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第283回 2015年12月7日放送

一徹に直す、兄弟の工場 自動車整備士・小山 明・博久



ただ「直す」だけなら、それは「整備」とは言わない

弟・博久は故障車の整備を担う。ある故障車を調べていた博久は、エンジン周りのホースが抜けていると読み、すぐにホースの場所を突き止めて、エンジンが正常にかかるように直した。しかし、博久の整備は終わらない。なぜホースは抜けたのか、根本原因をさらに探り、点火プラグが関係していることを発見すると、再び同様のことが起きないよう、部品を交換。そこで、はじめて博久の「整備」が完了する。
「身近にあるもので一番危険なものじゃないですかね、車って。いい加減なことはできないんで、とにかく心配で心配でしょうがないくらい、直すんです」。

写真ホースが抜けた原因を探る博久


その姿勢は、車検整備担当の兄・明も同じだ。車の安全性を追求し、車検には不要でも、洗車は欠かさない。洗車することで、壊れたパーツを見逃さずに直すためだ。さらに明は、車の快適性にもこだわる。ある車では、振動を見つけると、最小限の部品を交換するだけでおさえてみせた。ただ「車検を通す」だけなら、それは「整備」ではない。

写真明は、車検整備で全ての車を洗車する。
53年間継続してきた。


客が気付かないことも気付き、追求し続けてこそ、プロ

整備のプロは、ときに車のオーナーが気付かない事にも気付くことがある。
例えば、ある古いスポーツカーのエンジン音。最近、この車を手に入れたオーナーからの依頼で整備を依頼された博久だが、オーナーのリクエスト以上に、エンジン音の調整を続ける。この車本来の音を「耳」で知っている博久。だから、少しでもいい音がするよう、たとえオーナーが満足しても、決して手を抜くことはない。「全部直したい。直すと喜んでもらえるじゃないですか。そういうのが、一番うれしい」。

写真耳だけを頼りに、エンジン音を調整する博久


客を喜ばせたいという思いは、どんな車や人に対しても揺らがない。長い入院で、一度は車の運転をあきらめかけた男性が、大好きな自動車競技で使う車の修理を小山兄弟に依頼したことがあった。車は長い野ざらしでエンジンのかからない状態。兄弟は、まずエンジンがかかるように整備した。さらに、兄弟は依頼にはないサイドブレーキの改造に着手する。サイドブレーキが引きやすくなれば、長期の入院で筋力がまだ回復しない男性も運転しやすく、再び競技に出られるよう、リハビリへのやる気が増すはず。
そして試乗の日、半年振りに愛車を運転する男性の顔から、満面の笑みがこぼれた。

写真オーナーが運転しやすいように、サイドブレーキを改造する


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

小山明「当たり前のことを当たり前に。心を込めて、もうそれだけです。特別に何かをしよるんじゃなくて、それが当たり前になっている。」小山博久「どんなボロでも、どんな高級車でも、向き合う姿勢は真剣にしたい。手を抜かない。それが伴った仕事に対して、お客様が満足してお金を払ってもらえるのが、プロじゃないですかね。」

自動車整備士 小山 明・博久


プロフェッショナルのこだわり

小山兄弟の強みは、“どんな車”でも直せること。その秘密は、兄弟の腕をサポートする道具にある。コンピューター制御された車の故障を発見する最新機器や、整備工場には珍しい聴診器など、その豊富さは群を抜いている。

写真小山兄弟の腕をサポートする最新機器


道具を使い、あらゆる車の故障に立ち向かうのが、弟・博久の役割。一方、兄・明は、月に13冊も専門誌を熟読し、道具の展示会にも足しげく通う。いわばブレーン役だ。
明「何も知らなかったら、お客さんに迷惑がかかるでしょう。(整備士は常に)お客さんの上にたっておかにゃ。」

写真故障部分を 聴診器で探る博久