2007年12月04日 (火)文化財修理技術者 鈴木裕さん

鈴木さんの信念は、「ふにゃふにゃする」。
鈴木さんは、何百年も時を経た文化財を相手に、
間違うことの許されない作業をする日々である。
昔の人々の
文化の跡を、
生きていた証しを、
いや、もしかして、
存在していた理由を、
自らの手にとって、扱うのである。
スゴイ。
そういうときに、体と心がガチガチに緊張していては、うまくいかないそうだ。
ちょっと力を抜いて、
たぶん、忍者が全方向に注意を行き渡らせるときのように、柔軟になるのである。
「やなぎのように。柔軟だけど、嵐が来ても倒れない者でありたい」と鈴木さんは言う。

さらに、鈴木さんが主張することがある・・・

「わたしの仕事は、『文化財修復』じゃなくて、『文化財修理』なんです」
一見、同じような二つの言葉。しかし、違うのだと言う。
誰にもわからない程きれいに、痛んだことのない新品のように復元するのが、
「修復」。
この部分は明らかに手を加えたところだ、とむしろわかるようにするのが、
「修理」。
それで言うと、鈴木さんの仕事は後者なのだ。
文化財の「authenticity(真正であること)」や
「originality(原物であること、またその独創性)」を大事にするからこそ、
自分の加えたものが、元々のものと混同されないようにするという。
だから、場合によっては、手を加えない判断をすることもある。
虫食いの穴を塞ぐことはしても、
オリジナルの筆跡を残すことが大切なため、
そこに墨で書いてあったであろう文字の部分を、決して塗り加えたりしない。
修理の基準は、見た目を直すことではなく、
あくまで、保存のため、あるいは傷みを食い止めるために必要かどうかだ。

西欧の油絵の修復だって、もちろん後でわかるようには修復するが、
黒い墨を塗り足さないで白のままにしておくということは、しないであろう。
これは、すごいことだと思った。
だって、「日本より欧米の方が、個性を大事にする、オリジナリティを大事にする」
とよく言われるが、実は、日本の文化財修理を見ると
オリジナリティや個性にものすごく敬意を払う文化が日本の核にあることが、
はっきりとわかるからだ。
そして、ここに、鈴木さんの職業の誇りがあることを感じた。

修理では紙の毛羽立ちを利用し、そこに糊を付けて、紙を継ぐ。
カメラで拡大して観ると、紙のケバケバが生き物のように動いていた。
イソギンチャクのような、炎のような、
ゆらゆらと、手を上げてゆらめく白い生き物。
あ、
鈴木さんが大事にする「ふにゃふにゃ」だ!と思った。
そして、文化財の紙も、それを修理するケバケバも、鈴木さんという人間も、
いまの時代を同時に生きていることを、強く感じた。
それぞれの、個性を燃やして。

投稿者:すみきち | 投稿時間:17:00

コメント

「プロフェッショナル 仕事の流儀」
いつも楽しみに観させてもらってます。
今回の鈴木さんにしても、この間の佐喜眞さんにしても
とにかく仕事に向き合う姿が ほんとかっこいいですね。
真摯でひたむきに・・・・
普段の僕の生活では出会うことのない職業の人たちとの出会う機会をこの番組は与えてくれる。
プロフェッショナルな人たちの顔、所作、息づかい
もっとたくさんの、いろいろな職種のプロフェッショナルと出会えることを楽しみにしています。
「トップランナー」や「美の壺」も面白いですね。
これからもワクワクさせてくれる番組をお願いします。

投稿日時:2007年12月05日 00:22 | れんげの父さん

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