“飽和市場”と言われて久しいお菓子市場。チョコレート菓子だけでも年間1,000個以上の新商品が出るが、1年後まで店頭に残るものはほとんどない。日々熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられる業界で、客の心をつかみヒット商品を連発するのが、大手菓子メーカーのチョコレートマーケティング部部長の小林正典(44)だ。緻密な市場分析を重ね隠れたニーズを発掘し、アイデアを突き詰めていくことで、新ジャンルの商品を次々と生み出してきた。横ばいだった看板商品の売り上げもこの5年で50億円伸ばしてきたヒットメーカーだ。だが、ヒットへの道は決して平坦なものではない。巨額の投資をしたものでも、結果が出なければすぐに市場からの撤退を余儀なくされる世界。開発には、常に失敗と挫折がつきまとう。くじけそうになる時でも、小林はひとつの信念を胸に、挑み続けている。
「怖いですよ。長いものなら3年ぐらい考えてきて、(販売して)1週間で結論が出ますからね。やったこともないことを、だいたい難しいと言っているので。それを短縮すると、『難しいは、新しい』になると。できることだけやっても絶対サプライズはできないですよ。失敗を失敗で終わらせたら、失敗っていうだけで。次どうする?って考えているうちは失敗じゃないと思っているので」