 「振り仮名から見る日本語の歴史」(4) |
今野 真二(こんの しんじ)
<主な経歴>
1958年神奈川県生まれ、53歳
早稲田大学文学部卒、松蔭女子短期大学、高知大学を経て、現在、清泉女子大学文学部教授
<主な著書>
「文献から読み解く日本語の歴史」、「振仮名の歴史」、「消された漱石」