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第274回 2015年8月24日放送

小さな名店スペシャル



“最上”がある、小さな名店

神奈川・川崎の住宅街の一角にある、間口3間ほどの小さな精肉店。朝10時の開店から客が次々と押し寄せ、製品が飛ぶように売れていく。ところ変わって東京・台東区にある珈琲(コーヒー)店。繁華街からほど遠い場所にあるにもかかわらず、連日常連客でにぎわい、その名は世界にも知られている。
大手スーパーやチェーン店が台頭し、町の小さな専門店が姿を消していく今の時代。地元に根をはり、逆境を生き抜いてきた2つの名店の陰には、プロフェッショナルの存在があった。共通するのは、客に対するどこまでも真摯(しんし)な態度。専門店としてのプライドをもち、最上のものを提供することを追求し続けている。

写真専門店として提供する最上の品々


“最上”を尽くして“心”を届ける

精肉店店主・畑肇(48)のこだわりは、「あの店へ行けば間違いない」と客に思ってもらえる、専門店としての役目を果たすことにある。扱うのは、日本ではほとんど流通しないデュロック種の母豚の肉で、きめ細かいサシと甘味が特徴だ。もともと確かな品質に加え、入荷のたびに毎回必ず味見をする畑。わずかでも納得できない部分があれば、どんなに客が求めても、決して店頭に出さない徹底ぶりだ。
そして看板商品のひとつが、30種類にものぼる特製の加工品。ハムやソーセージなど、その品質と味は、世界で最も審査が厳しいとされる本場ドイツのコンテストで、幾度となく金賞を受賞している。そんな逸品は、デュロック種の肉など独自に配合された生地と、絶妙な弾力を実現するため、指先の感覚を頼りに肉を詰めていく畑の職人技で作られる。

畑の店は、いつも客との楽しい会話であふれている。目指すのは、製品を介してそれぞれの家庭の食卓がにぎやかな笑顔で囲まれること。そのために畑は、客との会話の内容はつぶさにメモを取り、次回の接客につなげる。

最上の品々を作り、心を込めて客に届けることで、それぞれの家庭の食卓を感動と笑顔で包むことができると、畑は信じている。“最上”を突き詰める真剣さと、その品々に心をのせて届けるという信念。それこそが、畑の店が客に愛され信頼されるゆえんだ。

写真笑顔で客に品を届ける
写真絶妙な弾力を独自の技で生む
写真本場ドイツも認める逸品


“誠実”という隠し味

畑の作るソーセージに12年前からほれ込んでやまない、珈琲(コーヒー)店マスター・田口護(77)。「客を思い、心がこもった品に出会うと元気が出る」と畑のソーセージに舌鼓を打つ田口自身、一杯のコーヒー作りに徹底して誠実に、そして真摯(しんし)に向き合う。その現れのひとつが、ばい煎へのこだわりだ。そもそもコーヒー豆は、種類や産地ごとに特徴が大きく異なる。その魅力を最大限に引き出せるかどうかは、いかに絶妙なタイミングで煎るのをストップするかという「煎り止め」にかかっているという。田口は40年以上にわたって、この「煎り止め」のタイミングを独自に研究し、その成果を広く海外にも紹介。コーヒー界の“レジェンド”として、その名を世界に轟かせている。
また、高品質の豆を仕入れた上でも「ハンドピック」(欠点のある豆を取り除く作業)や、「カッピング」(ばい煎ごとに味を確認する作業)など、地道な努力もおこたらない。どこまでも誠実にコーヒーを追求し続けることで、客をうならせる最上の一杯が生まれている。

写真ひたむきにコーヒーと向き合う
写真ばい煎でコーヒー豆の魅力を最大限に引き出す


持てるすべてを、注ぐ

5月、精肉店店主・畑は、大きな転機を迎えていた。地域の区画整理事業のため、6月いっぱいで店を閉め、隣町へ移転しなければならなかった。父の代から51年続いてきた店の最後に、畑は、ある特別なソーセージ作りに挑む。本場ドイツでも見かけない、旬のさくらんぼを使ったソーセージだ。小さい子どもにおいしいと喜んでもらい、家族みんなで笑顔になってもらいたい。そんな思いで挑んだものの、納得のいくものを作れないでいた。迫る閉店までの期限。追い込まれくじけそうになったそのとき、畑の脳裏に浮かんだのは、たくさんの客たちとのやりとりの数々だった。ここまで育ててもらった感謝のために。その思いが、畑をふたたび奮い立たせる。

写真感謝の一品に、すべてを注ぐ


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

その物事に対して、誠実である、で真摯(しんし)である。その分野でもってやったことでもって成し遂げた方がプロフェッショナルと言っていいんじゃないかなと。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

お客様が何を求めて来ていらっしゃるか、どんな思いで来ていらっしゃるかっていうのを想像して、自分が何がそのためにできるのかなと、とことん考えた上で実行していける人、そんな人が、プロフェッショナルではないかと思います。