2009年09月08日 (火)救急医 松本尚さん

まず、VTRを見て、驚く、驚く、驚く・・・。
しばらく、声が出なくなる。
 
海外ドラマ「ER」が大好きで、ずいぶんDVDも見たが、
でも、あれはドラマだし、と、どこか思っていたところがある。
しかし、現実の世界で本当に起こっている。
想像を絶する緊張感、一分一秒を争う緊迫感。
目をそらしてしまいそうなほど凄まじい、命の真剣勝負の光景・・・。
見ていたら、無意識に息が止まっていた。
こんな日常があるのか・・・と思う。
 
それを日常としている人が、救急医、松本さんである。
松本さんは、もともとは消化器外科医だったが、
研修を機に救急医療の世界にのめり込み、
当時“花形”だった外科医の道から、
「救急医」という救急医療の最前線へと身を移す。
同じ医療でも、かなり違う世界だ。

予定して行う外科手術と、突然行うことになる救急手術は、
本質的に違うと松本さんは言う。

「準備をして、予定で手術や処置をするときというのは、
 どの程度病んでいたり、どの程度損傷しているかということを
 わかってやるわけですけれども、
 救急医療でやるときというのは、とにかく
 『どこからか血が出ている』ということしか、わからないわけですね。
 だけれども血は止めなければ命は助けれないとなれば、
 そこはもう手術に行くしかないんですけれども。
 特に大きなけがをしている場合は、どこに損傷があるかがわかりません。
 準備をして、ここに病気があるからそこを取りましょうという手術の場合は、
 ピンポイントで手術ができますけれども、
 こういう外傷の場合というのは、
 やはりわからない分だけ隅々まで探して見つけていかないといけないんです。
 特に命に関わるような状況の場合は、一発勝負、次がない。
 そういう意味ではかなり特殊な領域かなと思います」
 
これは、松本さんたちの手術の様子を見ていると、ほんとうによくわかる。
どこが出血しているのか、内臓を次々とひっくり返して、急いで探す。
すぐに見つからなくても、絶対にあきらめず、とにかく、探す。
見つけないと、患者さんの命に関わるのだから、アレコレ言い訳はできない。
正直、
「人間の内臓って、あんなに急いでひっくり返したり、触ったりしても、
 だいじょうぶなものなのか!」と感心してしまうほど、
凄まじい勢いと迫力で、手術は進む。
(たぶん、番組をご覧になったかたは、びっくりすると思うのですが、
 うかがったところ、だいじょうぶだそうです。人間ってスゴイ・・・!)
 
それでも、どうしても救えない命もある。
その現実と日々向き合う松本さんは、
「次はどうすれば、救えるか」
と常に考えてきた。
そして、その結果のひとつが、
「ドクターヘリ」の仕組みと、チーム医療だ。
病院に到着するまで待てないほど重篤な患者さんを、
医師のほうがヘリコプターで出動して、早く治療を始めようという取り組みだ。
 
始めるまでは大変だったそうだ。
地元の消防や、自治体、ヘリコプターの運航会社など、
多くの人や組織を巻き込んで、大きなシステムを作らないと実現しないものだからだ。
人を動かすことや、大きな「仕組み」を変えること、
「前例がないこと」を実現することがいかに大変かは、
どんな人も、仕事などで、多かれ少なかれ感じたことがあるのではなかろうか。
しかし、松本さんはあきらめず、
勤務の合間に救急車に乗り込んで、救急隊員と議論したり、
各地の行政と直談判したりしながら、ドクターヘリのシステム作りに奔走した。
今、松本さんの救急チームのドクターヘリ出動回数は、
年間600件と、日本最多だそうだ。
 
その情熱は、どこから来るのか。
「うーん、仕事ですからね。
 これを仕事にした以上は、やっぱり、
 どこか行き着くところまでは行ってみたいというのがある。
 ですから、まだ伸び代があれば、
 そこのところまでは自分の目で見てみたい。
 情熱がどう、というよりも、
 これは仕事ですから、というのが一番答えになるんじゃないかと思います」
 
あくまでも、前を向き、走り続ける印象の松本さん。
それにしても、想像してみたら、恐ろしい気がする。
「わたしがあきらめたら、この人の命が消えてしまう」という責任を負い、
解決策を模索するそのプレッシャーは、とてつもなく大きいだろう。
こんなに大変な仕事を続けられる松本さんの力に、感服するのである。
でも、そういう人が社会にいるから、命が救われる。
市民にとって、心強い社会となる。
お話を伺えば伺うほど、松本さんのような方の存在をありがたく思った。
 
そして、
松本さんがインタビューの最後のほうでおっしゃっていたことばを聞いて
わたしは、松本さんにお目にかかれたことの幸運を、
ほんわかと感じたのだった。
 
「(人間がここまでして人の命を救おうとするのは、)
 ひとりではきっと生きていけないからだと思う。
 きっとみんながいなくなって、誰もいなくなって
 自分ひとりになってしまったら、
 生きていけないのと同然ですから」

投稿者:すみきち | 投稿時間:20:58

コメント

はじめまして。
「救急医・松本尚さんの仕事の流儀」を拝見しました。
ボクは大学で医療情報の研究をしています。
疲弊する救急医療や国家財政を圧迫する医療費、、、問題が大きすぎてどうしたら良いものかと。
いま第一歩を踏み出したのは、救急性の低い軽症患者の皆さんに街のお医者さんに行ってもらうこと。救急医療に携わる専門医に本来の仕事をしてもらうことを想像して。
松本さんのお仕事も全国的には少ない救急救命システムであそこまで機能させるのに大変な時間と労力(専門以外の!)を裂かれたことでしょう。研修を終えて金沢に戻って直面した状況。その時何が自分にとって大切かを考えて第一歩を踏み出した松本さんに敬意を表します。(多くの医師が同様の状況下で断念したことと想像できます)「プロフェッショナルとは?」の中で、和を保って新しいことに挑戦する、とありましたが、強い信頼関係がなければ決して言えることではないと思います。強い意志のもとに素晴らしいスタッフが集まって最高のチームができたのでしょう。
人は一人ではその存在価値をも見出すことはできないでしょう。より良い社会を求めて努力してゆくことにこそ生きがいがあるのですからね。
ボクも松本さんに負けないプロフェッショナルを目指します。
では。

投稿日時:2009年09月08日 23:32 | KINO

番組 拝見いたしました。
松本先生の綺麗な手術に感動です。

投稿日時:2009年09月09日 00:10 | コッヘル

番組拝見しました。
松本尚氏が患者にかけた"心配ないよ がんばろう"の一言が、とても印象的でした。

どうにも不安や不信の多い昨今ですが"心配ないよ がんばろう"という一言で前向きになれる気がします。

無論、松本氏の言葉は救急医療の"生死をかけた現場"で発せられるもので、普段の暮らしにはない緊迫感のあるものですが、それでもこのシンプルな励ましの言葉にとても勇気づけられたような気がします。

よい番組でした。ありがとうございます。

投稿日時:2009年09月09日 00:26 | 視聴者(匿名)

おはようございます。昨夜の放送、固唾をのんで拝見しました。
私も、ERは大好きでよく見ていましたが、現実の凄まじさに言葉も出ませんでした。長く子どもに関わる仕事をしていたため小児救急には関心もあり、AEDが使えるようにと赤十字の研修も受けていたのですが、これはあくまで「大出血を伴う外傷がない場合の心肺蘇生」のためのスキルであり、頭部打撲などの体内出血が疑われる場合にも施術の是非に意見が分かれるほどです。
それでも、すみきちさんも書かれた通り、やはり「人は、ひとりでは生きてはいけないのだから。」という、松本さんの言葉を肝に銘じて人生の現場で、自分にできる限りのことを、日々トライしていこうと感じました。ありがとうございました。

投稿日時:2009年09月09日 08:22 | S本Y郎

こんにちは、昨晩拝見しました。

正直想像を超える映像に女房と二人で息を飲んで
見入っていました。

まさか、そこまで写すのか、と思う間もなく処置が行われ
ていく、救急救命の現状を垣間見ることができました。

女房と二人で、そんなに内臓を扱って大丈夫なのかと
見ていてはらはらしました。

1年ほど前女房が自損事故で十二指腸に穿孔が見つかり
緊急手術、その時を思い出していました。

今後もいろんな分野で奮闘している方にスポットをあてて下さい。

投稿日時:2009年09月09日 09:35 | starwada

今回の放送も大変感動しました。
救急医療の現場、想像するだけでも凄まじいものだと思ってましたが
実際目の当たりにして、本当に一瞬の迷いも許されない厳しい現場だとゆうことが画面からもひしひしと伝わってきました。

投稿日時:2009年09月09日 11:08 | Y・N

 私の妹もテレビの事故(8/8)の一週間前に
くも膜下出血で倒れドクターヘリで病院に搬送され
5時間に及ぶ手術のおかげで一命を取り留めました。
松本先生の緊急医療に取り組む姿に感動致し、
妹も先生や病院、地元の消防、自治体に助けられたと
この番組を見て知ることが出来ました。
この様な番組を作れるはNHKだけだと思いますので、
これからも"がんばって"下さい。

投稿日時:2009年09月09日 12:07 | 杉山定夫

放送中何度も涙が頬をつたい、こんな熱意を持った松本先生のような方が、自分の住む町にもいて下されば・・・そんな想いで番組を拝見しておりました。自分の父も最後は、腸に穴があいた事で致命傷となり
亡くなりました。地域の医療にとってドクターヘリはかかせない存在となってきてますが、家族が求めて出動できる体制ではなく、医療機関や消防の方々の協力なくして出来るものではない・・・分かっていても家族は1分1秒でも早く、ドクターに見てもらいたい、それだけなんですよね。「こうしてあげたい・・・・」という家族の想いと、「助けたい・・・」というドクターの想いが一致しなければ、尊い命を救う事が出来ないと思います。最後の方で、「・・患者が死んじゃうぞ・・」と松本先生がおっしゃって、手術室を開けてもらい手術へ向う姿に本当のプロフェッショナルの姿を拝見した想いです。一医療機関の運営ではなく、国家レベルで「ドクターヘリ」の運営は行われるべきであって早急にそのシステム作りを行い、一人でも多くの患者さんの命が救われる事を願い、松本先生におかれては、これからも最先端な技術を駆使されご活躍される事を、一ファン(勝手にファンになりました)として応援したいと思っております。

投稿日時:2009年09月09日 12:55 | なるちゃん

プロフェショナルの仕事を、自分の流儀を貫いてやりきる迫力に、
ただただ、圧倒されました。自分を信じて自分に出来ることを
冷静に2手先、3手先を考えながら、対処している、松本先生。
自分の目指すプロフェショナルの姿が見えました。
明日からも、自分を信じて自分の流儀を貫き続けます。

投稿日時:2009年09月10日 23:20 | take4

深夜の再放送を拝見しました。

実を言いますと、私は、「プロフェッショナル」であともうちょっと先に放送される予定の方と同じ分野で働いている者です。

松本さんの言葉ひとつひとつにとても感動致しました。
命の重み、そして、「ひとりでは生きていけないから救いたいと思うんだ」という考え方。
こんな医師がもっともっと増えて欲しい、と切に願います。

そして、松本さんよりひと回り下ではありますが、いつか自分たちが同じような姿勢で、さらにもっともっと苦しんでいる人たちのために貢献できたら、と決意を新たに致しました。

素晴らしい放送をありがとうございました!

投稿日時:2009年09月17日 06:04 | J

友人に、「再放送見たほうがいい」と言われて、深夜、テレビの前に座りました。47歳の走る姿、ひたむきに命に取り組むその生きざまに感動しました。こんな世界があるのかと。松本氏を取り上げた番組を他でも一度、見たことがありましたが、ここまで、迫ってはいませんでした。プロフェッショナル取材陣もさすがですね。
 番組視聴を進めた友人は整形外科医です。同業者のプロの目からみても、感動ものだったそうです。

投稿日時:2009年09月20日 01:28 | おじおじ

番組を拝見していて

先生が救急車より早く到着されていて高速道路で事故の患者さんを乗せた救急車を待っていたこと 高速道路にドクターヘリが降りられればと 

本日の新聞夕刊にドクターヘリが高速道路に降りる訓練をされている記事が出ています

プロフェッショナル仕事の流儀は時代の今に鋭く取り上げている実感です。

ドクターヘリの再放送、必要と思います。

投稿日時:2009年10月07日 18:10 | TOKYO / HIDEKI

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