30年以上前から、障害のある子どもや年齢の違う子どもを一緒に育てる「インクルーシブ保育」を実践してきた野島。子どもたちが自分で考え、支え合っていくその手法は、研究者から大きな注目を集めている。ヒントになったのは、自らの経験だ。野島は子どもの頃、年齢も体格も違う子どもたちとよく遊び、ケンカしていた。人とぶつかり合うことで、相手の気持ちや感情に気づかされ、人を思いやる心を育んできたと言う。
そこで徹底しているのが、年齢も能力もバラバラの子どもたちで小さなグループを作り、グループで1つの課題に取り組ませることだ。「グループの名前を好きなように決める」「給食を好きな場所で食べる」など、子どもたちの興味を引く課題を次々と投げかけ、どうグループでまとめていくか考えさせる。野島はあれこれ指示はしない。言葉がつたないところをフォローしながら、意見をぶつけ合わせ、相手を尊重する力を身につけさせる。このプロセスの中で、子どもたちは互いに刺激を受けながら、成長し合っていくと言う。
「子どもはね、ほかの子どもを教材として学んでいってると思うんですよ。人は人に影響されて、自分の価値観も、大切なことも、みんないろんな価値観があると思いながら、自分で作っていくもんやというふうに思っているので」
年下の子たちのために力を出す5歳児。
子どもが自発的に行動できる環境づくりが、心の発達にとって大切だと考えている。
グループで協力する遊びを日々企画し、相手を尊重する力を身につけさせる。
野島が日々の保育で神経をとがらせているのが、子どもたちの間で起きるトラブルだ。年齢も能力もバラバラの子どもたちが共に行動すると、トラブルが起きるが、野島はその瞬間こそが成長のチャンスと捉える。
野島は、ささいなトラブルでもすくいあげ、子どもたちに話し合わせる。大人の都合でどちらが悪いと判断することはしない。野島も一緒に子どもたちの輪に入り、トラブルの解決策を考える。
大切にしているのが、子どもの心を動かし、納得させるまであきらめないことだ。例えば「なぜ相手の嫌がることをしてしまったか」、トラブルを起こした子どもは、気持ちをそしゃくするのに時間がかかり、すぐに原因を口にしないことが少なくない。だが、野島は本音を吐き出すまで待ち続ける。そして取るべき行動を伝える。1度や2度ではなく、子どもの表情を注意深く見ながら、何度も言い続ける。子どもの心が動く瞬間を積み重ねていくことが、成長につながると信じる。
「ちゃんとこれっていうときに、本人がコトンと落ちるまで言い続けるんです。何回も何回もその瞬間を見逃さないで、何回もすることによって、やっぱり、「これ あかんねんな」いうのは知っていきやるから。納得できたよねって思った時に、人としても成長出来るんかなと思います」
トラブルが起きると、子ども同士で解決策を考える。
子どもに伝わるまで何度も言い続ける。