「義肢は“モノ”ではない、“その人の一部”になるものだ」、と林は言う。そのために、本人の反対側の指を反転したり、色合いを完璧に合わせることで“その人らしい”義肢を林は創りだす。義肢を手に入れた人の中には、使いにくいなどの理由から、せっかく作った義肢を使わない人もいる。林は、見た目だけでなく機能性をも追求することで、その人の心に「自分の指や手」として受け入れられるものを目指す。
「義肢は“モノ”ではない、“その人の一部”になるものだ」、と林は言う。そのために、本人の反対側の指を反転したり、色合いを完璧に合わせることで“その人らしい”義肢を林は創りだす。義肢を手に入れた人の中には、使いにくいなどの理由から、せっかく作った義肢を使わない人もいる。林は、見た目だけでなく機能性をも追求することで、その人の心に「自分の指や手」として受け入れられるものを目指す。
その人の一部となる義肢(右手人差し指が義指)
シリコン製の義肢は、数年に一度作り変えが必要だ。そのため、1度作った人とは人生をともに歩む長い付き合いになる。林の元に来る人は8割がリピーターだ。そんな“伴走”の中で、年齢に合わせ義肢も年をとり、必要な用途に合わせてどんどん変化していくものだと林はいう。「普通の日常を、人生をあきらめなくていい」。林の義肢は、人々の人生をそっと横で支え続ける。
プロのダンサーを目指す20歳の大学生。林の義肢がそれを支える。
林は必ず、ひとつの仕事にひとつの課題を設ける。そして、日々ほんの少しでもできることを増やしていく。「例えばマラソンで、1ミリでも1センチでも1歩を前に出せば、最終的にはずいぶん距離が違うところまで行けるわけでしょう」。仕事である以上、ひとつのことにかけられる時間や労力はある意味、限られている。その中でひとつだけ、と心に決め頑張ることで、理想の義肢に近づこうとする。
必ずひとつ、新しいことをやる
「義肢装具士じゃなかったら、お花屋さんになっていた」という林は大の植物好き。工場にはいつも緑を欠かさない。10歳から育てているベンジャミンは大木になり、仕事に疲れた林の心を癒し、訪れる人も気持ちよく過ごせるようになっている。林にとって工場は大きな木のイメージだという。「来る人は、ここでちょっと羽根を休めて、また外の世界に飛び立っていく。そういうほっとできる場所でありたい」。
工場は緑でいっぱい。