大手ゼネコンの大成建設で超高層ビル解体の技術開発を指揮する市原。市原たちの技術は屋上をフタとみたてて閉鎖された空間を作り、その中で解体することで周囲に騒音を漏らさず、粉塵(ふんじん)も90%カットするという斬新なものだ。その技術は「最後さえも美しい」と世界から評され「日本ものづくり大賞」をはじめとしたさまざまな技術賞を総なめにした。その開発の裏には知られざる技術者たちの苦労や創意工夫が溢(あふ)れている。解体工事の現場では計画段階では分からなかったさまざまな課題が数多く現れる。そのひとつひとつを自分の目で確認し、対応していくことによって市原は新たな技術を生み出すためのヒントを手にしていく。技術開発が仕事の市原は、本来現場にいる必要は全くない。それでも毎日現場におもむくのは現場にこそ開発の手がかりとなる「宝」があると信じているからだ。―「ただ腕を組んで見てるだけではおもしろくない」―そこには技術開発者としてのこだわりと信念を貫く姿があった。