
ずば抜けた技術を誇る岩田
|

クラシックバレエの最高峰と言われるロシア・ボリショイバレエ団。ここで史上初の外国人ソリストとして活躍するのが、岩田守弘(38)。
220人いる専属ダンサーの男性ダンサーの中で、岩田は166センチと最も小柄だ。
そのため、花形の王子役を踊ることはない。しかし、岩田は身の軽さを活かして高く正確に飛び、回転する。その技術力はボリショイの中でもずば抜けている。
岩田は、「道化」や「悪魔」などの個性的な役「キャラクター・ダンス」のスペシャリストとして圧倒的な存在感を示す。
「身長とか、逆にいうと個性であって与えてもらった体。だからこそ、それを利用してほかの人にできないことをやらなくてはいけない。そうすれば僕が僕である価値があると思う」 |

すべてを出し尽くして踊る岩田
|

ボリショイの舞台に立って13年。岩田は、今でも舞台に立つことは不安で怖いという。
それは、舞台ではその人のすべてが見え、丸裸になるからだと考える。そのなかで、どんな小さな役でも、どんな舞台でも、岩田はすべてを振り絞って踊る。
岩田がロシアに渡ったのは、旧ソ連が崩壊へと向かった動乱期。ボリショイは、閉ざされた伝統の世界でまったく外国人を受け入れていなかった。それでも扉をたたき続け、実力で、ソリストとなった。しかし、当初はまったく役が与えられなかった。そんな中与えられたのは、着ぐるみを着て舞台をはう猿の役など、ソリストの岩田にとっては屈辱的な小さな役。
しかし、岩田はどんな役でも断らずに、練習し、踊りきった。その姿勢は、岩田の評価を変えた。岩田は、常に一つのことを思って踊りと向き合っている。
「人間って、いい時は結果が出るけど成長しない。悪い時に、成長していると思う。そういうのをへてきた人が、本当に感動させられる踊りをする人。自分もそう生きたい」 |

新たな役に挑む岩田
|

岩田は今年、バレエダンサーとして、肉体的に限界と言われる38歳を迎えた。これからは、肉体の衰えとの闘いだが、その先にこそ岩田が目指すものがある。
「バレエは体が動かないと表現できない。だけど、人間性とかは熟してくる、それは年齢に伴ってくるものだから」
この秋、岩田は久しぶりに新たな大役を言い渡された。
旧ソ連時代の作品、『明るい小川』のアコーディオン奏者役を、岩田は、自分なりの新しい表現で踊りきった。 |