2007年12月18日 (火)キュレーター 長谷川祐子さん

キュレーターの長谷川さんは、違いのわかるオンナである。
自分なりの基準を、かなりハッキリ持っている。
キュレーターにとっては、それがとても大事だという。
 
「どういう展覧会をしてきた、
 どういうアーティストといっしょに仕事してきたということ、
 そして、どういう方たちと話を積み重ねてきたかということだけが、
 私の財産です。
 つまり、キュレーターは、自分の『目』と
 自分が育ててきた『クライテリア』、つまり『基準』が、
 唯一の財産なのです。
 ほかにキュレーターにとって財産は何もないのですよ」
 
それを表すかのように、
長谷川さんは、なんと、自分の大学時代の学生証を、
今もお守りとして持ち歩いている。
そこに、自分がいままで一緒に仕事をしてきて、
大好きだったり、尊敬したりしているアーティストたちにサインをしてもらっている。
小さな学生証が、いまはもうびっちり、サインで埋まっている。
長谷川さんの言う「財産」が、目に見える形で残っているのだ。
  
でも・・・

でも、
その小さな学生証の、とても限られたスペースに、誰にサインしてもらうか、
長谷川さんは、いつも考えて、感じて、妥協無く仕事をしつつ、
ある意味での選択をしているのだ。
これは、キュレーターに限らず、「人間としてすごくちゃんとしたこと」だと思った。
人生の限られた時間を、誰に割くか、何に割くか。
これを、どれだけの人が、ちゃんと選べているであろう・・・。

だからこそ、長谷川さんが、どういうところを観て
人間観察、あるいは「アーティスト観察」をしているかが気になった。
すると、驚くべきところを観ていた!

「なぜか、アトリエの床に、私は異常な注意力を払いますね」

え?!床?!
長谷川さんは、床をどんな風にしているかで、人がわかるというのだ。
例えば、アートの制作作業をすれば汚れるにもかかわらず
すごく高い仕上げの床にしていて、
なおかつその床をピカピカの状態に保っているアーティストは、
たぶん、すごく完璧主義者で繊細な人である、などなど、わかるという。
壁観察をして、人間観察をしているのだ!

「床ってご自分の体に一番近くて、足がくっついているところですよね。
 だから、自分の体に、色をいちばん反映するところでもあるんですよ。
 すごく自分の環境に影響するものなんですよ。
 だから、環境を変えたかったら床からお替えになったらいいですよ。
 壁から替えるんじゃなくて」

床を観て、人を知るなどと、考えたことがなかったが、
キュレーターというひとは
それくらい、「自分だけの基準」が重要なのだ。
うーむ。
自分の基準、ちゃんと意識して、持っているだろうか?と考えさせられる。

そして、最後に、とどめのように「すごい!!」とわたしが感じた言葉。

「作品を見るときにいつも心がけているのは、
 自分のいつも基準とか理解の能力を疑い続けるということです」

あれだけ大事にしている「自分の基準」を疑うなんて・・・。
しかし、その裏には、
自分の常識や価値基準を超えたところに、なにかすごいものがあるかもしれない、
という、アートに対する、そしてたぶん、人生に対する、信念があるのだ。

強く、自分の基準を持ちつつも、
その基準を常に更新できる自由さを持つ。
そうやって生きている長谷川さんの人生こそひとつのアートだ、
とわたしは確信した。

投稿者:すみきち | 投稿時間:15:00

コメント

 寒くなってきましたね!と
いうのは自分の住む南九州の感覚だなって思いながらの挨拶です。
久しぶりに訪問しました。毎週、とはいえませんが結構見てます「プロフェッショナル」。すみきちさんの今日の記事に感動しました。
 自分自身の「基準」を常に更新できる自由さ。ふーむ、デス。
今夜の「プロフェッショナル」必見だなって思いました。

投稿日時:2007年12月18日 18:56 | m-naosan

自分の『目』と自分が育ててきた『クライテリア』が唯一の財産と、言い切れる。
やはりこれこそ「プロ」である証なのでしょうね。
そして、その財産をも自分自ら疑いをかける。
その繰り返しが、自分自身を向上させ次ぎのステップに押し上げる。
とても勉強になりました。
ありがとうございました。

投稿日時:2007年12月19日 10:05 | 菅野勝男

いつも楽しみに「プロフェッショナル」を見ています。
一人一人違う個性のプロが登場しますが
いつも違ったエッセンスをいただき感謝します。
みんなそれぞれ違った個性があるのに、
日本の社会ってつぶしあっている気がしてしかたないのです。
でも、その中で自分の流儀を貫いてこられた方を知ると、
小さな小さな存在ですが、私も自分にとって信頼できる奴に成長する可能性だけはあるんだぞ、と感じて新たな一歩を出している、そんな毎日です。
住吉さん、風邪など引かずにがんばってくださいね。
来週も楽しみにしています。。

投稿日時:2007年12月19日 21:56 | canacanazemi

本当に物事をはっきりとした自己判断を持っていらっしゃる事がきっぱりした発言からとても明確にわかりました。そしてアートに対する情熱をとても感じました。私もアートに魅力を感じ学ぶ環境にもいます。こんな方がいらっしゃると言う事を知り心強く思った事も確かです。すてきな人だと思います。

投稿日時:2007年12月19日 23:27 | ayumi

アートは「心のマッサージ」(あってるかな?)との言葉、
とても印象に残りました。

ときどき現代アートを見に行くのがすきです。
ハッとするかんじがあって、
心が揺さぶられる。

ああこれは、自分が普段の生活の流れのうちに凝り固まってしまった感性を、マッサージされているんだな、と思いました。
あまり意識してこなかった、アートの力というものを、あらためて考えさせられました。
また近々、「心のマッサージ」されに行きたいです。

投稿日時:2008年02月02日 23:16 | riri

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