17年前にこの世を去った、漫画家 藤子・F・不二雄こと藤本弘。その書斎には、1万点以上の「遺品」が残されていた。藤本が46年に及ぶ漫画家人生で参考にしたアイデアの元だ。藤本はこれをお話の「断片」とか「タネ」と呼び、それをどれほど多彩に持ち合わせているかが漫画家の生命線だと考えていた。
その中身を見ると、子どもの頃から大好きだったという落語のテープ、古今東西の映画のレーザーディスクやビデオテープ、科学や歴史の専門的な本まで驚くほど多彩だ。こうした断片を、子どもの頃から保ち続けたみずみずしい感性と藤本ならではの独創力で窯変させ、子どもから大人までを夢中にさせる、藤子・F・不二雄ワールドを紡ぎ出していた。