河原直明(44)は、東京都が運営する葛西臨海水族園の職員。多くの水族館が展示用の生物を業者から購入する中で、葛西臨海水族園は「自ら採集する」専門の部署を持つ。そのリーダーが河原だ。
未知の魚を求めて、世界の海に潜る調査係。出張は年間100日を越える。あらゆる海に潜り、さまざまな生物を捕ってきた河原。だからこそ、魚を採集する難しさを誰よりも感じてきた。「闇雲に追っていても魚は絶対に捕ることができない。逃げる魚は予想できない動きをするんです」・・・河原の真骨頂は、その経験と知識から、魚の逃げ方を予測する力だ。「その魚の癖が分かってると、採集できるチャンスは増えると思います。その魚の個性を知ること。それは、実際に魚を追ったことのある人にしか分からないものなんです」。魚の種類ごとに行動を予測し、捕獲用のネットを張り、捕獲作戦を遂行する。定期的に採集に行くと言う小笠原諸島では、日本固有種「ユウゼン」の捕獲を行った。ユウゼンが逃げる際の癖を見抜き、見事にペアを捕獲した。それは河原だからこそできるプロの技だ。