東京・青山でオーダーメードの花屋を営む東信。客の注文を受けてから花を仕入れ、一点ものの花束を作る、全国でも極めて珍しいスタイルを貫く。この男の花へのこだわりは尋常ではない。店は地下1階にあり、その空間はまるで異世界だ。灰色のコンクリートが全面を囲み、ステンレスの台の上には試験管のような花瓶が並ぶ。さながら実験室のような空間には、狙いがある。灰色にしたのは、花の色を際立たせるため。繊細な色の組み合わせを作るため、あえて花の色が際立つ背景にした。東を含めた15名のスタッフの服も黒と白に統一されている。室温は15度~20度、湿度は40%~50%。これは、東が長年の研究で見いだした花にとってベストなコンディション。さらに店内のBGMは奥多摩で収録した「鳥のさえずりと川のせせらぎ」。音が与える振動が水の濁りをなくし、結果的に花を長持ちさせるという。これも4年にわたる実証を繰り返し、花にとって良いと考えた。「あくまで花が主役である」と東は強調する。