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第271回 2015年7月20日放送

企(くわだ)てて、期待の先へ バス旅行プランナー・江沢伸一



ワクワクする企(くわだ)てこそ、企画

次々と独創的なヒットツアーを生み出すバス旅行プランナー江沢。彼のもとにはさまざまな業界から、企画が持ち込まれてくる。だが、そのままバスツアーとして商品化をすることはない。江沢は企画を考えるとき、“客の期待を超える”ことを徹底的にこだわるからだ。ヒット作の1つ「工場夜景を巡るツアー」では迫力ある光景を見せるため、海上から工場群までの接近ルートを徹底的に洗い出した。寒い冬場、客足が遠のくという弱点があったオープンバスでは、あえて若いカップルをターゲットにした。「恋するラブバス」と銘打ち、「寒さに肩寄せ合う恋人たち」というストーリーを展開してヒット商品となった。
ことし6月、新たに江沢のもとに持ち込まれたのは相撲部屋の朝稽古見学ツアー。充分に魅力的な内容だったが、江沢が客の期待を超えるために提案したのは、朝稽古の見学後、午後の時間を力士と一緒に過ごすという「どすこい!はとバスツアー(仮)」。実現する難しさをいとわず、より魅力的なツアーを目指すことに、江沢の企画するツアーの、ヒットのヒミツが隠されている。

写真江沢を代表するツアー企画「川崎 工場夜景」


逆手にとる

江沢が担当するのは、首都圏エリア。すでに観光地としては開発し尽くされた感のあるエリアで、新たに人気スポットを発掘するのは容易ではない。そこで江沢が企画を発想するとき、大切にしているのが「逆手にとる」という流儀だ。今、江沢が注目するのは、オープンから30年がたった世界各国の人形を展示する博物館。知り合いから偶然耳にした「真夜中に人形たちが動き出す」という都市伝説を、江沢は人気スポットに仕立て上げるための“材料”になると踏んだのだ。企画したツアーの内容は、「閉館後の薄暗い館内をライト1つで巡る」という、その名も“スーパーホラー劇場”。あまりに奇抜な内容に、当初は難色を示していた博物館の担当者たちも、江沢のプレゼンにしだいに心を動かされる。
一見、マイナスともとれる要素でも、仕立て方ひとつ変えれば客の心をつかむ魅力的な要素に生まれ変わる。それが見慣れた風景を人気スポットに変える、江沢の流儀だ。

写真あえて人形の持つミステリー要素に注目
写真暗い館内で小さなライトで人形を鑑賞する


やり遂げてこそ、サラリーマン

どんなにいい観光地を見つけ、独創的な企画を練り上げても、ルートや場所を確保できなければ絵に描いた餅だ。江沢はみずから信じた企画を実現するため、手間や時間を惜しまず、他人が避けがちな面倒な仕事もみずから進んで、やり遂げるという。
「どこでどういう仕事をしようが、与えられたその職場でやることを全うし、上積みをして、そして成果を出す、それがサラリーマンの本分」
若き日に、思わぬ人事異動によって企画の仕事から外された江沢。別の部門で働くこととなった12年の月日を振り返るとき、働くことの本質が見えたと語る。今、ヒットメーカーとして企画の仕事に邁進できるのは、企画から外された期間もめげずに全力投球し、結果を出したことがあってこそ、と信じて疑わない。

写真企画実現のため取り引き先と交渉を重ねる


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

低い壁よりもね、あえて高い壁を乗り越えようとして、成果を上げ続けられる人かな、と思います。

バス旅行プランナー 江沢伸一


プロフェッショナルのこだわり

江沢は、時間が許すかぎり現場に足を運ぶ。現場に赴き、客の目線になって、その場の雰囲気を味わうのが鉄則だという。新しいグルメツアーに組み入れようと検討していた寿司屋を訪ねた江沢。味や店の雰囲気を見ることはもちろん、店の人との雑談から周辺のまち情報を引き出す。この日も、客からの評判も高い和菓子屋が隣にあると聞く。その足で和菓子屋を訪ねると、絶品イチゴ大福を発見。グルメツアーで客に渡すお土産候補に出会うことが出来た。
情報があふれる時代だからこそ、現場に行かなければ手に入らない価値の高い情報がある、という江沢。会社を飛び出し、現場に足を運ぶこと、実に年間100日に及ぶ。

写真現場ならでは情報を聞きこむ
写真このいちご大福はツアーのお土産候補に