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スペシャル 2017年1月30日放送

ネコからゾウ、キリンまで! 動物と向き合うプロたち



どんな命にも、フェアに向き合いたい

夜間動物救急のパイオニア、獣医師・塩田眞(69)。
東京・荻窪にある、塩田の動物病院はスタッフ6人。ごく小さな病院だが、彼の診察を求め関東一円から飼い主がやってくる。だが彼の名が知られるのは夜の活動にある。それは夜8時から深夜3時まで365日、要請があれば、すぐ往診に向う夜間動物救急。
塩田の獣医師としての信条は、「どんな命にも、フェアに向き合いたい」。
塩田が父の動物病院を継いで間もない頃、日本は空前のペットブーム。だが獣医師の世界では夜間に往診する習慣はなく、当時の塩田も急患の要請を何度も断った。思い立った塩田は、自ら「動物専用の救急車」をつくり、日本初の試みとも言われる夜間救急の往診を始めた。「人間なら救急があるのに、動物にないのはアンフェア。医療に対してフェアでありたい」。
夜の救急を始めて15年。塩田の救急車は走り続ける。

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キリンに、なる

去年、絶滅危惧種に指定されたキリン。その神経の細やかさゆえ、狭い動物園での生活はストレスを受けやすく、突然死が後をたたない。そんなキリン飼育の常識を変えようとする男が秋田の動物園にいる。キリン飼育員・柴田典弘(42)。柴田が取り入れたのは「ハズバンダリートレーニング」という飼育方法。この方法は飼育員の合図で、キリン自ら体の向きを変えたり、ふだんから飼育員がキリンの首や足を触り続け、人間に触れられることを嫌う抵抗感を減らすというものだ。このトレーニングにより、動物に無理なストレスを与えることなく、採血やひづめケアなどの健康管理を可能にした。
困難なキリン飼育の最前線に立つ柴田。その毎日はある流儀に貫かれている。それは「キリンに、なる」。
ことあるごとに、柴田は温度計や天気図レーダーをチェックする。寒さに弱いキリンの体調管理のためだ。天気に気温、キリンのしぐさなど柴田は手に入れられる全ての情報に臆病なまでにアンテナを張る。「キリンと同じにならないと、キリンに近づけない」。そこまでキリンに寄り添うのは、キリンをこれ以上死なせたくないという熱い思いからだった。

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寄り添う愛情、突き放す愛情

日本で唯一ゾウを「家族で」飼育し、さらに日本初の人工哺育にも成功した、ゾウ飼育のレジェンド、椎名修(54)。椎名のゾウへの接し方にはある特徴がある。それは言葉を持たない動物に、まるで人間に話すかのように言葉をかける。知能が高く警戒心が強いゾウに、絶えず語りかけることが関係を保つ秘けつだ。
ゾウ飼育一筋30年。しかしその道のりは試行錯誤の日々だった。例えば人工哺育で育てた「媛(ひめ)」の場合、母親を求めて寂しがる夜には椎名が母親代わりに添い寝。献身的なサポートで媛を育て上げた。しかしその結果、媛は椎名に依存し過ぎるゾウになってしまった。ゾウはゾウらしく生きることが幸せだと、媛が家族で触れ合う機会を増やし、自分は距離を置く椎名。「寄り添う愛情、突き放す愛情」。飼育員は動物とどう向き合うべきか。その自問自答は今も続いている。

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“小さな成功”を見逃さない

手や足に障害がある人と行動を共にし、「落ちた物を拾う」「ドアを開ける」などのサポートを行う「介助犬」。まだ認知度が低く、現在までの介助犬ペアの実績は130組ほど。そんな中、これまで20組のペアを生み出してきた女性が、介助犬トレーナー・水上言(44)。日本でのトレーナーの第一人者である水上だが、介助犬利用者から感謝の手紙をもらった時には思わず泣いてしまうなど、涙もろい一面も。
水上が、まず初めに利用者との訓練で行うのは、犬とのアイコンタクト。パートナーとなる人が犬の名前を呼び、犬と目線を合わせる。それができたら全力で褒める。人と犬がパートナーとして絆を深めていく上で、水上が欠かせないと考えることは、「“小さな成功”を見逃さない」だ。
「小さな成功でも見つけてあげて、褒めてあげられるタイミングをうまく見つけて。ちゃんと見ていないと褒めるポイントを見つけられないと思うんですよね」。

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プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

水上言「自分に与えられた役割をきちんと理解して、自分の能力、限界も理解して、最高の仕事をする事にこだわる人」椎名修「自分の技術、経験、知識を生かしながらですね、結果を残すこと。そしてその結果、いい結果も悪い結果も全てにおいて自分の責任を負えること」柴田典弘「『教えて下さい』が言える人です。前例があるなし関係なく、ちょっとでもプラスになるなって思った時、即行動する人」塩田眞「そうね、哲学だろうな。何をやるにしても哲学をもってなにかに打ち込んでいる人ってのは、プロフェッショナルだよ」