2010年03月09日 (火)杜氏 農口尚彦さん

すごいです。
すごいです、すごいですっ!
日本酒の世界。
わたしは、そもそもお酒があまり強くないし、
中でも、日本酒はあまり飲めない。
日本酒の奥深さについても、
造りかたについても、これまであまり知らなかった。
 
しかし、農口さんにスタジオで話を伺って、
あまりにワクワクしている自分に驚いた。
おもしろいのだ。
すごいのだ。
わたしは自らの好奇心に飲まれるように、
身を乗り出して、
次から次へ湧いてくる質問を口にする。
 
スタジオには・・・

酒蔵から大切な物の実物をいろいろと持ってきていただき、
順を追って、酒造りの行程を教えていただく。
まず、お米の状態、それをどう精米していくか。
そして、それにかける「麹菌」がどんなもので、
それをどう、ふりかけ、育てるのか。
米麹とはどんな香り、手触り、味なのか。
その後、発酵させる課程で、いかに「酵母菌」も育て、
日本酒にしていくのか・・・。
すべての行程に、ものすごく緻密な管理が必要で、
ほんのちょっとしたことで、すべてが台無しになるような世界である。
酒造りが始まると、
農口さんが、一晩通してゆっくり眠ることはない。
場合によっては、赤ちゃんを育てるよりもきめ細かなケアをしながら
「麹菌」と「酵母菌」をコントロールしていくからだ。
 
「この段階によって、お酒の味が決まります。
 もう最後は温度をうんと下げて、
 要するに、やたらと酵母に元気を持たせると、酒が荒くなるんです。
 これはほんと、要するに麹が分解していき、
 人間の感じる旨みも酵母がボコボコ食ってしまって、
 アルコールにしてしまうわけですね。
 それを温度を抑えて、酵母を抑えつけるんです。
 そうすると、分解が後半進んできて、まろやかな味になる。
 そのときに、絞るんです。
 このふたつの菌を、いかにバランス良くコントロールするか、なんですよ」
と農口さん。
 
私たちが感じる日本酒の旨みみたいなのは麹菌が作ってくれたもので、
気持ちよくなるアルコール分というのは酵母が作ってくれたもので、
それをうまいバランスにすると、おいしい日本酒ができるというのだ。
つまり、農口さんは、
タンクの中にいる、目には見えない二つの生物をうまく操りながら、
彼らにお酒を造らせているのだ。
 
「麹菌にしろ酵母菌にしろ、目には見えないんですけど、
 またその目に見えん菌を利用して、
 対話しながら操作できるくらいにならなかったら、
 酒造りは、やっぱりだめなんですね」
 
すごい、すごい!
農口さんは、猛獣使い、ならぬ、
「猛菌使い」、なのだっ!
 
そんな微妙なバランスの上に成り立っていると思うと、
日本酒の澄んだ輝きや、甘い香りに、神聖さを感じる。
農口さんの日本酒をスタジオでいただいた。
芳しい。甘くて、深くて。
そして、喉ごしは気持ちがよく、後味はさっぱり。
こんなに日本酒が美味しいと思ったのは、生まれて初めてかもしれない。
ふたくち、みくち、とついつい、止められなくなってしまったのも、
ふたつの菌と、
農口さんの絶妙なチームワークの成せる技なのだと思った。
 
お酒をいただく茂木さんとわたしを見つめる農口さんの表情は、
柔らかい。
 
「いいお酒に出会ったときは、
 お客さんは目がキラキラとしておるんですね。
 ええ。にっこりして飲まれる。
 人に喜んでもらう機会に出会うと、杜氏っていいなと思います。
 なんでもそうじゃないですか、社会の仕事は。
 やっぱり社会に役立つ仕事というのには、喜びが必ずあるのだと。
 その喜びに対して、自分がどこまで心を落ちつけ、
 これだと決めるか、ということではないかと思うのですが。
 いろいろな仕事があって、
 初めて社会というものが出来てくるわけですから。
 酒を作るのも、はたから見たら、本当に苦労が多い、
 地味な職人の世界だと思うのです。
 だけども、ここまでして61年間やってね、
 ああー、自分で酒を造るのが、
 自分が燃えて酒を造っておったんかなあという喜びがね、
 お客さんに喜んでもらうと、実感できるんです」
 
お酒をいただいていたのもあるだろうか、
胃がほんわかあったかくなり、
農口さんの言葉が、わたしの内部に染みた。
お酒のほんとうの美味しさも
人と杯を交わし、目に見えないものも交わしてこそ、
染みてくるものなのかもしれない。

投稿者:すみきち | 投稿時間:19:20

コメント

農口さんの、「お酒と向き合っている時」と「それ以外の時」の表情の違いが印象的でした。
普段は、「へへっ」っと素敵な笑顔で笑っているのに、お酒と向き合う時はもの凄い真剣な表情になる。ありきたりな表現ですが、これぞ日本の職人!!っと言った気持ちで番組を見ていました。
私自身、現在夢を追い日々頑張っているつもりでしたが、農口さんの「自分の都合を押し付けず、己を犠牲にして酒と向き合わなければ、決して良い酒は出来ない」という言葉にドキッとしてしまいました。
自分にとって都合が悪いとき、それらしい理由をつけ、誤摩化している自分に気づかされました。分かっているつもりで、出来ていなかった、、、、

「己を犠牲にして、自分の夢と向き合う」

と言う決意を、あらためて心に刻む事が出来ました。

私が、農口さんと同じ歳になっても農口さんと同じ様に、キラキラ輝く瞳で、夢中になって日々を過ごしている自分でいたいと思いました。

きっと、農口さんのお酒が透き通っているのは、農口さんのまっすぐな思いがお酒に表れているからなんであろうと感じずにはいられませんでした。

投稿日時:2010年03月09日 23:41 | sakusaku

ビールなど、食品など生産されている工場のシーン

白い服装で、チリ、ホコリなど入らないようとか
衝撃的ですいた

上半身 裸で作業

鋭い眼光 お魚獲りの漁師さんのごとく

お酒を造っているのではなく 

お酒を獲ってくる

このタイミングしかない仕込み
そのタイミングは狩人のような魂でないとと感じました

素晴らしい放送
ありがとうございます。

投稿日時:2010年03月10日 07:31 | 高木英樹(TOKYO/HIDEKI)

農口尚彦さんの回、拝見しました。
本当に素晴らしかったです!!

お酒造りの繊細な作業にも驚かされましたが、
やはり農口さんのプロフェッショナルとしての姿、その佇まいから、不要なものはそぎ落とされ、ただ物(菌)に対する真摯な愛情が溢れているのを画面からも強く感じました。

また、ご自身の引き際についての考えもあの境地に達した名人だからこその言葉であり、深いな~とただただ感服。

その道61年の職人さんには到底及ばないまでも、自分自身の生き方と照らし合わせて、良い影響をいただきました。

農口さんのお酒を絶対、飲んでみたい!

DVD化されるのを期待します!!

投稿日時:2010年03月17日 16:02 | mi-yoshi

いつも楽しく番組を見ています。
先ほど、この番組をビデオで見ました。
何を隠そう、私の父は、ある酒造会社に勤めていました。
(今は定年で引退しています。)
今回の番組を見て、何かしら、親父の仕事が、一部ではありますが、
理解できたような気がしました。
日本酒業界は、ビールやウ井スキーに押されて苦戦していますが、
これからも、がんばってほしいと思います。

投稿日時:2010年03月22日 21:39 | 木村

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