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第272回 2015年7月27日放送

小さき命に、無限大の力を注ぐ 獣医師・蓮岡元一



くまなく見て、じっくり触り、鋭く察する

日本の全世帯の3割がペットを飼っているという今、ペット医療も急速な発展を遂げている。そんな中、町のかかりつけ医として、飼い主から絶大な信頼を集めている蓮岡。営むのは、お世辞にも大きいとは言えない動物病院だが、他の病院で治療が難しいと言われたペットと飼い主が毎日何十組もやってくる。
そんな蓮岡の強みは、丁寧な診察と鋭い診察眼にある。とにかくじっくりと触診し、呼吸の速さや体温、そして内臓の腫れまでをも感じ取っていく。そして少しでも異変を感じれば、入念に検査し正確な診断を下す。たっぷりと時間をかけた診察があってこそ、的確な治療法を導き出せるという。

「呼吸のしかたとか、歩き方とか。見る、体中触る。どうなんやどうなんやって。じゃあなんとなく、私は僕はここが具合悪いねんって何となくわかるような気がするねんね。
動物を察してあげるっていう。治療を優先した診察じゃなくてまず動物をみて治療法を構築していく方が、時間かかってもそっちの方が、自分には合ってますね。」

過剰な治療は動物にとっても飼い主にとっても大きな負担となる。治療を押しつけるのではなく、時間をかけた診察で症状を見極め、治療は必要最小限にとどめることが獣医師の責任だと、蓮岡は考える。

写真触診による診察にじっくりと時間をかける蓮岡
写真
写真それぞれの動物の声なき声に耳を傾ける


精一杯やったという思いが、支えとなる

蓮岡の元には、多くの老犬や老猫を連れた飼い主たちが訪れる。ペットを飼育する限り、いつかは別れがくるのは当然のこと。しかし10年以上もの間、家族同然の存在としてペットと連れ添ってきた飼い主たちが、ペットを失うことで深い喪失感をいだくことも少なくない。
5月半ば、一組の夫婦が16歳の老犬を救急でやってきた。加齢で尿毒症を起こし、寿命が近い病状だった。飼い主の夫婦は、そのショックから点滴などの治療をあきらめかける。しかし蓮岡は「絶対にあきらめたらあかん。最後まで点滴をして、楽な状態で死なせてあげたほうがいい」と、夫婦を激励した。これまで多くのみとりに寄り添ってきた蓮岡。ペットが亡くなった後の喪失感を少しでも和らげるためには、残り少ないみとりまでの時間をどう過ごすかが重要だと語る。

「十分出し尽くす。全て出し尽くす、動物に。で、動物もそれに応える、我々も当然それに応えて、亡くなるのがやっぱり理想ですね。そうすると違う心が出てきますから。
あきらめないで、亡くなったら吹っ切れてって。」

蓮岡の激励によって、最後まであきらめずに点滴を続けた夫婦。愛犬は安らかな最期を迎えたという。夫婦は、涙の中にも笑顔をにじませて愛犬を見送った。

写真寿命が近い動物と飼い主との別れを支える
写真動物と飼い主にとって負担にならない治療を常に志している


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

日々新たに、朝起きて、マキシマムに働いて夜寝る、また朝起きてマキシマムに働いて夜寝る。その積み重ねがプロフェッショナルの道だと思います。

獣医師 蓮岡元一