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これまでの放送

第226回 2014年3月31日放送

四季を感じ、命を食す 料理人・中東久雄



料理に、“命”を込める

中東は毎朝、店で使う食材を集めるために、自然豊かな京都・大原へと出かける。地権者の許可を得て山菜を集め、顔なじみの農家の畑で野菜を収穫する。大原では食材集めのみならず、山の「気」を身体で感じとることも大切にしている。雪の下で顔を出したツクシや、冬山にぽつぽつと彩りを添えるツバキの花など、移ろう季節を心に刻みこむ。そして皿の上で、大原の情景を巧みに表現するのだ。おいしい料理を客にふるまうだけではなく、野草や野菜が持つ「生命力」を感じてもらう。それが料理人・中東のこだわりだ。

写真朝、京都・大原に出向き、その日料理に使う野草や野菜をとる。
写真赤カブで冬のツバキをあしらった一皿。中東の献立は、40種類以上の野草や野菜を組み合わせ、香り豊かで重層的な味を引き出している。


苦みこそ、“命”

春の息吹を伝える食材「フキノトウ」。苦みが強いため、ゆでるときに塩や重曹などを加えることで、苦みを和らげるのが一般的な調理法だ。だが中東はあえて真水でゆで、苦みを残す。この苦みこそ、雨露や炎天下にさらされた山菜の生命力を伝える重要な要素だと考えているのだ。食材の声に耳を傾け、手をかけすぎない勇気を持つこと。それこそが、食材の「命の味」を最高に引き出す調理法だと考えている。

写真ゆでる時間は最小限。食材のよさを引き出すため、あえて手をかけ過ぎない。


誇り高く平らに生きよ

中東の胸にはいつも、料理の師匠だった兄・吉次さんの言葉がある。38歳の秋、独り立ちするにあたって兄から渡された手紙には、「誇り高く平らに生きよ」という言葉がしたためられていた。当時はその意味が分からなかったが、毎朝の大原通いを続ける中で、次第に理解できるようになったという。小さな野菜の声なき声。農家の人たちの何気ない言葉。平らに生きよとは、そうした声に耳を傾け、謙虚に学びながら生きることではないか-。世界にその名がとどろく料理人になった今も、中東は兄の言葉を心に刻み、大原の自然と向き合い続けている。

写真わら半紙10枚にもわたる、兄からの手紙。独立への心構えが書かれている。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

生命を知り尽くして、料理して、伝えていくことですかね。また、明日も来ます。

料理人 中東久雄


放送されなかった流儀

世界無形文化遺産に登録された和食。料理としての完成度だけでなく、日本の食文化そのものが高く評価された結果だ。中東も古くから伝わる茶懐石の精神を守り継ごうと、従業員たちとともに月に一度のお茶会を開く。ふるまう和菓子は中東の手作り。茶わんも中東が作った物を使う。おいしさや見た目の美しさだけでなく、心のあり方にもこだわる。それが中東の考える和食の神髄だ。

写真仕事を終えて一服。店のスタッフ全員で心を和ませる「お茶会」。