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第280回 2015年11月9日放送

和牛の神様、愛情の牛 肉牛農家・鎌田秀利



食べさせる→食べてもらう

和食ブームの今、世界から注目されている“和牛”。 中でも日本最高峰との呼び声が高い「宮崎牛」の生産者に、神様と呼ばれる男がいる。 鎌田秀利、52歳。 5年に一度開かれる国内最大の品評会「和牛オリンピック」で肉質日本一に選ばれ、松阪牛や米沢牛など全国の肉牛農家から一目置かれる存在だ。 生み出す霜降り肉は通常の5倍もの値が付く。
芸術的な霜降りを生み出すその秘けつは、鎌田の徹底して牛に寄り添う飼育法にある。
一般的に牛の脂肪量は、体内のビタミン量の調節によって左右される。 成長に応じて与えるビタミン量を的確に減らすことで、脂肪を蓄えていくのだ。 しかし一歩間違えれば体調を崩し、食欲は落ち、思ったような霜降りにはならない。 だが鎌田は牛の体調を崩さず、通常の牛農家の半分以下までビタミンを下げ、見事な霜降りに仕上げることができる。
鎌田が貫くのは、「無理に食べさせず、牛に合わせる」という流儀。 鎌田は日に何度も牛を見回っては、一頭ごとの調子に合わせてエサの量や配合を変えていく。 さらに通常は朝夕2回のえさやりを鎌田は4回に小分けし、極力胃に負担をかけさせないよう心がけている。
「決して牛を作っとるわけじゃないからよ。 常に牛と相談して、牛が嫌がることはしない。 やっぱり牛と自分を常に重ねて、同じ立場で物事を考えてやることが私の仕事じゃ。 」

写真日本一に輝く鎌田の霜降り肉 5倍の値がつく
写真牛一頭ずつ、与えるエサの量を変える
写真独自のエサ作り 10数種類を混ぜた特別製


精いっぱい、命に向き合ったか

200頭もの牛一頭一頭に徹底して寄り添う鎌田。 牛は温度や湿度など環境の変化に非常に弱いため、その気遣いは尋常ではない。 小まめなえさ箱の掃除に加え、牛舎の気温が高ければ、周囲に生えた木の枝を切って風通しをよくする。 床の掃除も、臭いを変えないように、新しいおがくずと古いおがくずのバランスに気をつける。 牧草も食べやすいように細かく刻む。 朝6時から深夜12時過ぎまでほとんど食事をとらずに働きづめの鎌田。 365日一日も休むことなく、一切の妥協を許さない。
「牛は自らの命をささげて、自分たちを生かしてくれている。 だったらその能力を最大限引き出し、命を全うさせるのが自分の責務。 まだまだですよ、まだ牛がこれでいいよって言ってくれてない気がする。 どの牛も精いっぱい生きちょる。 精いっぱい牛に向き合うことこそ、この仕事の答えじゃ。 」
鎌田は常に自らに問いかける。 「今日も、精いっぱい命に向き合ったか。 」どこまでも牛に寄り添い、牛とともに生きている。

写真牛舎の環境作りに、何より気を配る
写真朝6時から深夜まで どこまでも牛に寄り添う


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

プロフェッショナルな、わしはそんなもんじゃないけどな。

なんやろね、都合のいい妥協をしないことやろね、何事にもね。

一生、牛と向き合わないかんからな、わしらはな。

そこに妥協があっては、失礼やろうで。

肉牛農家 鎌田秀利