2,800人の整備士の頂点に立ち、「親分」の愛称で慕われるスゴ腕の職人、杉本好夫(59歳)。この道42年、髪の毛1本よりも繊細な精度で修理する“神業”整備士だ。
そんな杉本の職場はふだん目にすることができない世界だ。多くの整備士は機体全体をチェックするが、杉本はエンジン専門。エンジンは240人の整備士が担当に分かれ整備する。まず分解チームが1センチの部品までバラバラに分解。さらに洗浄チームや検査チームがわずかな傷までチェックする。そして修理可能な部品があれば杉本たち修理チームの出番。溶接と研磨で新品と見まごうほどに修理する。
ある日、エンジンの激しい振動によってすり減った部品を元の厚さに戻すという依頼がきた。ミスは許されない。杉本は重圧の中、5時間集中力を切らさず部品と向き合い、修理した。
しかし杉本は修理するだけでは満足しない。頼まれてもいない箇所を研磨し、見落とされた傷がないか念には念を入れてチェックする。「作業者じゃなくて整備士になれと。言われたとおりやってりゃ別に間違いじゃないんでその方が楽ですよね。だけど整備士ってそこを一歩進んで自分たちがやった仕事で不安が残るような仕事はしちゃいけなくてドーンと胸張ってね、やってる仕事は完璧だよっていうことをやらないとね」