都心から離れた郊外の住宅地にありながら、連日400組を超える客が集まる横溝の洋菓子店。
その手が生み出す洋菓子は、ザッハトルテ、イチゴのショートケーキなど素朴で家庭的なものがほとんどだ。創業から25年、数多くの熱烈なリピーターを生み出し続けている秘密は、48年間研さんを積み重ねた技術だけではないと、横溝は言う。レシピ通りに作っても、その日の温度や湿度によって出来上がりが変わる洋菓子の世界。横溝は生地作りやクリーム作りなど、いかなる工程においても、その状態が最高であるか、目や肌で確かめながら丁寧に仕事を積み重ねていく。その基本を絶対におろそかにしない。「食べる人に、少しでも喜んでもらおうと、真心を細部に宿らせ、突き詰める。母親が子どもに作るような、温かみのあるお菓子、それが目標です。」そう横溝は語る。
その信念は、食材の選び方にも表れる。果物は契約した農家から送ってもらった旬のものに限定し、その時期以外は使わない。
そして作り立てが常に店に並ぶよう、少量ずつ、その都度作る。
手間を惜しまず、真心を込めることで、横溝の店は熱狂的な支持を集めてきた。