1998年に日本で初めての肺移植を執刀し成功させた、世界でも屈指の実績を誇る呼吸器外科医・伊達洋至。伊達にとっての勝負は、ケタ違いの腕をもってしてもなおのしかかるプレッシャーとの闘いだ。カギを握るのが、いかに平常心を保てるか。伊達は、難しい手術の前の日に必ずある儀式をおこなう。手術用の針と糸で、ガーゼを縫うのだ。人体とは硬さやもろさなどは全く違うが、一針一針縫いながら自分の気持ちを落ち着け、自信を取り戻すことができるという。自分の気持ちをコントロールし、手術の成功率が1パーセントでも高くなる準備をする。それが、伊達の勝負の極意だ。