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第212回 2013年9月30日放送

命の前で、謙虚であれ ER専門医・林寛之



名探偵コナン

林率いる福井大学医学部附属病院のER(救急医療チーム)は、年間2万人の救急患者を受け入れる。突然のけがや病気に見舞われた患者の多くは、混乱し、自分の症状を正確に言い表すことができない。その中で林は、問診だけでなく、顔色、目の動き、汗の量、呼吸音など、身体のサインを鋭く見てとり、病名を絞り込んでいく。さらに的確に検査を施すことで、患者の“隠れた病”を明らかにする。そうしたみずからの仕事を、林は「探偵の謎解き」になぞらえる。

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“不安”を和らげる技術

軽症から重症まで、あらゆる患者がやってくるER。林が大切にしているのは、正確に診断を下すことだけではない。患者が抱いている不安をいかに受け止め、和らげるか。「患者は誰もが、自分が深刻な事態に陥っているという不安にかられてやってくる。病気だけでなく、その不安も診て初めて診療がなりたつ」。それが林の信念だ。

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突き詰めて 突き詰めて 突き詰めろ

一見軽症にみえる患者に、命に関わる重い病が隠れていることがある。それを見抜くためには、自分の診断が間違っているのではないかと疑い、思考を極限まで突き詰めること。この流儀に至った背景には、かつて経験した苦い挫折がある。患者の訴えにきちんと耳を傾けることができず、重い病を見逃した。それ以来、貪欲に知識を吸収し続けること、自分を疑い続けることを林はみずからに課した。今、おごらず謙虚に命と向き合う姿勢を、若い医師たちに伝えている。

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プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

ずっと切磋琢磨していくという過程がプロであって、出来上がって自分がトップだよって言うようになったらたぶん終わりだと思いますんで。だから、まだまだなんです。まだまだです。

ER専門医 林寛之


The Professional's Skills(プロフェッショナルの技)

林が、めまいを訴える患者に必ず行う“テスト”がある。それは「パトカー」「めだか」「なめこ」の3語を3回繰り返す発音テストだ。脳幹に梗塞などの障害があると、カ行、マ行、パ行などが発音しづらくなる。さらに、同じ単語を3回繰り返すことができなければ、小脳の梗塞を疑わなければならない。このような手法をさまざまに駆使し、できるだけ早く謎を解く。“考える”のではなく”攻める”ことこそ、命を救うための極意だと林はいう。