ファンドマネージャーという仕事の使命は、投資家から託された金(かね)を株式投資などを通じて増やすことだ。7年前、それまで働いていた世界最高峰の資産運用会社を辞め、仲間とともに金融ベンチャーを立ち上げた新井は現在9千人の顧客から140億円を託されている。さまざまな要因によって上がり下がりを繰り返す株式市場において、安定した成果を上げるために新井はある流儀を貫く。それは、「徹底的に、読まない」というものだ。現在新井が株式を通じて投資しているのは46社。新井はそのすべてに、同じ金額を投資するようにしている。そうすることで、ある1社の株が暴落しても、全体で大きなダメージを受けないようにすることができる。
そして日々の売り買いでは、株価が値上がりした分を回収し、再び全体が均等になるように振り分ける作業に徹する。自身が投資する会社全体の成長に合わせ、資産を堅実に伸ばすというこの方法で、新井が運用するファンドは東日本大震災以降、日本の株式市場全体が下げた時期でも、下げ幅を小さく押さえることに成功した。ファンド開始時に預かった出資金は、5年間で170%にまで増えている。