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これまでの放送

第215回 2013年10月28日放送

“遊び心”、世界を制す プロデューサー・石原恒和



“事件”を起こす

ゲームソフトは累計2億5000万本、カードゲームやグッズなどトータルの売上が4兆円にも上るポケットモンスター。
さまざまな魅力を生みだし、キャラクターを多彩な手法で世界中に送り出すのが石原だ。
石原の武器は、原石を磨きヒットに導く発想力。

プロジェクトチームのアイデアや創造性を引き出す上で大切にしている考え方が、【“事件”を起こす】というものだ。
「携わってきた人たちやチームが日常の仕事、制作活動の延長線上では生まれてこない発想とか、ある種、事件というか要素を外側から持ってきて、そしてより強い力やクリエイティブを引き出すというのが、やはりプロデューサーの役割ですから、そこが一番大事だと思っています」と石原は言う。

写真制作チームは懸命に考えるあまり、ときに視野が狭くなることがある。そんなときに物事を俯瞰し、状況に大きな変化をもたらすことができるかがプロデューサーの腕の見せ所だ。


自分の”遊び心”に忠実であれ

石原は、何が売れるかというマーケティングをほとんど行わない。商品を出す上で頼るのは、己の“遊び心”だ。
自分が満足し、自分が面白いと思えるものでなければ、石原はゴーサインを出さない。
テレビゲームからボードゲームまで、市場規模に関係なく、石原は開発中のゲームを徹底的に遊びぬく。
開発に何年も費やしても没にすることもある。売れそうかではなく、面白い遊びを世に出したいという思いが石原を仕事に駆り立てているからだ。
「作り手が作ることに疲れたり、飽きてしまったら、それは即刻、辞めるときだと思うんですよね、僕自身がね。こんなものを作って世に問いたいという、気持ちが萎えたり、パッションが失われたりすることが最大の危機ですよ」自分の“遊び心”にこそ、忠実であれ、それが石原の信念だ。

写真開発中のゲームは、制作チームと真剣に遊ぶ。どこが面白く、どこがダメか。冷静に見極める。


“遊び心”を突き詰めろ

この夏、石原は新たなゲームの開発に乗り出そうとしていた。
それは、人気キャラクターであるピカチュウを大胆に変えるという、これまでにない挑戦だった。
17年前に誕生し、いまや世界中で愛されるまでになったポケットモンスター。その顔であるピカチュウを変えることは、大きな賭けだ。下手をすれば、一気に人気を失う恐れもある。
難しい舵取りが石原に求められていた。
「新しいものを提供し続けるっていうことは、古い形の良さを、ある種、壊しますから。その壊したものを皆が受け入れてくれる形に持っていかないといけないので、細心の注意を払いながら、新しいアイデアを入れていく。それがたゆまざる努力というか挑戦です」

写真制作スタッフとともに、かつてない挑戦に踏み出した石原
写真いまや世界で人気のゲームとなったその背景には、石原の“遊び”に挑み続ける並々ならぬ覚悟がある。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

常に新しい組み合わせで、ものづくりに挑戦し続けられる人。新しい組み合わせは常に困難をともなうと思うんですけど、それを困難と思わずにワクワクして楽しめるっていいますかね。

プロデューサー 石原恒和


放送されなかった流儀

“遊び”だからこそ、徹底的に

ゲームを制作するとき、石原は子どもをターゲットに考えることはしない。あらゆる年代、人種、性別のひとが面白いと思えるものを目指してゲームの制作を行っている。
あえて高いハードルを設け、徹底的に追求することをみずからに課す。その志こそがポケモンをビッグビジネスに育て上げた。
「遊びですから、ちょっとつまらないとか、ひとりでもこういうところがあるとあんまり燃えないよねとかって言われたら、それは直さなきゃ。面白さというのは中途半端なところで止めると全く見向きもしてくれませんから、やはり徹底的に面白いと思える状態になるまで、作ることを止めないというのは大事ですよね」

写真“遊び”だからこそ、一切の妥協を許さない石原。徹底的に磨き上げたものだけが商品となる。