茶室に代表されるシンプルでありながらも奥深い、“わびさび”の空間、数寄屋造り。
「日本の美」と称されるこの世界で、当代随一の名工と名高い職人、升田志郎(66)。
京都迎賓館主賓室座敷をはじめ、日本を代表する数寄屋建築を手がけてきた升田が木材と向き合う時に常に心に留めているのが、木の「顔」を生かすという信念。
升田は、木材の美しさを極限まで引き出すことに妥協を許さない。あらゆる角度から木材を観察し、正面に据える一番いい表情を徹底的に探り、さらにその「顔」をより美しく見せる精緻な加工を施す。
木材を収める場所によって変わる、外光や影の差し込み具合や人の目線。それらを計算し尽くし、一本一本、刻む幅や角度を数ミリ単位で変えているのだ。「向き合う時は最敬礼する思い」と木材に強い愛情を持つ升田ゆえのこだわりだ。