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これまでの放送

第234回 2014年7月28日放送

球界のレジェンド 覚悟のマウンドへ プロ野球投手・山本昌



“基本”を変わらず積み重ねる

ことし31年目のシーズンを迎える現役最年長の山本。ベテラン選手ともなれば、練習内容を配慮されることも少なくない。だが、山本はそれを拒む。
入団当時から山本を指導してきた三木安司コーチはこう語る「ウォーミングアップ1つとっても、若手と同様のメニューを同じ数だけ黙々とこなします。故障していない限りは、俺別でアップするねということがない。山本はベースになるものをとにかく変えずに続ける。その積み重ねこそが、今も現役でいられる理由だと思います」

写真20歳も年の離れた若手選手と同様に基礎練習を行う。


維持するために、進化する

「“基本”を変わらず、積み重ねる」という流儀の一方で、実はもうひとつみずからに課すルールがある。それは、進化し続けることだ。
年齢とともに否応なしに落ちていく体力。今までと同じでは、プロのトップレベルを維持はできない。そのために山本は、ときには大胆に変わらなくてはならないと考える。そこで、山本はピッチャーの生命線であるフォームを、毎年のように変えてきた。例えば踏み出す足の幅。2年前、6歩半から6歩と3分の2に広げた。ボールをより前ではなし、キレを増す工夫だ。
さらにことしは、22年ぶりとなる新球、カットボールにも挑戦した。飽くなき探求心が、山本の現役を支えている。

写真グローブの位置やヒジの高さ、足の幅など毎年のようにフォームを改良する。


自分には、大した才能がない

現役投手で唯一200勝を超える山本。山本はとにかく根気強い。キャンプ中に行う100メートルダッシュも、1日10本走ると決めたら絶対にそれを守り通す。山本は、野球の神様がいると本気で信じている。
「自分には才能も自信もない。だからこそしっかりやっておかないとバチがあたる」と山本は語る。大ベテランとなった今もマウンドにあがる度に底知れぬ緊張感に襲われるという。そんなとき、「練習をちゃんとやってきたから大丈夫」と自分に問いかけ、心を落ち着かせているという。

写真10年前からキャンプ中は毎日100メートルダッシュを10本走る。


基本を大切にしろ

入団してから4年間で1軍での勝ち星はゼロ。崖っぷちの山本に5年目の春、非常な通告が告げられた。“アメリカ、マイナーリーグへの野球留学”。
ことしも戦力外であることを意味していた。落ち込む山本に、ハツラツと声をかけたのがロサンゼルス・ドジャースで、練習生の受け入れ役を務めていた生原昭宏、通称アイクさんだ。アイクさんが、山本に繰り返し伝えたことがある。それは「基本を大切にしろ」。ピッチングを見ては、「上から投げろ」「前ではなせ」「初球はストライク」「低めに投げろ」としつこく基本の大切さを説いた。
アイクさんの熱意にほだされ、山本はその教えを徹底した。すると、山本のストレートが見違えるようによくなった。基本を見つめ直したことで、その後の躍進へとつながっていった。

写真自宅の玄関先に飾られたアイクさんの写真。
試合前には必ず手を合わせ球場へ向かう。


まだ、終わってない

アイクさんにかけられた、忘れられない言葉がある。マイナーリーグのある試合でのこと。ノーアウト満塁の大ピンチを招いた山本。マウンドにかけよったアイクさんに、思わず「すみません」と謝った。すると、アイクさんは「まだ、終わってない」と一喝した。目が覚めた山本は、後打者を打ちとり、無失点で切り抜けた。
「まだ、終わってない」。山本はその諦めない精神で、己の野球人生を切り開いてきた。現役にこだわる理由について山本はこう語る。
「僕の野球人生はまだ、終わっていないですし。どれだけのことが出来るかなんて分かりませんよね。これからキャリアハイが来るなんて言ったら、みんな笑うかもしれないですけど。でも分からないじゃないですか。何かがうまくはまればもっと上に行けるかも知れませんし。だから、あきらめる必要は全くないと思います。まだうまくなれると信じて頑張っています」

写真「今を一生懸命生きることで未来は変えられる」と信じている


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

自分の決めたことを継続して頑張る、そして諦めずに最後まで極めるために努力する、っていうことですかね。

プロ野球投手 山本昌


クエスチョン

Q 心技体どれを維持するのがいちばん大変ですか?

いちばんやっぱり若い頃に比べて落ちたなっていうのは、やっぱり体ですよね。逆に技術は上がっているんで。おそらく自分のキャリアハイのときよりも、技術は今の方が数段上だと思います。心なんて自分の気持ち1つでどうにでもなりますからいちばん最後でいいんじゃないですか?

写真しつこい性格なので心は折れようがないと山本は言い切る。