2009年02月24日 (火)料理人 西健一郎さん

日本料理は難しい。
それがわたしのイメージだった。
ただ材料を入れて、炒めて、塩を振る、とか、
切って、焼いて、絡める、とか、
そんな単純ではなく、
ものすごく入り組んだ手順と、面倒くさい下準備が要る。
ややこしい。
なんのためにやっているかよくわからない段取りが多く、
覚えにくい。
それが、「和食=アンタッチャブル」というイメージを
わたしの中に植え付けていた。
 
しかし、西さんとお会いして、
すごい発見があったのだ。
 
物ごとには、ワケがある。
 
物ごとには理屈があり、因果関係がある。
料理にも、理由があり、ワケがある。
西さんのお話をうかがっていると、
そんな風に、モヤモヤとしていたものが腑に落ちてくるのだ。
 
料理にはちゃんと因由があることを、
西さん自身、感じてこられた。
例えば、あるとき、京都で・・・

うどんを食べたそうだ。
そのとき、ものすごく出汁が美味しく、
どうしてこんなに美味しいのかが、食べてもわからず、
悔しいくらい気になったという。
 
「ああいうお出汁って美味しいよねと思って。
 京都のおうどんって最後までお出汁が吸えるよね、と。
 あれは昆布とカツオだけじゃないだろうなというのがありました。
 そうしたら、何となくあるときふらふら京都に行ったときに、
 そのおうどん屋さんの表に干してあったんです。
 かつお節や昆布に、おじゃこが混じっていたんです。
 おじゃこの頭とお腹を取ったのがいっしょに混ざっていたんです。
 『あっ、あの味はおじゃこが入っているんだろうな』と。
 これで間違いなくおいしいコクが出るんだろうと思ったんです。
 そうやって何となくキョロキョロして、いろいろ見ています」
 
そして、これぞというときには、西さんもジャコも出汁に入れるようになった。
いやあ、その好奇心がステキ!!
うどん屋の外でキョロキョロしている西さんの姿が浮かぶ。
ふふふ。
71歳の西さん。ほんとうに食に関する探求心が旺盛なのだ。
そうやって、美味しい料理に潜む、手品ではない「ワケ」を、
ひとつずつ紐解いているのだ。
もちろん、紐解くだけではなく、その「ワケ」たちを利用して
ほんとうに美味しいお料理を自ら創造している。
 
さらに、わたしがややこしくて、意味がわかりにくいと感じていた
料理の「下準備」という作業に、
ほんとうはどういう理由があるのかを、
西さんはわかりやすく教えてくださった。
 
つまり、それは究極で言うと、
美味しい出汁の味を、いかに素材に上手いこと染みこませるか、
それを実現するために、素材を「すっぴん」にしておく、
ということだったのだ!
 
例えば、野菜のヘタの部分や、灰汁の強い食材など、
一見食べにくくて、美味しくなさそうな素材は、
イガイガするという欠点や、灰汁という余分なものなどの「化粧」をしている。
それを下準備で落としてあげて、
つるっと素顔にするのだ。
そのあとに、出汁という新しい「薄化粧」を上手いこと染みこませてあげることで、
出汁の味と素材本来の味の美味しいハーモニーが生まれるのだという!
下準備は、食材をすっぴんにする、引き算の作業なのだ。
 
そう考えると、小難しくて不可解に思えていた日本料理の手順が、
ものすごく理にかなった、わかりやすい作業に感じられる。
自分の肌も、すっぴんにして、化粧水などで潤っている状態を作ってあげると、
たとえばメイクのファンデーションもきれいに塗れるし、
厚塗りしなくても、薄く塗っただけで十分顔色がよくなるのだ。
なるほど!
下準備にも、料理にも、ちゃんとワケがあった!
わたしからすると、目からウロコである。
 
そして、
西さんが「死ぬまで勉強」と料理道を納めてらっしゃるのにも、
ちゃんと理由を感じた。
伝説の料理人とまで言われた、お父さん、西音松さんがいたからだ。
三十代で父のもとで修行をしたが、
なかなか料理を教えてもらえなかったという。
料理の肝心なところになると、音松さんは、
息子の西さんに用事を頼んで、調理場から追い出してしまう。
西さんが、用事を済ませて戻ると、もう料理の胆は終わっている、という日々が続いた。
西さんはどうしても秘密が知りたかったため、
お父さんの作戦に対抗して、頼まれそうな用事をすべて先回りして済ませ、
料理の途中でなにか頼まれても、場を離れないでいいようにした。
そうして、少しずつ、お父さんの料理を学んだ。
そこにあったのは、親子の甘えではなく、
プロの料理人同士の、「本気度の勝負」だと思った。
その音松さんのプロ気質や存在感があったからこそ、
西さんは、いまも、あまたの食通に愛され続ける料理を、
妥協することなく作り続けているのだろう。
 
西さんは、スタジオで、目をうるませた。
 
「(料理のことを)もう少し、聞きたかった・・・教えてほしかった・・・」
 
そのことばと、目の潤いに、
西さんのプロたる所以、
料理人のワケが、
いっぱい詰まっている気がした。

投稿者:すみきち | 投稿時間:12:50

コメント

毎回、職人と呼ばれる方々の心の篤さ/厚さ/熱さ揺さぶられる!

厳しい世界。親子といえども厳しい世界。

ずっと、息子の姿を見守っていた父親。

厳しい表情の中にある、慈愛に満ちた笑顔。

(お客様の気持ちを把握する)

【人生、一生勉強】

投稿日時:2009年02月24日 22:50 | marginal_utility(cost)_K

西健一郎氏の料理に取り組む姿勢が画面を通して感じ取れました。
「死ぬまで勉強」なんて私にはとても持続しそうもありません。
料理の作り手と食する側のコミニュケーションが大切。
私もカウンターで調理の専門家と会話をしながら食事をするのが大好き。
一度、西氏のご馳走を頂きたいが何か敷居が高そう。
今回は住吉さんと茂木さんの突っ込みが少々弱かった・・・
テレビをデジタルにしたので料理の表情がリアルで満足しました。
次のSPではどなたが登場するのか期待しています。

投稿日時:2009年02月25日 08:10 | 後藤 忠夫

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